とんま天狗は雲の上

サッカー観戦と読書記録と日々感じたこと等を綴っています。

マリーシア

 筆者の戸塚啓を、元読売ベルディの戸塚哲也と勘違いしていた。炉端屋のオヤジをしていた戸塚哲也マリーシアについての本を書いたと思い、どんな内容かと期待したが、なんだ!人違いか。
 とわかった途端に期待度も相当にブレイクダウンしたが、マリーシアを筆者が言うように捉えるならば、それは大いに賛成だ。

マリーシアとは、「狡猾さ」だけを指し示す言葉ではない。/マリーシアとは、「柔軟性を持った発想力」である。/マリーシアとは、「勝つために必要な駆け引き」である。/そして、マリーシアは・・・フットボーラーなら誰もが身につけるべきスキルである。(P9)

 つまり、マリーシアとは「勝利へのメンタリティ」ということだ。だからこそ時間稼ぎや故意のファールも正当化される。本書で延々述べているのはそういうことだ。
 文章は、ブラジル人Jリーガーへのインタビューがふんだんに紹介され、もっぱらそれで構成されている。後は、日本代表のふがいない戦いの記憶である。ドイツW杯での前半同点に追い付かれたブラジル戦。2008年w杯最終予選の3-0から3-2に追い付かれたバーレーン戦・・・。
 しかし、ヨーロッパの各国もけっこう終了間際の同点や逆転を許している。マンUが後半ロスタイムでのゴールが多いのはあふれるマリーシアのせいか。そうかもしれない。日本だけにマリーシアがないとは言い切れない。
 「勝利へのメンタリティ」。「W杯4強」宣言はそれを呼び起こすものだったと思う。来るW杯で日本代表がどういうゲームを見せてくれるか。マリーシアあふれるプレーを披露してくれるのか。これまでの軌跡を見る限り、「柔軟性を持った発想力」あるチーム作りをしてきたようには思えないが、これだけ岡田ジャパンが叩かれる中で、選手の中に密かにマリーシアが醸成されていることを期待したい。

マリーシア (光文社新書)

マリーシア (光文社新書)

マリーシアとはポジティブな行動を指すものだと考えています。・・・たとえば、自分の子どもといい関係を作り、子どもをきちんと育てていくために、両親はマリーシアを持っていなければならない。友だちといい関係を築くために、マリーシアを持っていなければならない。・・・我々が考えるマリーシアというのは、目の前の状況を最大限に利用して、最大の結果を得るための方策なのです。(P92)
●ブラジル人は・・・マリーシアに「インテリジェンス」や「クリエイティブ」といった意味を持たせている。そして、知性や創造性を働かせる出発点となるのは、目の前の局面を制するために必要な駆け引きにほかならない。(P125)
●日本でプレーしていると、『シンプルにプレーしろ』とか、『もっと簡単にプレーしろ』と言われることが多いですが、ブラジルでは逆のことを言われます。どんどん仕掛けろ、ドリブルでいけ。・・・ブラジルでは、『楽しんでプレーしろ』とよく言われるんです。ドリブルが得意ならやってみろ。マタ抜きを狙いたいならやってみろ、と。まず自分が楽しめ、そうすればお客さんも楽しめるから、とね(P224)