とんま天狗は雲の上

サッカー観戦と読書記録と日々感じたこと等を綴っています。

毎日同じ服を着るのがおしゃれな時代

 タイトルでは何を言いたいのかわからない。これは「消費行動の変化」という章の中にある節の見出しだけど、目次を開けば、もっと魅力的な見出しが多く載っている。「自己関与性」とか、「おあさがりからおあがりへ」とか、「派・族・系」とか、「3人の高齢者が1人の若者を支える」とか、「コトコト交換と時間貯蓄」とか、「ゆるやかな大家族」とか、「シェアタウン」とか、「SNSは都市を分散型にする」とか、「コムビニ」とか、「コモビリティ」とか・・・。これはほんの少し。全部で63のキーワードについて、それぞれ解説を付けたもの。だから副題の「今を読み解くキーワード集」の方がよっぽど本書の内容を正確に伝えている。タイトルに奇を衒いすぎて失敗しているのではないのか。

 「まえがき」で「通して眺めてみると、時代の逆転を強く感じます。今までかっこいいと思っていたものがかっこわるくなる。・・・古いものが新鮮な魅力を持つ。そういう逆転現象が今いたるところで起こっているようです。」(P5)と書かれている。確かにそうかもしれない。一方で人々の価値観はいまだに古いまま。新しいものを追い求めていた人が一周回って元に戻ってきたような気さえします。

 それで「時代を読む」ということだけど、結局、元に戻ってしまうなら、時代を追い求める行動自体があまり意味がなかった、ということになる。それなら外を見るのではなく、最初から自分のことだけを見ていればよかった。そういうことで、僕らは今、他人や流行に惑わされず、自分を見つめ、自分の足で立っていればいい。僕はずっと前からそうしているつもりだけど、それでもDAZNに入会したり、じぶん銀行に口座を開設したりしている今日この頃。「かっこいい」とか「おしゃれ」なんて言葉自体が、既にダサいのではないかなと思う。自分は自分、ということで。

 

 

〇今は自動車より自転車のほうが人気ですが、これも自転車のほうが自己関与性が高いからだと言えます。自分が運転しているという実感が強い。・・・サドルもハンドルも反射鏡もベルもライトも自分の好きなようにできます。・・・ところが日本の多くのメーカーは、なぜか自己関与ができない物をつくろうとします。消費者が自分で何か手を加えることを許さず、完成した商品そのままで使ってほしいと考えます。(P40)

〇世界一流のトヨタに勤めるような人たちのほうが特殊な人間であると気がつかずに、井の中の蛙のようにして消費者を見ている(=見ていない)結果なのですね。・・・人に負けない、人より強い、人より優れたものがいいものだという、一流企業に根強い価値観です。それは安心・安全な車を作るという意味ではとてもいいことなのですが、消費市場を見る上では邪魔になることもあるのですね。(P82)

〇増えていく高齢者を資源と考え、減少する若者をむしろレアメタルと考えるならば、逆に、3人の高齢者が1人の若者を支える社会をつくれます。・・・高齢者だからこそできる仕事もある。・・・たとえば子どもの見守り・・・などの子育て支援とか。あるいは共働きで忙しい家庭・・・に、おいしい家庭料理を安く食べてもらうとか。一人暮らし老人が自宅の空いている部屋をただで若者に貸すとか。(P111)

〇自分が料理を1時間つくってあげたら、英会話を1時間習うというように、自分と他者が時間単位でスキルを交換する。そしてそれによって、住民間のコミュニケーションを誘発し、コミュニティを形成していくのです。・・・時間貯蓄の場合、英会話も料理も掃除も歌を歌ってあげることも、1時間ならあくまで同じ価値です。そして商店街の商品との交換はしない。だからスキルの交換がしやすい。(P117)

〇新しいものがどんどんできる街よりも、古いものがしっかり残っている街のほうに魅力を感じる、そんな時代感覚の変化が生まれてきたのです。/ところが、現実に行われている都市計画や都市再開発は、早くても20年前、もしかすると70年近く前に計画されたものだったりします。・・・その結果、街づくりではなく、街こわしになってしまっています。(P113)

 

砂漠の影絵

 「蛍の森」に続く石井光太2作目の小説。前作はハンセン病患者の隔離と苦しみを描いた秀作だったが、今度の作品は、中東の武装集団による人質事件を描く。そこに描かれているのは、人質の命よりもアメリカのご機嫌を伺い、自己責任の言葉で被害者を批判する日本政府の姿だ。まさに過日見た風景。そして中東で欧米の国々が何を行い、アメリカが何を考えイラクを攻撃し、中東の人々がどんな目に会い、何が聖戦に駆り立てるのか、という想像。

 武装集団での対立。金目当ての聖職者。死の恐怖に怯え、助け合い、疑心暗鬼になる人質たち。平和を求め、自爆テロを否定し、しかし人質殺害しかできない頭領。政府に頼らず、企業を脅しつつ、人質救出に動く友人。そして最後は・・・

 テロリストたちの多くは多分平和を求めているのだろう。そしてアメリカがやっていることは・・・。怒りがこみ上げると同時に悲しみが満ちてくる。そして世界は、また日本においても同様に、憎しみが勝る時代になりつつあるのかもしれない。そんな時代だからこそ、多くの人にこの小説を読んでほしい。世界の実相を知っておきたい。

 

砂漠の影絵

砂漠の影絵

 

 

〇「自分は・・・フォトジャーナリストとしてここにきたんだ。やるべきことはやってるつもりだ」/「日本人、君の写真見て戦争やめる?」/「そこまではわからないけど・・・で、でも、ここで精一杯のことをやってる」/「嘘ヨ。君、仕事で来てるちがう? 君、お金もらう。名誉もらう。イラク人死ぬ。それだけヨ」(P45)

〇米軍は戦争をはじめると、基地や収容所のインフラ工事のために途上国から労働者をかき集める。おそらくこのタイ人二名もそんなふうにしてタイからやってきた労働者に過ぎなかったはずだ。・・・「これが現実だよ。タイ政府は国民のことなんて考えてねえんだ。米軍と仲良くして外資系企業を誘致したり、国際援助をしてもらったりする方がずっと大切なんだろ。そのためなら出稼ぎ労働者の命なんてどうだっていいのさ」/「日本政府も?」とくるみがつぶやく。(P104)

〇「そいつの傷は?」/「米軍にやられたんです。ブラックホークに助けを求めたら、逆に撃たれた」/「なぜ」/「作戦中の米軍にとって日本人の人質なんてどうだっていいんでしょ。少なくとも命の危険を冒してまで守る相手じゃないんですよ」(P328)

〇奴らは、サダム・フセイン独裁政権さえ崩せば、イラク国民が諸手を上げて自分たちを歓迎し、民主主義を受け入れ、原油の利権も手に入れられると見くびっていたんだろう。・・・しかし、中東諸国の政治は奴らが考えるほど甘いものではない。なぜ中東諸国で独裁者の支配が何十年もつづいているかといえば、様々な民族や部族や宗派が複雑に入り乱れているため、強大な力で抑圧することでしか国家の安定を保つことが難しいからだ。/イラクも同じで、サダム・フセインという男が重石になって国家を分裂させないように力で押さえていた。・・・いわば、アメリカは理由なき攻撃によって、イラクの「禁断の扉」を開けてしまったのだ。(P346)

〇いつの日か、アメリカが正当な理由もなくイラクを侵略し、大勢の罪なき人々を殺害したという事実が明らかになり、俺たち旅団が最善の方法で真っ向からそれに抗ったことが世界的に認められる日がくるはずだ。・・・俺はアメリカの奴らが言うように狂った殺人鬼ではなく、イラクの平和のために命をかけて戦う聖戦士だ。俺は心から平和を希求し、私利私欲を一切捨て、アッラーの教えに従い、すべてのイスラーム教徒が幸せに暮らせる世の中をつくろうと努めてきた。その経緯と本心を、俺自身の言葉で残したかったのだ。(P348)

 

J1リーグ第3節 ガンバ大阪対FC東京

 2連勝と快調なスタートを切ったFC東京。ガンバはACLと並行した戦いで今年もやや苦戦。それでも先週はACLのゲームがなかったので、前節から中5日のゲーム。前節から採用した3-5-2がいい感じ。長沢とアデミウソンの2トップも絶好調だ。中盤は遠藤をアンカーに今野と倉田を前に上げる形。右WBには19歳、初瀬が入る。対するFC東京はこれで3戦連続同じ先発メンバーか。

 序盤、お互い激しい攻防が続く。6分、遠藤のCKにFW長沢がヘディングシュート。GK林がナイスセーブ。DFがクリアする。FC東京も9分、左SB太田のスルーパスに左SH永井が抜け出し、クロスに右SH河野が走り込む。しかしその前でDFがクリアする。その後はFC東京がパスを回して隙を窺う。だがガンバのプレスが早い。なかなか攻撃が形にならない。

 すると22分、CH遠藤のフィードにFWアデミウソンが走り込み、CB丸山を抜くと、GKと一対一。GK林の左を抜いて、ポストに当ててゴールに転がり込む。ガンバが先制点を挙げた。その後もガンバのプレスが厳しい。そして前に速い。32分、FC東京のCKをキャッチしたGK東口がすぐにスローイング。FWアデミウソンが収めて左に流すと、右IH倉田が走り込み、ドリブルからミドルシュート。DFにクリアされるが、GK東口からの早い攻撃は見事。

 FC東京は35分、右SH河野が足を痛め、左SH中島に交代する。永井が右SH。37分、中島のFKは大きく枠を外す。38分にはルーズボールを収めたFW長沢がスルーパス。FWアデミウソンが抜け出して強烈なミドルシュート。サイドネットに外れるが、球速が並じゃない。FC東京も44分、右サイド深くからのFKをOH東が落として、右SH永井がミドルシュート。しかしGK東口が弾いて、キャッチした。前半はガンバ1点リードで折り返した。

 後半1分、右SB室屋のクロスにCF大久保がヘディングシュート。CBファビオと頭を打って、しばらく時間がかかる。その後、FC東京は中島をFWに上げて、東を右SH、永井を左SHに戻す4-4-2の布陣にする。しかし7分、左SB藤春のクロスがファーサイドで左SB太田に当たってゴール前にこぼれたところを右IH倉田がシュート。ポストに当たってはね返ったボールにFW長沢が詰める。が、CB丸山に当たってゴールに転がり込んだ。オウンゴールでガンバに追加点を献上した。

 14分、FC東京は東に代えて右CB徳永を投入。右WB室屋と左WB太田を上げる3バックにする。17分、右WB初瀬のクロスに右IH倉田がボレーシュート。ネットを揺するが、これはオフサイド。その後、FC東京はCF大久保がボールに触ってゲームを作るが、なかなか決定機が作れない。20分、FC東京は左FW永井に代えて前田を投入する。29分、FW長沢のミドルシュートがポストを叩く。FC東京は30分、右FW中島から右に流して、CF大久保のスルーパスに右WB室屋が走り込みクロス。右FW中島が走り込むが、CBファビオがゴール前でクリアする。

 そして31分、PA内右サイドでサイドチェンジのパスを受けた右WB室屋に左IH今野が猛然と詰める。室屋がボールを右に流してかわそうとしたところに今野が詰めて押し倒してしまう。34分、CF大久保の狙い澄ましたPKはGK東口が反応。こぼれたボールに大久保が詰めてシュートを放つが、これもGK東口が身体に当てる。続く太田のCKにCF大久保がボレーシュート。これもGK東口がセーブする。

 ガンバは38分、右WB初瀬に代えてオジェソク。39分、右CB三浦の蹴った長いFKをFW長沢が落とすと、FWアデミウソンがシュート。DFのブロックをCH遠藤がミドルシュート。しかしわずかに左に外れた。しかし直後の39分、右IH倉田が長い縦パス。FWアデミウソンが抜け出し、クロスにFW長沢が走り込む。その手前でCH橋本が足を滑らせオウンゴール。決定的な3点目を献上する。

 42分にはガンバはFWアデミウソンに代えて若い高木を投入。43分、右WB室屋のクロスにCF大久保がヘディングシュート。GK東口がナイスセーブ。続く太田のCKをGK東口がパンチング。右FW中島がミドルシュートを放つが、GK東口がファインセーブ。すばらしい。FC東京、戦意喪失。44分、CH遠藤からのフィードに走り込んだ左WB藤春のクロスにFW高木が飛び込む。しかしシュートはGK林がナイスセーブ。アディショナルタイムにもCH遠藤のクロスにFW長沢がヘディングシュートを放ったが、これは枠の外。6分という長いアディショナルタイムもガンバが支配してタイムアップ。3-0。ガンバがFC東京に完勝した。

 3バック、そして遠藤のアンカーがよく機能している。そしてアデミウソンが絶好調。ACL済州ユナイテッド戦に3バックで1-4と完敗してから、3バックの並びを変更。ファビオを中央にして前節レイソル戦は3-1と勝利。そしてこのゲームも3-0と完勝。いよいよガンバが乗ってきた。次節はホームでのレッズ戦。その前にACLがあるが、この勢いで戦うレッズ戦は非常に楽しみだ。DAZNで是非とも観戦したい。