とんま天狗は雲の上

サッカー観戦と読書記録と日々感じたこと等を綴っています。

清里・小海町・車山高原と諏訪湖花火大会

 8月14日。お盆の週末の真っ最中。いまだ続く高速道路1000円の割引制度を活用し、中央道長坂ICから国道141号を北上した。ちなみに、八ヶ岳PAまで娘が運転。高速道路は助手席に限る。
 めざすは松原湖畔の小海町高原美術館だったが、道は清里の近くを通っていく。そう言えば、山口百恵の別荘騒動やピンクのケバいペンションが乱立して、一世を風靡した時代があったなあ。清泉寮の道案内に誘われ、国道を下りて針路を左に取った。
 気持ちのいい道を山に向かって走らせると、左側に牧場が連なり「P」の表示。木造の建物も見えるのでとりあえず駐車したが、これがドンピシャ。清泉寮本館下のジャージーハットでソフトクリームを食べながら、涼しい風に身体を冷やす。
 一段上って本館に上がれば、開拓者ポール・ラッシュの胸像と木造洋風の雰囲気のある建物がお出迎え。早めに職場や近所へのお土産を買って、牧場を眺めてのんびり過ごす。
 昔に較べればいたって空いている。今はまっとうな避暑地に戻ったようだ。小1時間も過ごして車に戻り、目的の小海町高原美術館に向かう。設計は安藤忠雄。鉄筋コンクリート打放しのこじんまりとした安藤らしいセンスにあふれる建物だ。光と緑とコンクリート壁面の使い方が秀逸。ちょうど平山郁夫展をやっていて、こちらも満喫。心が満たされた後は、お腹も満たしたい。美術館に併設されたレストラン「花豆」で食事。地元で採れたての野菜を満載したトルティーヤが美味しい。美術館本館をはさんで展望台が置かれている。そこから見る美術館がまた絶品だ。
 美術館を出たら八ヶ岳に向かって気持ちのいい道を走る。「メルヘン街道」としゃれた名前がつけられている。しばらく走って道を左に入ると、次の目的地、稲子湯。2年前に来たときは二人きりだったが、さすがにお盆の週末は先客・後客がいて、狭い湯船は少し待たねば入れなかった。
 14時くらいまでのんびりして麦草峠を越える。白駒池に向かう駐車場は500円有料で満車。今回もまた通り過ぎてしまった。蓼科高原に出て、茅野の藤森照信作品などを見ようかと思ったが、天候を考え、今日は八島湿原巡りをすることにした。これがよかったかどうかはわからないが、結果的に茅野巡りは無しになったのは少し残念。ま、建物はなくならないから、また来ることにしよう。
 車山高原まで上がったらビーナスラインは濃霧。霧ヶ峰は視界10m。そろそろと車を走らせ、何とか八島湿原へ。娘は中2から高3までの5年間、毎年7月下旬に車山高原に学習合宿にやってきたというのに勉強ばかりでついぞニッコウキスゲマツムシソウも見ていないという。それではあまりに可哀想とまずは八島湿原にやってきたが、季節はもう夏も終わり秋の気配。しかも途中から雨も降りだし、数少ない高原植物とプレートを見ながら湿原を歩いて廻る。それでも時々風が吹き渡り湿原が向こう岸まで一望できると気持ちのいい景色が広がる。それなりに喜んでくれてよかった。
 ペンションはいつもの「青空の扉」。若いオーナー夫婦がこれまた気持ちいい。5年間、近くのホテルで合宿している娘の話をしてきたので、「初めて会ったような気がしない」と喜んでくださった。よかったね。これでようやく義理が返せた気分。娘も定番の大根カツを始めとする料理を喜んだ。
 「車山高原のリフトに乗りたい」と言っていたが、翌朝も霧に包まれるあいにくの天気。車山肩の駐車場に車を止めて、吹き渡る風を感じながら高原植物を見て歩く。気持ちいい。八島湿原よりもこちらの方がマツムシソウやワレモコウはきれいに咲いていた。
 8月15日に諏訪湖の花火大会があるということは、出かける数日前に気が付いた。ペンションでどんな様子か聞くと、大渋滞なので近寄らない方がいいという見解。それでも行きたいと言うと、ならば小中学校のグラウンドを開放した無料駐車場があるから、そこに駐めて1kmほど歩くことを勧められる。10時には着いた方がよいというので9時半に行くと、もう満車。3ヶ所廻って、最後にヨットハーバーの有料駐車場を勧められる。3000円。それでも有料観覧席を思えばいいかと駐車場に入れる。10時到着。
 地図で見るとヨットハーバーは花火打上げ場所のすぐ近くだと思っていたが、中心地まで意外に遠い。途中の芝生公園では既に多くのレジャーシートが拡げられ、タープが張られている。わが家も狭い空間を探して場所取り。ここで決めたと、シートを敷いて、水を入れたペットボトルや携帯イスで押さえておく。
 片倉館まで歩こうかとトボトボと歩く。暑い。湖岸沿いの公園は有料観覧区域だが、13時の開放までは歩行可能。ちなみにロープで囲まれた入口付近には、有料観覧区域開放を待つ長蛇の列ができている。時間が来たら一斉に場所取りに走るのだろうか。有料でも大変だ。
 妻が片倉館に着く前にダウン。「温泉になど入りたくない」と言うので、またトボトボと同じ道を戻る。諏訪湖遊覧船「おやこはくちょう丸」が停泊し、次の出港は12時20分とアナウンスしている。お腹も空いた。露店でお好み焼きと焼きそばを買って、遊覧船に乗り込む。足を伸ばして船外の景色と風と観光案内を楽しむ。遊覧時間30分で大人800円。意外に楽しく癒された。
 芝生公園まで戻って一休み。小1時間も休憩していると次第につまらなくなる。娘が片倉館に行くというので一緒にもう一度向かう。着くと14時20分。「本日15時閉館」と言われ、急いで入館券を購入し、お風呂に入る。
 片倉館は昭和3年に建設された温泉施設で、製糸業で財を成した片倉財閥の2代目社長、片倉兼太郎が建設。欧州旅行時に感銘を受けて同様の文化福祉施設をと考え建設したもので、4m×7.5mの千人風呂が有名。思ったよりは小さいが、浴槽床に敷かれた玉砂利が足裏を刺激して気持ちがいい。ギリシャ風の彫刻飾りやステンドグラスも興味深い。
 「閉館時間です」と急きたてられ、汗でぐっしょり濡れたTシャツをエイヤとかぶる。気持ち悪いが仕方ない。携帯電話には「暑い!」とREIからのメール。15時以降は歩行者天国となった道路を娘と二人で帰る。着いた頃には汗びっしょりになっていた。
 花火大会が始まる前にもう1度車まで行って、トイレに寄って準備万端。女性陣もトイレに行っている間に、周りは見物客で溢れ出し、日も落ちてみるみる暗くなり、無事帰ってこれるか不安になる。妻が戻ってきたのは、花火も1クール終わった19時20分過ぎ。
 花火は確かにすごい。約4万発。打上げ数では日本最大だそうだ。色とりどりのスターマインがこれでもかとばかりに間断なく打ち上げられる。ひとしきり終わるたびに観客から拍手が起こる。子供連れも多い。しかし20時頃には眠り始める。
 最後は水上大スターマイン。湖面に半円形で大きく弧を描く。そして大規模なナイヤガラ。19時から始まって2時間。ほとんど休みなしに上がり、飽きさせない規模・内容はやはり一見の価値がある。
 終わって余韻に浸りつつ、駐車場へ。トイレに寄って21時30分くらいには車に着くが、前の車が全く動かない。予想はしていたが大渋滞。ようやく動き出したのは22時30分過ぎ。駐車場を23時前に出る。諏訪IC方面は込んでいると踏んで岡谷IC方面に向かうが、湖岸道路に出る辺りで全く動かなくなってしまった。急遽、諏訪IC方面に向きを変えてしばらく走ると、右辰野の案内が。これはいいと伊北ICをめざすことにする。峠を越えるまでは順調。これは楽々0時前に高速に乗れると思ったのもつかの間。今度は峠を越えた辺りからジリジリとした渋滞に陥ってしまう。
 伊那谷を南北に走る国道153号と交差する交差点の信号が、国道優先で県道側が短く、なかなか車が捌けないことが原因。結局、イライラしたまま時間が過ぎて、伊北ICに着いたのは0時15分。わずか15分の差で1000円を逃した。それでも走ってみれば深夜半額で1850円。まあ850円くらいならしょうがないか。
 深夜にしては交通量が多い中央道を、ヒヤヒヤしながら夜中の2時過ぎにようやくわが家に到着。現代建築、温泉、高原、そして諏訪湖の花火大会と、今年も満腹に満喫した夏の旅行だった。あの涼しさが懐かしい。