不調のフェルナンド・トーレスを先発から外したスペイン。好調のミュラーが累積警告で出場停止のドイツ。この差が出たかもしれないが、この日、活躍したのはプジョル。その魂のこもったプレーで両チームに喝を入れ、ゲームを締め、そして締めくくった。
立ち上がりからスペイン・ペース。ドイツは前からプレスをかけることなく、全体的に引き気味で、スペインの攻撃を受けつつカウンターを狙う構え。6分、ペドロのスルーパスにビジャがシュート。14分にはシャビのCKからシャビ・アロンソ、イニエスタの速いクロスにプジョルが頭から飛び込む。強烈なヘッドがゴール上を越えていく。F.トーレスに代わって入ったペドロがよくボールに絡み、ビジャもワントップながらサイドに流れてはシャビ、イニエスタ、セルヒオ・ラモスらと連携の取れた動きを見せる。
16分、ミュラーに代わって右SHに入ったトロホウスキーのドリブルからCKを得ると、エジルが上げたクロスはカシージャスがかろうじて触り、高いドイツFW陣の頭を越えていく。ミュラーとは違いドリブルが持ち味のトロホウスキーもそれなりにがんばっていたが、やはり長い距離を走るミュラーがいないことはドイツにとって少し響いたかもしれない。
19分、シャビ・アロンソの大きなサイドチェンジにセルヒオ・ラモスがシュート。しかしこの辺りからようやくドイツもスペインのパスを引っ掛けてはカウンターを仕掛け、前に出ていくようになる。26分、イニエスタからセルヒオ・ラモスのクロスにペドロがボレーを見せれば、32分、ラームが初めて上がると、トロホウスキーがミドルシュート。
ロスタイムには、クローゼのポストプレーにエジルがペナルティエリア内に走り込み倒れるが、PKならず。セルヒオ・ラモスがわずかに後ろから足を蹴っているようにも見えるが、あれでPKは取りにくいだろう。その直後、ペドロもミドルシュートを見せるが、ゴールを外れ前半を終える。
圧倒的にスペインがボールキープしてパスを回し、チャンスも掴むが、ドイツも乾坤一擲のカウンターのチャンスを窺い、緊張感高いゲーム。後半も同じような展開。3分、ペドロがドリブルからクロスを入れるとシャビ・アロンソがミドルシュート。5分にもシャビからのパスをシャビ・アロンソがミドルシュート。スペインがやや遠目からシュートを打てば、ドイツはボアテングに代えてヤンセンを投入し、攻撃への姿勢を強める。ボアテングもその強靭な身体としなやかな技術で守備面での貢献度は高かっただけに大丈夫かなと思ったが、ポドルスキーが守備に押し込められていた左サイドを活性化したかったのだろう。
10分、イニエスタからシャビとつないでビジャがシュートを放つと、13分にはイニエスタのポストプレーからカプテビラのクロス、シャビ・アロンソが落としてペドロがシュート。GKが弾くとさらにシャビ・アロンソが拾い、イニエスタに渡してドリブルで切れ込みクロス。しかしあとわずかでビジャに届かない。その連続でシャビのスルーパスにペドロがシュートを放つが外してしまう。
16分には左サイド、ヤンセンのクロスがDFに当たり中央で待つクローゼがボレーシュート。しかし体勢がやや崩れて枠を外れる。18分、シャビ・アロンソのスルーパスにセルヒオ・ラモスが走り込むが、ポドルスキーが戻って何とかクリア。17分にトロホウスキーに代えてクロースを入れると、24分、エジルからポドルスキーのクロスにクローゼが中央でDFを引っ張って外側からクロースがシュート。しかしGKカシージャスが立ちはだかる。
28分。右サイド。これまで高さを嫌って散々ショートクロスを多用してきたところを初めて中央に山なりのCK。これに最後方から助走をつけて飛び込んだプジョルが、味方のピケと競り合うかのように押しのけて強烈ヘッド。ついにスペインが先制点を掴む。178cmの小柄なCBが挙げた魂のゴール。やはりプジョルはスペインの精神的な支柱だ。
その後は35分にF.トーレス。40分にダビド・シルバ、ロスタイムにはマルチェナを入れて時間をうまく使い、必死で反撃するドイツ攻撃陣をうまくあしらって、スペインが初の決勝進出を決めた。
いいゲームだった。ミュラーがいなかったことがやはり大きかった。シュバインシュタイガーやラームも頑張ったが、若さと勢いはスペインの巧さと魂の前に屈した。「まだまだ若い。あと4年間、苦労しなさい」とでも言うように。そう、エジルもまだスナイデルのレベルにはほど遠かった。でも4年後がさらに楽しみだ。
これで決勝はオランダvsスペイン。スペインがパスを回し、オランダがカウンターで対抗する展開になるんだろうな。しかしオランダにはスナイデルがいる。ロッベンがいる。この強力な攻撃力をスペインがいかにかわしてチャンスをモノにできるか。月曜日の朝も遅刻しようっと。
