海堂尊の新刊文庫本が発行されたのでさっそく購入。しかし読み出すと「あれ、医療モノじゃない!」 平沼平介という登場人物は、先に読んだ「ジェネラル・ルージュの伝説」でも紹介されていて、少し楽しみにしていたけど、こんな情けない人物とは思わなかった。いや、愛すべき人物。その他にも、東城大学病院の歌姫・浜田小夜や牧村瑞人も登場し、一連のシリーズの外伝、スピンオフという感じで楽しめる。
ミステリーや推理小説の世界に詳しくないので、最初、扉紹介に書かれた「コンゲーム」の意味が分からなかった。大ほら吹きの詐欺犯罪などを扱った作品ジャンルを言うようだが、解説には「クライムコメディ」という言葉も使われている。確かに、コメディというにふさわしい楽しく愉快な作品。
ただし最後に平沼平介が博士となりNASAで講演するというのは話を大きくし過ぎていないか。田口-白鳥コンビに匹敵する凸凹コンビである、平沼と久光譲治はもっと大事に扱えば、筆者のもう一つの代表シリーズになるのではないかと思うと、少し急ぎ過ぎで心配。
ま、しかし、市役所の悪行の扱いも戯画的で(こんな役所は絶対ないし)、漫画を読んでいるように非現実的。AIの普及など、社会的な企図をもって書かれた田口-白鳥シリーズに比べれば楽しませる、または本人が楽しむために書かれたような作品であり、気宇壮大なお気楽バカコメディと思えば、これでいいのかも。次のシリーズも読んでみたいと思いました。
- 作者: 海堂尊
- 出版社/メーカー: 東京創元社
- 発売日: 2009/10/30
- メディア: 文庫
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●まったく、俺ってヤツは……。認めたくはないが、人間、自分が一番信用できないということは、真実のようだ。(P175)
●お前が手にした力は、本当にお前の力なのか? お前こそ、集団で見る組織という夢に悪酔いしていないか? 現実から避難した虚構の世界で生き続けると、いつかどこかで破綻する。地に足をつけろ。忘れるな。”ジハード、ダイハード”だ。(P313)