とんま天狗は雲の上

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日本が「対米従属」を脱する日

 鳩山首相が辞任し、管首相が選出された。本書はまだ鳩山政権に勢いのあった昨年12月に発行されたものだが、世界情勢、日本政治の大局はそれほど大きく変わっていないように感じる。
 「日本が『対米従属』を脱する日」というタイトルには、「民主党政権は対米従属からの転換を意図している」という見通しの中で書かれている。普天間問題の決着が依然この見通しの中にあると考えていいものかどうか迷うところもあるが、「わざと失敗」「わざと逆に舵を切ってやり過ぎる」「従うふりをする」といった著者が盛んに主張する遠謀深慮の政治の中では、筆者の言うことは今も変わらないのではないかと思わせる。いや、そうあってほしいと願う。
 私も普段愛読するウェブサイト「田中宇の国際ニュース解説」の記事をまとめたものである。ただし当ウェブサイトは3つに2つは有料サイトに移行したので、すべてを読んでいるわけではない。こうしてときどき本にまとめて発行してもらうと本当にありがたい。ただし弱小出版社のせいか、なかなか市図書館で納入してもらえず、読むのが刊行から半年以上も遅くなってしまった。その結果の鳩山退陣、普天間決着だが、引用したとおり、普天間問題についても丁寧に取材して、長期的な見通しを披露している。
 そう普天間問題はあれで決着したわけではない。逆に沖縄や日本列島全体に沖縄問題を可視化したことこそが最大の効果であり目的であったのだ。そう思えば結論は辺野古移設でも何でもかまわない。どうせ辺野古移設は困難であり、ぐずぐずしているうちに世界情勢は変化し、「対米従属」は不可能になるのだから。そのための布石の一つと考えれば、日本の「対米従属離脱」政策は着々と進められていると言えよう。そうでないと日本に未来はないし、いやでも「対米従属離脱」の時はやってくる。なぜなら米国がそれを許さないから。もしくは米国がなくなるから。その時に備えて少しでもショックなく政策転換できるよう努めていくことは日本にとって非常に重要なことに違いない。

日本が「対米従属」を脱する日--多極化する新世界秩序の中で

日本が「対米従属」を脱する日--多極化する新世界秩序の中で

●日本の輸出産業の利益のみに焦点を当てて「日本には円安ドル高が望ましい」と考える従来の教科書的な考え方は、政治的に見ると、日独がドルを買い支えるという、1971年のニクソンショックから90年代の金融グローバリゼーションによる米英復活までの英米中心主義の戦略に沿ったものであり、日本の対米従属戦略の一環である。・・・民主党政権は、アジア開発銀行ASEAN+日中韓が推進してきた「アジア共通通貨」(アジア通貨統合)の構想を支持しているが、これもドル崩壊への備えと考えれば当然の方針転換である。(P38)
●米英中心主義者による延命策や逆流策がうまくいかなければ、ドルは崩壊し、米英中心の世界体制は崩れ、米国は通貨と財政の破綻と、もしかすると米連邦の解体まで起きる。しかし米国が破綻するのは、英国など覇権を維持したい勢力に牛耳られてきた状態をふりほどくためであり、米国は恒久的に崩壊状態になるのではなく、システムが「再起動」されるだけである。いったん単独覇権国型の米国の国家システムが「シャットダウン」された後、多極型の世界に対応した別のシステム(従来の中傷表現でいうところの「孤立主義」)を採用する新生米国は立ち上がってくるだろう。(P68)
●未来予測で有名な米国のジェラルド・セレンテは最近「2012年には米国で、食糧暴動、税金不払い運動、農民一揆、学生反乱、ホームレス蜂起、家を追われた人々のテント街の拡大、商店街の廃墟化、ストライキ、誘拐、ギャング抗争などが起きる」と予測し、この状態を「オバマゲドン」(オバマのハルマゲドン)と呼んだ。米国は、ドルだけでなく国家ごと崩壊していきそうだ。(P222)
●県外移転はほぼ無理だ。米軍は今後さんざん日本人の反米感情を煽った末に、最後は怒って日本から撤退する。米政府はそのつもりだろう。そのころには、北朝鮮6カ国協議も進展して「北東アジア集団安保体制」に衣替えする流れになるだろうから、日本の防衛には問題はない。(P238)