とんま天狗は雲の上

サッカー観戦と読書記録と日々感じたこと等を綴っています。

キリンチャレンジ杯 日本U-22対コロンビアU-22

 先月のブラジル遠征で3-2と勝利した。堂安と久保が合流して、コロンビアのU-22であれば余裕で勝利するのではと、選手やコーチ陣も勘違いしていたんじゃないか。しかしブラジル戦で2ゴールを決めた田中碧はケガで欠場。遠藤渓太も、そしてもちろん冨安もケガで不在だ。日本の布陣は3-4-3。上田綺世のワントップにシャドーで久保と堂安。中盤は中山と田中駿汰のボランチに、右WG菅原、左WB菅。CBは右から岩田、立田、板倉。GKは大迫。一方、コロンビアは4-4-2の布陣。サンドバルとマルケスの2トップに、右SHラミレス、左SHベネディティ。アトゥエスタがアンカー気味に下がり、アルバラードが積極的に前に上がる。DFは右から右SBソラーノ、CBテラン、CBクエスタ、左SBベラ。GKはルイスが守る。

 前半5分、コロンビアはCB立田のファールからCHアトゥエスタがFKを蹴るが、壁に当たって枠を外す。日本も8分、左FW久保がドリブルで上がって倒されたFKを自ら狙うが、壁にはね返される。すると10分には右FW堂安もドリブルで持ち上がる。同じようにファールを受けて、今度は堂安がFKを狙うが、バーの上に外れた。前半は日本が積極的に攻めていった。20分には右FW堂安のパスからCH中山がミドルシュートを放つが、枠を外した。

 しかしその後は次第にコロンビアが圧力を強めてくる。26分、CBテランのフィードにFWサンドバルが右CB岩田と競り合って、かわしてシュート。29分にはCH中山から右SHラミレスがボールを奪い、左SHベネディティがFWマルケスとのワンツーからミドルシュートを放つ。さらに37分、CB立田から右CB岩田へのパスが弱かったところをFWサンドバルがしっかりプレスをかけて、こぼれ球を左SHベネディティがスルーパス。FWマルケスが抜け出してシュート。しかし飛び出したGK大迫の迫力に負けたか、ポスト左に外す。倒れてPKをアピールするも、逆にイエローカードを受けた。

 40分には右SBソラーノの縦パスをCH田中がクリアしたボールがCH中山に当たって、あわやオウンゴール。GK大迫のファインセーブでクリアした。しかし前半中盤以降は完全にコロンビアのペース。コロンビアのプレスに日本は中盤から後ろが下がってしまい、攻撃は前の3人頼み。中でもCH中山がボールを持ってもパスを出せず、再三ボールロストをしてしまう。解説の播戸が2シャドーに対する上田綺世のプレーを指摘するが、なるほどわかりやすい。上田綺世が悪いわけではないが、後半最初には小川航基と交代した。

 CF小川航基は序盤、積極的に前からプレスをかけに行く。しかし2分、左SBベラのクロスをFWマルケスがCB立田と競って、こぼれ球をFWサンドバルが持ち出してシュート。ついにコロンビアが先制点を挙げた。日本は守備ラインが下がり過ぎて、コロンビアの攻撃を受けてしまう。5分には右SHラミレスがミドルシュート。8分にも左SHネベディティがミドルシュート。両SHがイキイキと攻撃をする。また中盤での守備も強く、さらにCBは速い。11分には右SBセグーラの縦パスに抜け出した右SHラミレスのクロスに左SHベネディティがミドルシュート。12分にはCBテランのロングスローから左SHベネディティがシュートを放つ。翻弄され、圧倒される日本守備陣。

 そして14分、左SHベネディティがドリブルで左から中へ持ち込むと、右SHラミレスがスイッチする形でシュート。これが決まり、コロンビアが追加点を挙げた。日本は17分、CB岩田に代えて右SH三好、菅に代えて左SB原輝綺を投入。布陣も堂安をトップ下に置く4-2-3-1に変更する。コロンビアも18分、FWガルシア。21分、左SHカルボネーロ。23分、右SHミランダと選手を交代していく。これで守備的になるかと思ったが、プレスの厳しさ、前への意識は全く変わらない。29分にはコロンビアの猛攻を何とか耐えきった。日本もトップ下の攻撃的MFのポジションを変えて何とかチャンスを作ろうとするが、コロンビアの寄せも速い。

 35分、左SH久保が仕掛けて、深い位置からクロスにOH堂安がシュート。GKルイスがナイスセーブ。36分にはOH堂安のスルーパスにCF小川航基が抜け出すが、シュートはGKルイスがわずかに触って、ポストに弾かれた。決定機を許さないコロンビア。38分には右SHミランダが左SH久保の股下を抜き、左SB原を抜いて、クロスにFWガルシアがシュート。大きく上に外れた。39分にはOH堂安に代えて食野。42分にはCH田中駿汰に代えてFW前田大然を投入する。必死に攻めるが、コロンビアの守備が堅い。45+1分、右SB菅原が右SH三好とのワンツーで攻め上がり、クロス性のミドルシュートを放つが、ファーに外れる。結局、このままタイムアップ。2-0。日本U-22はコロンビア相手に完敗だった。

 森保監督は日本代表のゲームが中心で、U-22のチームをしっかり把握できていなかったのかもしれない。3バックの布陣は森保監督が理想とする布陣かもしれないが、両WBがもっと攻撃的にプレーしないと機能しない。またCH中山が再三、ボールロストをして自信を失い、攻撃陣とのリンク役を果たすことができないと、前3人が完全に浮いてしまった。3人だけでは攻撃はできない。逆に言えば、日本U-22チームの課題もよく見えたゲームだった。CBには冨安のカムバックを待とう。ボランチは田中碧が戻れば変わるかもしれないが、もっと攻撃的にプレーできる選手が必要だ。そしてFWも堂安・久保との連携をもった高める必要がある。代表でも大迫や南野の存在があってこそ、両SHが生きる。解説の播戸が言っていたように、堂安・久保を生かし、自らも生きるようなプレーが必要だ。早めにオーバーエイジを選出し、連携を深めていくことも必要かもしれない。

戦争の記憶

 日韓関係が依然、回復していかない。韓国からのアプローチはあるようだが、日本政府の対応が硬直的だ。あいちトリエンナーレの「表現の不自由展・その後」に対する政府の対応も、歴史問題に対して硬直的な姿勢を感じる。何に対して硬直的なのか。「歴史」に対して。若しくは、自身の「記憶」に対して。こうあってほしい「歴史」。こうであったに違いない「戦争の記憶」。コロンビア大学歴史学教授であるキャロツ・グラック氏が、出自の違う多くの学生たちと語り合い、「戦争の記憶」の正体について明らかにしていく。

 「歴史」というのはあくまで過去のことをその時点で明らかにしようという試みであり、それを振り返る人の立場で全く違ったものになっていく。これはもはや「歴史」ではなく「記憶」であり、それぞれの国にはそれぞれの「国民の物語」がある。第二次世界大戦を題材に、出自の異なる各学生がそれぞれどう見ているのか。それはどういう情報や学習によってそう考えるようになったのか。そういった学生個々の体験・見識を問うことで、「歴史」と思っていたものが単なる「記憶」であり、それは様々な方法によって作り出されていることを明らかにする。

 「共通の記憶」の領域には4つある。オフィシャルなもの、メディアなどの民間によるもの、祖父母などから伝え聞いたりした個人の記憶、そしてこれらの記憶をベースに作り出されるメタ・メモリー。しかしこうして作られた各国の国民「共通の記憶」は、グローバル化の時代の中で国境を超え、「世界的な記憶の文化」を作っていく。アジア太平洋戦争中の慰安婦の問題は、既に「人権や女性の権利擁護」という視点から戦争の悲惨さを象徴する「世界的な記憶の文化」となっていると指摘する。つまり、今や慰安婦問題を否定しようとすることは、南京大虐殺の否定と同様、歴史上の真実か否かとして争われるものではなく、「世界的な記憶の文化」を否定しようとする試みであるのだ。

 戦争時の軍隊における売春組織は世界中にどこでもあった。民間人に対する虐殺も第二次世界大戦時には世界のどこでも行われた。それは当たり前のことだった。しかし、1970年代になって初めて、ホロコーストが世界の記憶となり、1980年になって初めて、慰安婦が世界の記憶となった。そして同様に、過去に対する「謝罪の文化」も育まれていった。そうした世界の歴史認識を踏まえてこそ、歴史問題に係る外交は展開されるべきである。自国の「国民の物語」をいつまで振り回していても、それは世界外交の中では却って逆効果になっているのかもしれない。

 本書の最後に、「私たちにはより良い将来に向けて努力する責任がある。なぜなら、私たちが作り出せるのは未来だけだからだ」(P189)という文章がある。そして「開かれた対話こそが…共通の未来を創造するための道で…ある」(P197)という言葉で締めくくられている。歴史は世界の人々にとってより良い将来を作り出すためにこそ使われるべきものなのだ。

 

戦争の記憶 コロンビア大学特別講義 学生との対話 (講談社現代新書)

戦争の記憶 コロンビア大学特別講義 学生との対話 (講談社現代新書)

 

 

○戦争の記憶には現在、インターナショナルでありグローバルな側面…「世界的な記憶の文化」が生まれている…現在、国家元首から自国民…あるいは…他国の人々に対して…謝罪というものが求められている。これが、世界的な記憶の文化による結果の一つです。…さまざまな場所の先住民たちは、この「謝罪の政治」がなければおそらく謝罪を得ることはなかったでしょう。…国際的にそう期待されている…今はこの期待を無視できなくなってきているのです。(P46)

○記憶に変化が起きる決定的な要因は、国内政治と国際政治です。…なぜ記憶の変化が起きたのかを知るには、政治のクロノロジー(流れ)…「時」を見ないといけません。…まさに、「原罪が過去を変える」ことがあるのです。(P91)

○日本政府が慰安婦像に抗議すればするほど…全米的に報じられれば報じられるほど…一般のアメリカ人もこの問題を認識するようになる。/「慰安婦」は…今や国境を超えて過去における戦争の記憶の一部となり、将来に向けては人権や女性の権利擁護という視点からも語られるようになった。もはや慰安婦像があろうがなかろうが、グローバルな戦争の記憶から消えることはないだろう。(P145)

ホロコーストの記憶が広く根付いたのは1970年代のことだ。慰安婦が記憶に取り込まれたのは、1990年代。この二つが広く知れわたるようになると、ホロコーストの記憶はジェノサイドに対する世界の見方に変化をもたらし、一方、慰安婦の記憶は戦時における女性への暴力に対する見方を変化させたのであった。(P146)

○私たちは、自国とほかの国々で何が起きたのかを知り、国内と国外の両方で異なる視点を理解し、尊重すべきは尊重し、悪いことは悪いと認めるべきだろう。そして私たちには、責任がある―過去に誠意をもって対処するだけでなく、より良い将来に向けて努力するという責任だ。なぜなら結局のところ、過去は過去であり、私たちが作り出せるのは未来だけだからだ。(P189)

 

W杯アジア2次予選グループF キルギス対日本

 グループFで日本に続いて2位に付けているキルギス。初戦タジキスタンに敗れているので、大したことないと思っていたら、FIFAランクはグループFの中では日本に続く94位。意外に強いチームのようだ。

 日本の布陣はいつもの4-2-3-1。大迫が欠場、堂安はU-22に召集されたこともあり、ワントップには永井。右SHには伊東純也が入るモンゴル戦と同じ先発。左SHには久しぶりに原口が先発し、トップ下の南野は変わらない。ボランチ遠藤航と柴崎。DFはケガの冨安に代わり、タジキスタン戦と同様にCB植田直道が先発した。右SB酒井宏樹、左SB長友、CB吉田は変わらない。GKは権田が守る。対するキルギスは3-6-1。ムルザエフをトップに、トップ下にアルクロフ。中盤はベルンハルトをアンカーに、右IHシュクロフ、左IHムサベコフ。右WBマイヤーと左WBサギンバエフが左右に開き、3バックは右からイウスボフ、コズバエフ、キチン。GKはカディルベコフ。

 序盤、キルギスがホームの声援を受けて、かなり積極的にゲームに入った。9分には左CBキチンからの大きなサイドチェンジが正確に右WBマイヤーに渡り、マイヤーのクロスを右IHシュクロフがつなぐ。CFムルザエフの落としをOHアルクロフがシュートするが、うまくヒットしない。シュートミスに救われたが、左CBキチン、そして右WBマイヤーのキックは精度が高く、脅威だ。

 日本は14分、CB植田のフィードをCF永井が受けて右に展開。右SH伊東純也のクロスにOH南野がヘディングシュートするも枠に飛ばない。17分には左SH原口の縦パスをOH南野が左に展開。CF永井が追い付いて、クロスのクリアをOH南野が飛び込むが、DFにクリアされる。さらに18分にはCH遠藤がドリブルで中央を突破。最後はOH南野がシュートを放つが、GKカディルベコフにナイスセーブされた。

 キルギスは思った以上に高い位置からのプレス、寄せも速く、前への意識も高くて、攻守の切り替えも早い。24分、CHベルンハルトのCKのこぼれからOHアルクロフがミドルシュート。31分には右WBマイヤーのパスを右IHシュクロフが左に展開。OHアルクロフがドリブルで持ち上がり、切り返しでCH遠藤を滑らせて、クロスに左WBサギンバエフがシュート。だがGK権田がビッグセーブで弾き返した。

 34分にはOH南野の縦パスを右IH伊東が右に流して、右SB酒井宏樹のクロスに左SH原口。いやその前に入ったCF永井がヘディングするが、両者が重なって、うまくヘディングを叩けなかった。キルギスも36分、CHベルンハルトのFKのクリアを左IHムサベコフがミドルシュート。CHベルンハルトのセットプレーも正確で要注意だ。

 なかなかゴールが遠く、このまま前半も終わりかと思った41分、CH遠藤の縦パスをIH伊東が反転しながら受けて、前に流れたボールにOH南野が猛然と走り込むと、GKカディルベコフの手よりも早くボールに触って倒された。PK。これを南野が自分で決めて、ようやく日本が先制点を挙げた。PKをもらいに行った感じはあるが、それも含めて南野のレベルの高さと好調さを評価したい。その後は43分にCH柴崎のFKから右SB酒井がヘディングシュート。45+2分、OH南野のクロスに右SH伊東純也はシュートと日本が攻め込むが、いずれもサイドネットに外した。前半は日本1点のリードで折り返した。

 後半もキルギスが積極的に前から攻めてきたが、日本もしっかりと守って攻めていく。そして8分、CH遠藤がDFに倒されてPA手前でFKのチャンスを得ると、左SH原口が直接決めて、日本が追加点を挙げた。これで余裕を得た日本はゴール前をしっかり守り、無理せずに攻める展開。キルギスも13分、左WBサギンバエフの縦パスを右IHシュクロフがヘディングで落とし、左IHムサベコフの落としをCFムルザエフがシュート。GK権田がナイスセーブ。

 日本も22分、左SB長友のクロスにOH南野がシュートを放つが、GKカディルベコフがナイスセーブ。23分、キルギスはOHアルクロフから右に展開。右WBマイヤーのクロスにCFムルザエフが反転してシュートを放つが、これもGK権田がファインセーブで弾き出した。キルギスの速い寄せに日本が攻めの途中でボールを奪われ、攻め込まれる場面も何度かあったが、ゴール前への戻りも早く、日本が人数をかけてゴール前でブロックを作る。33分には伊東と遠藤を下げて、左SH中島翔哉、CHには山口蛍を入れる。原口が右SHに移る。さらに42分にはCF永井に代えて鈴木武蔵。だが終盤はキルギスの攻撃に対して日本が守る展開。それでも最後までしっかりと守り切って、2-0。日本がグループリーグ4連勝を飾った。

 グループリーグの前半を折り返してダントツで日本が首位。後半はホームゲームも多く、できれば国内の選手の起用も期待したい。他のグループを見てみると、オーストラリアとシリアが日本と同様、4連勝を重ねて首位。アジア杯王者のカタールも順調にグループ首位に立っている。シリアに先行された中国のリッピ監督は辞任が発表された。また、タイがマレーシアに不覚を取ってベトナムにリードを許している。他にも韓国が首位ながら2分けしていたりと色々と興味深い。次戦は強化試合のベネズエラ戦。その前に日曜日にはU-22のコロンビア戦がある。久保と堂安が合流したチームの戦いぶりも楽しみにしよう。サンフレッチェとの練習試合では負けたようだが、森保監督が指揮を執ってのゲームを期待したい。