とんま天狗は雲の上

サッカー観戦と読書記録と日々感じたこと等を綴っています。

2012年、世界恐慌

 タイトルに惹かれた。一昨年のリーマンショック以降、世界はいつ崩壊してもおかしくない状況に置かれている。日本ではGNPを大幅に上回る国債発行額や財政赤字が日本社会を崩壊に導く可能性が高い。
 本書はこうした私の危機感に対して、経済の専門家が答える「世界経済崩壊のシナリオ」だ。金融危機、経済危機が財政危機を引き起こし、「ソブリン・ショック」(国家破綻)に至るというのは容易に想像できるシナリオだ。そのトリガーとしては3つ考えられるという。「投機筋の暗躍」「政策ミス」「途上国市場バブルの崩壊」だ。
 どれも怖いが、特に1番目の「投機筋の暗躍」は明らかに作為的なものだけに、あってはならないが、最もありがちに映る。そうしたとき、日本はどうなるのだろう。
 ここで描かれているのはあくまで経済崩壊であり、そのとき世界は経済が中心ではない新たなフェーズに移る。それは「おわりに」で書かれる「質的に高次の資本主義」「真に地球環境と人間に優しいシステム」かもしれない。そのときの到来をわれわれはどういう気持ちで迎えればいいのか。経済に門外漢で、大した資産も収入もない一般人のわたしにとって、それは夢の世界か、はたまた地獄図絵か。
 そんなことを思いつつ本書を読み終えた。

2012年、世界恐慌 ソブリン・リスクの先を読む (朝日新書)

2012年、世界恐慌 ソブリン・リスクの先を読む (朝日新書)

●今回の世界経済・金融危機の本質を考察する場合、重要なことは、金融危機によってもたらされた経済危機が必然的に財政危機を将来するということである。金融危機と経済危機によってもたらされた財政危機が深化し、連鎖的な「ソブリン・リスク」(国家破産のリスク)の顕在化から現代の世界恐慌が勃発する可能性が高い。(P11)
●各国がケインズ政策に基づいてこぞって財政出動している姿は、まことに「正しい」。/だが、1929年の世界大恐慌当時の主流派経済学であった「政府がなにもしない」という政策が、正しさゆえに恐慌を深刻化させたように、今回も皆がケインズ政策を実施することが「正しい」ゆえに間違いをもたらす可能性がある。/金融機関の連鎖的倒産の直前という金融危機と、景気の悪化という経済危機をなんとしても食い止めようと、ケインズ政策が徹底的に遂行されていくと、最後は中央銀行の経営危機と財政破綻という経済破綻に行き着く。しかも、一国だけでなく、世界中が同じ危険性をかかえている。これこそソブリン・ショックの正体である。(P140)
●各国の財政赤字の累進による財政危機、国債の激増というすさまじいマグマを世界はかかえている。このマグマは、いずれ国債の消化不良、国債債務不履行、国家破産として爆発する。/それでは、マグマに火をつけるトリガー(引き金)の役目をはたすものは何であろうか。世界マネーの動きを子細に眺めると、それは三つに絞られる。すなわち、投機筋の暗躍、正常化を急ぐあまり当局が起こす政策ミス、そしてエマージング市場バブルの崩壊、の三つである。(P152)
●移民については、日本国民になってくれる人はだれでも喜んで受け入れることが肝要だ。「日本の国土は誰のものか」という問いをじっくり考えるとよい。答えは、ここに住むことに喜びを感じ責任を果たしてくれる人ということであろう。(P185)