とんま天狗は雲の上

サッカー観戦と読書記録と日々感じたこと等を綴っています。

転職できる年齢

 仕事上、地方新聞社の事業部社員とつきあいがあった。先日久しぶりに彼が訪ねてきた。名刺を差し出すので見ると、見慣れない会社名が書かれている。「出向でもしたか」と尋ねると、「転職した」と言う。おおっ!びっくりした。
 新聞社の事業部というと、イベント開催などの企画・運営が多い。ある程度大手の新聞社であれば、実際の業務は子会社や冠で名前貸しということも多いようだが、彼の勤めていた新聞社は地方の中堅経済紙で、自ら業務をこなしていた。しかもかなり優秀な社員で、時代に即した企画提案を行い、業界にも顔が広く、可愛がられていた。その縁で、某社の会長に気に入られ、いわゆる「引き抜かれた」とのこと。もっとも前の会社と喧嘩別れしたわけではなく、先日も前の職場の仲間たちと飲みに行ったと話していた。
 今年で40歳。妻子もいて、簡単な決断ではなかったと思う。マスコミ業界の凋落が噂されている。実際、彼の勤めていた新聞社も発行部数は下落傾向にあったし、イベントの集客も落ちていたようだ。彼の努力でコンサルタント業務を受注し、その分野では拡大の方向もあったようだが、会社の将来的な経営戦略が全社員に共有・支持されていたということもなく、少なからず不安もあったようだ。
 しかし40歳後半になる彼の先輩は、さすがにその年では転職を思い切ることはできない。「失礼ながら・・・」と切り出し、「○○さんの年では、何とかこのまま定年まで保ってほしいと思っているでしょうけど」と言うが、確かに50代ともなればそんな感じだ。もっとも50代も前半ではこのまま逃げ切れると安心はしておらず、窮地にはまさに責任者として直面する恐れも抱きつつ、時代や環境の変化を日々観測しているというのが正直なところ。
 「自身の器量(技術・知識…)に自信のない中高年はさっさと社会の荒波に呑まれてしまえ」と思う若者も多いのだろうが、そうもいかないのが家族を抱える中高年世代のつらさ。いや、そうなる覚悟はとっくにできているし、なったらなったで自立していく自信が皆無とは言わないが、追い出される前に自分から荒波に飛び込むかどうかは乗っている船の大きさや危険度による。
 結局、リスク管理の結果と言えばそういうことだが、40歳は転職できる年齢の分岐点かもしれないと思った。50代は定年後の対応を視野に人生のリスク管理をすればいい。40代は会社と一体でリスク管理を考えなければいけない。それぞれの年齢と立場に応じた人生のリスク管理が求められる、ということか。