とんま天狗は雲の上

サッカー観戦と読書記録と日々感じたこと等を綴っています。

魅惑のチリ攻撃サッカー 王国ブラジルの前に輝き散る

 ベスト16、ブラジルvsチリ。南米予選1位2位対決。元アルゼンチン代表を率いた名将ビエルサ監督の下、今大会、小兵ながら全員守備全員攻撃で魅力的なサッカーを展開したチリだが、今大会充実のブラジルの前では力及ばず3-0で完敗した。しかし90分間動き回るそのスタイルはオシム監督時代のジェフ千葉を彷彿とさせるもので、日本代表がめざしていたものではなかったか。このゲームでもその魅力あふれるサッカーを存分に披露した。
 立ち上がり5分、ロビーニョからルイス・ファビアーノがシュート。9分にもダシルバのシュートと攻撃を仕掛けたブラジルだが、チリも13分、サンチェスのスルーパススアソがシュートを放つ。
 高い位置からのプレスで積極的に前に出ていくチリに対して、ブラジルは個人技でかわしつつパスをつなぎ攻撃を組み立てようとする。両者お互いの特徴を披露する互角の展開。
 しかし、技術と体格に勝るブラジルが35分、セットプレーから先制点を挙げる。35分、マイコンのCKにフアンがヘッド。ルシオと並んで飛ぶと、制空権は全くブラジルのもの。続く38分にも、カウンターからルイス・ファビアーノがポストに入り、左サイドでロビーニョが走り、中央にクロス。カカがワンタッチ・スルーパスを出すとルイス・ファビアーノが反転からきれいに抜け出してGKをかわし追加点を入れる。お見事。
 しかしこれで落ち込むことなく攻撃的な戦いを続けるチリの姿勢がすばらしい。40分にはボセジュールからビダルが左サイドにパス。フリーのゴンサレスがシュートするも惜しくも枠を外れる。
 後半早々、左SHのゴンサレスに代えてテジョ。CBのコントレラスに代えてトップ下にバルディビアを投入。さらに攻撃的に出る。チリのフォーメーションは3-4-3だと思うが、フエンテス、コントレラス、イスラ、ハラらのDF陣は、日本で言えば阿部や今野といったイメージで、非常に流動的。カルナモがアンカーとして後ろをケアするが、必要とあれば前線に上がりパスを供給する。トップのスアソも技術力は高く、サンチェス、バルディビアの攻撃的MFが俊敏な動きでピッチを動き回り、パスを回し、恐れずドリブルで抜きにかかる。ビダル、ボセジュールの献身的で精力的な動きも素晴らしい。
 14分、カウンターからラミレスがドリブル。軽く左にパスをするとロビーニョが技ありの見事なループシュート。簡単に見せるシュート技術はさすが。ブラジルが3-0と突き放す。
 しかしチリはあくまで攻撃的なスタイルを緩めない。16分、右ストッパーのイスラに代えてミジャル投入。ビダルが右ストッパーに入るが、さらに流動的、攻撃的に。岡田監督が「守備は誰が入っても同じようにできる」と言ったが、チリは「攻撃も誰が入っても同じようにできる」。
 21分、サンチェスのドリブルからバルディビアがシュート。ブラジルも24分、ミッシェル・バストスからラミレス、ミッシェル・バストスが左サイドを駆け上がってクロス。カカがシュートと流れるような攻撃を見せれば、29分にもルイス・ファビアーノポストプレーからダニエウ・アウベスのスルーパスロビーニョが中央から右に走り込んでグラウンダーのシュート。かろうじてGKのブラボが弾く。
 しかしチリも30分、中央でボールを持ったダルディビアが左サイドに流し、ボセジュールからのクロスをスアソが反転シュート。33分にもテジャのCKがDFとチリ選手の競り合いの上を抜けると、向こう側でスアソがボレーで合わせてゴールを脅かす。38分、ブラジルがミッシェル・バストスのクロスにニウマールがヘッド。しかしチリも40分、バルディビアがテジョのポストからスルーパス、ボセジュールがシュート。ロスタイムにもバルディビアの惜しいシュートがあったが、結局最後までゴールネットを揺らすことなく、ブラジルの前に屈した。
 ゲーム後、チリの選手たちが涙を流していた。ブラジルの前に攻撃サッカーを貫いたチリ。本来めざしたはずの攻撃サッカーを貫徹できず、守備的なサッカーでベスト16に進出した日本と対象的に、チリのサッカーには「やり切った感」にあふれていた。日本もこういうサッカーを展開したかった。オシム監督なら見せてくれたのだろうか。チリを見つつ日本を思った。
PS.
 ここまで書いてアップしようとしたら、チリのビエルサ監督が日本の次期代表監督候補に挙げられているのを知った。やるじゃないか。ぜひそうあってほしい。南アフリカでやりきれなかったサッカーを今度こそブラジルで見たいものだ。