とんま天狗は雲の上

サッカー観戦と読書記録と日々感じたこと等を綴っています。

偉大なモウリーニョ

 UEFAチャンピオンズ・リーグ。インテルvsバイエルンの決勝戦は、モウリーニョの筋書きどおり、インテルの完勝で45年ぶりの優勝を飾った。モウリーニョにとってはポルトを率いて以来2度目。この大仕事をモウリーニョは完璧にやり遂げて見せた。すばらしい。すごい。
 リベリの欠場で戦前からインテル有利と言われていたが、インテルもモッタが欠場。こうした状況の中で、キブを左SBに起用。カンビアッソと二人でバイエルン最大のロングポイント、ロッベンを抑え、ミリートをトップに、エトーパンデフスナイデルの4人でカウンター攻撃に徹する戦い方を貫く。
 立ち上がり4分、バイエルンがオリッチのクロスからミュラーのヘッドでチャンスを作ると、5分にはミリートからスナイデルのスルーパスパンデフが走りこむ。10分にはロッベンが右サイド、見事な突破からクロスを上げてオリッチがシュート。13分、アルティントップが中央でドリブルからミドルシュートを放つと、16分にはロッベンのクロスにファン・ブイテンがヘッド。バイエルンがボール・ポゼッション高くパスを回して攻め込むが、インテルは決して守備ブロックの中には入らせず、堅い守りで余裕にゲームをコントロールする。
 18分、スナイデルのFKはGKが好セーブ。23分、オリッチのポストプレーミュラーがはたきロッベンがシュート。バイエルンが押すがどうしてもゴールを破れない。
 と35分、GKからのフィードがミリートに収まり、スナイデルのスルーパスミリートが走り込んで落ち着いたループシュートでゴールネットを揺らした。ミリートミリートミリート
 これで前がかりになるバイエルンに対して、スピードのあるエトーがワントップに座る布陣変更。37分にはスナイデルからそのエトーに渡り、パンデフミリートとつないで再びエトーへ。バイエルンの攻撃を牽制する憎い采配。43分にはカンビアッソからスナイデルを経てミリートのクロスにスナイデルがフリーで抜け出しシュート。GKが好セーブ。バイエルンの両SBは高いが脆い。前半は完全にインテルがゲームをコントロールした。
 後半早々、バイエルンが攻め込む。中盤、シュバインシュタインからのパスにオリッチがポストとなってアルティントップを経てミュラーが飛び出しフリーでシュート。しかし思い切り蹴ったシュートはGKセーザルが足でセーブ。まだまだ若い。浮かせるなどの落ち着きがほしかった。ここもインテルとの差。その直後にはパンデフミリートとのパス交換からループシュートを見せ、一瞬でゲームの流れを取り戻す。
 9分、アルティントップ。18分、ロッベンのFKがDFに当たって跳ね返ったところをミュラーがボレー。しかしカンビアッソがしっかりと詰めている。20分、ロッベンミドルシュートがゴール左上隅を襲うと、22分、1枚カードをもらったキブをスタンコビッチに替え、サネッティを左に回してロッベン封じを強化。25分、再びロッベンのクロスにクローゼが落としオリッチがシュートするもDFにはじき返される。
 とその直後、中盤でスナイデルからエトーにパスが出ると、左サイドを上がるミリ―トにパス。エトーも右サイドを上がりバイエルン守備陣が両者に気を使わざるを得ない状況の中で、ミリートがゆったりとしたキープから大きなフェイントでDFをかわしシュート。決定的な2点目を挙げた。
 その後はマリオ・ゴメスを入れて前線に高さを作るバイエルンに対して、インテルパンデフムンタリに替えて守備を強化し、中にボールを入れられない状況を作る。ロスタイムには時間稼ぎにマテラッツィまで投入して完璧な勝利。モウリーニョ筋書きどおりの優勝を飾った。
 大きなドラマがあったわけではない。カウンター主体で派手なパスゲームを見せたわけでもない。勝利へのメンタリティ。エトーまで右サイドに下がって守備に参加する。勝利に向けて必要な戦術、必要な選手、必要な技術のすべてを投入するモウリーニョ精神での勝利。まさに偉大なモウリーニョ監督のリアリズム・サッカーの真髄。チャンピオンズ・リーグの決勝でこのゲームを見せつけることができる。そのことが最高にすごい。現在、世界最高の監督と言って間違いない。
 このチームのまま世界クラブ選手権に乗り込むかと思えば、既にモウリーニョ移籍の噂が出ているという。興業の世界一よりも次のリーグ・次のチームでさらに別の実質の世界一を狙おうというその精神がまたリアリズムであり、究極のロマンであり、まさにモウリーニョ自身だ。どこまで行くのか。彼にはワールドカップですらお遊びに映っているのだろうか。
 しかし世界のサッカー界はこれからそのサッカーの祭典に向けて高まっていく。モウリーニョのリアリズムを置いて。そしてそこで僕らはまた違う夢を見る。さあ次はワールドカップの時間だ。