とんま天狗は雲の上

サッカー観戦と読書記録と日々感じたこと等を綴っています。

目の前が突然開けるとき

 昨年度まで同じグループで仕事をしていたWさんが、4月に昇格・異動していった。今まで技術的な業務を中心に従事してきたWさんだが、新しい職場はお客さん対応の業務で、行く前からかなり不安に思っていた。
 前任者も技術職だが、仕事に嫌気が差したか、定年より1年早く退職した。仕事の実質はナンバー2に任せていた感じだが、4月にその人も異動し、フレッシュな陣容で業務に当たることになった。
 4月に実際に業務に付いてみると、ベテランのナンバー2氏が彼流で処理してきた案件が山積。その後処理に追われ、6月頃にはかなりぼやきが聞かれた。
 日常的な対応も大変だが、前任者がやり残していった業務もいくつかあり、中でもやり始めただけで異動していったある業務について、前任者のスケジュールに従って業務を進めたところ、強烈なクレーマー2名に遭遇。どうやら前任者も承知の上でこれまで積極的には対応してこなかった案件のようで、まるで蟻地獄に嵌るようにずるずると落とし穴に落ち込んでいった。
 8月以降、毎朝クレームの電話が入り、関係のない支所に押しかけ、そこからも苦情が入る始末。こんな状況に耐えかねたナンバー2氏の後任者が突然退職。アルバイト君の退社もあって、まさに泣きっ面に蜂。さすがにW氏もこの苦境に精神的にも不安定になり、メンタルクリニックへ通い出した。突然退職されたポストには他から人材があてがわれたが、その後も会社窓口に詰めかけてきたクレーマー氏を見かけたこともあり、端からながら大変だなあと同情していた。
 この間、たまたま昼休みにW氏と出会った。これまでも見かけはしたが、なかなか声をかけられない状況だったが、このときはお互い時間があったこともあり、また顔色も良さそうだったので、「最近、仕事の状況はどう?」と聞いてみた。
 彼が明るく饒舌に語り出した。クレーマー氏はようやく年末頃から収まり始め、今月は何も言ってこない状況になったとのこと。もちろんこれには彼の努力が大きく、相手の立場に立った誠実な対応がクレーマー氏らの矛を収める結果につながった。また、退職者の後に異動してきた部下が優秀で担当業務をきちんと整理して対応するとともに、偶然舞い込んだ他所からの支援をうまく活かして、これまで手を付けられずにいた問題業務にも改善の方向が見えつつある。メンタルクリニックの先生からももう大丈夫と言われ、「今までの苦労はなんだったのだろうと思うほど、急に目の前が開けてきた」と喜んでいた。「お宮参りもしたが、それが効力があったとも思えない。星の巡りかな」と笑う。
 こんなことって確かにあるよなと思う。それでもよかった。クレーマー氏もそこに至るには背景があるのだろうし、誰が悪いわけではないのかもしれない。それでも人生ってこんなことがある。自分にもいつ訪れるかもしれない。結局持って生まれた運命かもしれないが、何はともあれ、よかったと今は喜びたい。