とんま天狗は雲の上

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地域主権

 この間まで「地方分権」と言われてきた行政事務の地方自治体への移管が、いつのまにか「地域主権」と呼ばれるようになっていた。先頃閣議決定された「地域主権改革の推進を図るための関係法律の整備に関する法律案」、略して「地域主権改革推進一括法案」だ。
 「地方分権」と「地域主権」をくらべてみると、2文字も違う。「地方」と言うと「地方自治体」のイメージがあるが、「地域」では必ずしも「地方自治体」だけでなく、地域NPOや地域住民も含むイメージがある。「分権」だと、国が所有する権力の一部を分け与えるイメージだが、「主権」は本来帰属すべきところに収めたというイメージだ。
 しかし言葉をどう変えようが、中身に変更があるわけではない。
 全国知事会が「地域主権」と唱えて国に働きかけてきたが、どこまでの覚悟と具体的な業務イメージがあって活動をしてきたのかはなはだ疑わしい。これを機に、国はお荷物の行政事務を地方自治体に押し付けようとしているかもしれない。
 例えば、保育園の設置基準を地方に委ねる件は、保育園の幼児保護の責務を地方に押し付けるものだという解釈も成り立つ。同様に、公営住宅の収入基準や面積基準を地方条例に委任する件も、公営住宅が対象とする低所得者の基準や住宅の面積を地方に委ね、国は責任逃れを図っているように思える。
 国防や外交は国が責任を持つ分野であり、地域インフラの整備や地域経済は地方の仕事だろうか。福祉は? 健康は? 雇用は? それぞれ国が果たす役割と地方の自由に委ねてかまわない事柄がありそうだ。
 「地域主権改革推進一括法案」は、本当に国・地方対等の立場の中で、国・地方の本来業務が明確に意識された事務区分になっているのだろうか。「地域主権」という美名の下に、とんでもない改革が隠れていないだろうか。