とんま天狗は雲の上

サッカー観戦と読書記録と日々感じたこと等を綴っています。

OARっていいじゃない!

 オリンピックが始まって、サッカーよりもオリンピックを観る方が多くなっている。昨日は小平選手と高木美保選手が残念ながら銀メダルと銅メダル、平野選手と渡部選手も銀メダルを獲って、ようやく日本人選手のメダル獲得のニュースが増えてきた。でも、なかなか金メダルに手が届かない。小平選手は500mで今度こそ金メダルを獲れるだろうか。渡部選手のラージヒル複合にも期待したい。

 ロシアの選手は今回、ドーピング問題があって、国家としての参加ができず、個人資格での参加ということで、当然、個人種目しか出場できないのかと思っていたら、団体競技にもOARとして出場していてびっくり。ロシアとしての出場ではなく、ロシア人選手により構成されたグループということ? ロシア選手が金メダルを獲った種目の表彰式はまだ見ていないが、五輪賛歌の下で五輪旗が掲げられるという。これって、なかなかいいじゃないか!

 「これを機にオリンピックは国別対抗を止めたらいい」でも書いたけど、そもそもスポーツ競技は、優秀な成績を収めた個人が表彰されるべきもので、国家を関与させると、これまでも何度かボイコットや政治利用があったように、碌なことはない。今回の北朝鮮の参加問題も、国家単位の参加を認めなければ何の問題もなかったはずだ。

 先のブログでは、団体競技はどうなってしまうのかと思ったが、OARでの参加が認められるなら、団体競技はみんなこうしたグループによる参加にすればいい。そうすれば国籍問題もあまり意味がなくなる。長洲未来なども、OA Japanで出場しようが、OA USAで出場しようが自由。国籍制度が各国で異なる中で、各国の競技団体がそれぞれルールを作ってメンバーを募ればいい。

 考えてみれば、紅白歌合戦も、男女が混ざったグループなどは、白組か紅組か、迷ってしまう。去年は白組で出たのに、今年は紅組、なんてグループも時々いたりする。オリンピックもそれでいいじゃないか。

 ついでだから、国歌もやめて、選手が好きな曲を選べるようにすればいい。開会式の入場行進ではK-POPが流されていたが、表彰式でも好きな曲を流せるとなれば、それもまたモチベーションになるかもしれない。そして国旗ではなく五輪旗を掲揚する。今回のロシア制裁はオリンピック改革のいいきっかけになるかもしれない。

無冠、されど至強

 都立朝鮮人高校で全国高校サッカー選手権に出場し、ベスト4になった1955年1月。チームには金明植がいた。しかしその年の4月。朝鮮人高校は都立でなくなり、高体連の大会への出場ができなくなる。その後、金明植は中央大学に進学し、さらに在日朝鮮蹴球団に加入すると、蹴球団は全国を行脚して無敵の強さを誇った。1971年、東京朝高サッカー部監督に就任すると、その強さは高校レベルを凌駕。全国の高校選手権出場チームが朝高詣でをした。そんな伝説の在日サッカー選手・金明植の半生を描いた伝記だ。

 在日サッカーチーム関係の本としては、筆者自身が書いた「橋を架ける者たち」「蹴る群れ」、また河崎三行の「チュックダン!」が有名だ。そしてこれらの本の中にも金明植は欠かせない選手として描かれている。その明植の教え子である高英禧の要望を受けて書籍化したとエピローグに綴られている。しかしその直後の書かれている内容が衝撃的だ。上野千鶴子東京新聞に書いた「日本人は多文化共生に耐えられないでしょう」という文章に強く反発し、自ら筆を執る決断をしたという。日本における多文化共生の実例として。

 未だにヘイトスピーチが横行し、朝鮮人差別が終わらない日本において、少なくとも一部のサッカーの世界においては、在日選手と友好的かつ競争的に交流してきた歴史があった。そしてそこに金明植の果たした役割は大きい。今まさにオリンピックが開催されている。北朝鮮の参加により、スポーツの政治利用といった批判もあるようだが、それよりも多文化共生とスポーツのあり方について考えてみる方がより建設的ではないか。日本に朝鮮学校がある意味を考えてみたい。

 

無冠、されど至強 東京朝鮮高校サッカー部と金明植の時代

無冠、されど至強 東京朝鮮高校サッカー部と金明植の時代

 

 

○全国選手権での優勝6回・・・その帝京高校が全盛期ですら、歯がたたなかった高校サッカー部があったことは、一部のコアなサッカーマニアを除いては知られていない。/東京挑戦高級学校チュックブ(サッカー部)である。/偶然か、必然、この2つの高校は、東京・十条という・・・町で軒を並べている。直線距離にして500メートル・・・ダッシュをすれば3~4分ほどの距離しかない。(P2)

○初めての公式の全国大会でベスト4の結果を残した。/選手権では嬉しい出会いもあった。試合では日本の通名でプレーしていたが、実は在日コリアンという選手が多くいたのである。その代表が2回戦で対戦した仙台育英高の大原兄弟だった。・・・東京朝高の宿舎を訪ねて来た2人を明植も東奎も温かく迎え、サッカーはもちろんお互いの学校のことなどをしばしば話し込んだ。(P56)

○日本代表が所属するトップチームですら凌駕した蹴球団である。・・・以降も常勝チームとして日本全国を転戦し、苦しい生活に悩む各地の同胞を励ます大きな役割を果たしていった。・・・公式戦には出場できなかったが、その強さは世代交代を経ながらも1980年代に至るまで日本のチームを相手に9割6分の勝率を誇り、幻の日本最強チームと言われた。(P109)

○開幕当初のJリーグがスーパーな外国人選手の加入によって日本人選手に大きな刺激とモチベーションを与える場になっていたように、希鏡や英成が日本リーグでプレーしていれば、間違いなくレベルの向上につながったはずである。たかが、国籍、民族というもので分断することでいかに社会や文化が停滞するか。また夢の存在がどれだけ人間を大きく成長させるか。Jリーガーとなった安英学座右の銘が「夢は叶う」であることが象徴している。(P154)

○2011年アジアカップの決勝でゴールを決め、今では浦和レッズのために献身的に走り回る忠成のルーツが鉄泰なら、その元に明植がいた。/明植の反省は「在日同胞のため」であったが、それが日本のサッカーのためにも機能していたことは紛れも無い事実である。すべてのものごとはつながっている。(P242)

 

ラ・リーガ第23節 バルセロナ対ヘタフェ

 先日の乾に続いて、今節は柴崎が先発したヘタフェのゲームを観戦した。相手はバルセロナ。リーグ戦未だ無失点。首位を独走する。ミッドウィークのコパ・デル・レイ準決勝でバレンシアに勝利してから中2日。しかしメッシとスアレスがともに先発。新加入のコウチーニョも左SHで先発した。ヘタフェの柴崎はアンヘルと組んでFWで先発。序盤から4-4-2のブロックを組んで、しっかりと前からプレスをかけていった。

 13分、CBミナの縦パスをカットした左SHアマトのスルーパスにFWアンヘルが抜け出し、クロスにアマトが走り込むが、CHブスケツがクリアする。20分にはCHアランバリのスルーパスにFWアンヘルが走り込むが、GKテア・シュテーゲンがすばらしい飛び出しでクリアする。バルセロナは落ち着いてパスを回し、淡々とゲームが進んでいく。

 26分、右SBセルジ・ロベルトのクロスのこぼれを左SHコウチーニョが落とし、FWスアレスがシュート。しかしこれはオフサイド。32分には左SHコウチーニョのサイドチェンジから、右SBセルジ・ロベルトのパスをCHラキティッチがダイレクトで縦へ。FWメッシが走り込むが、右SBダミアン・スアレスがぎりぎりクリアした。よく守るヘタフェ。34分にはFWメッシのスルーパスにFWスアレスが抜け出すが、これもオフサイド。逆に37分、左SBアントゥネスのFKにCBジェネがヘディングシュート。しかし枠を捉えられない。

 ヘタフェはこの前後から柴崎とアマトのポジションを交代。柴崎が左SHに下がった。40分、右SHポルティージョのクロスからFWアンヘルがシュート。41分、左SH柴崎の落としから右SHポルティージョのスルーパスに柴崎が抜け出す。走り込んだCHアランバリに向けたクロスはGKテア・シュテーゲンにセーブされた。前半はこのままスコアレスで終わった。

 後半もヘタフェがしっかり守って、バルセロナが隙を狙う展開。5分、左SH柴崎のキープからFWアンヘルが前を向いてミドルシュート。しかしDFに当たって枠を外す。右サイドに右SHポルティージャがフリーで待っていた。直後には左SHコウチーニョミドルシュート。GKグアイタがキャッチする。

 次第にバルセロナの圧力が高まっていく。11分、左SBアルバのクロスから右SHパコ・アルカセルのスルーパスにFWスアレスが抜け出してシュート。しかしポスト左に外れた。13分、左SHコウチーニョミドルシュートはGKグアイタがファインセーブで弾き出した。ヘタフェも15分、押し込まれた中でFWアンヘルが縦に送ると、左SH柴崎が抜け出して、飛び出したGKをよく見てミドルシュート。しかし枠を捉えることはできなかった。

 17分にはCHファジルのCKに左SBアントゥネスがボレーシュート。この直後、バルセロナコウチーニョとパコ・アルカセルに代えて、左IHイニエスタと右FWデンベレを投入。布陣も4-3-3に変更する。20分、FWアンヘルのスルーパスにFWアマトがシュート。21分、左SH柴崎のパスからCHファジルがミドルシュート。ヘタフェも負けずに攻めていく。

 しかしその後はバルセロナがパスを回して押し込んでいく。30分、FWメッシのFKをCBミナがヘディングシュート。32分、右FWデンベレのCKにCBミナが叩き付けるヘディングシュート。しかしポスト左に外す。ヘタフェは33分、FWアンヘルに代えてCHフラミニを投入。再び柴崎をFWに上げて、ファジルが左SHに回る。35分、CFメッシのミドルシュートはGKグアイタがファインセーブ。35分にもCFメッシのミドルシュートをGKグアイタがファインセーブでキャッチした。

 37分、バルセロナはCHブスケツに代えてパウリーニョ。ヘタフェも40分、FWアマトに代えてモリーナ。さらに43分、FW柴崎に代えてCBカブレラを投入。5バックにして守る。アディショナルタイム46分、右FWデンベレのクロスに左FWスアレスがヘディングシュート。GKグアイタがファインセーブ。ヘタフェも49分、左SBアントゥネスのFKが枠に飛ぶが、GKテア・シュテーゲンがナイスセーブで弾き出す。そしてタイムアップ。0-0。ゲームはスコアレスドローで終えた。

 今季、バルセロナは初めての無得点。ヘタフェはよくやったと言える。柴崎も惜しい場面を作ったし、何より彼らしい落ち着いたプレーで組織的なヘタフェのサッカーを支えた。今季、柴崎はバルセロナ戦でゴールを挙げた後、負傷し、第16節に復帰。第19節から先発に復帰したが、途中交代が続いている。ようやくこのゲームではこれまで最長の後半43分までプレーしたが、やはり早くゴールがほしい。順位は現在10位だが、さらに上げていくためにも柴崎の活躍を期待したい。