とんま天狗は雲の上

サッカー観戦と読書記録と日々感じたこと等を綴っています。

処方箋薬局という商売

 先週、いつもの鍼灸院へ行った。原発事故のこと。花粉症のこと。選挙のこと。いつもながら話はあっちこっち飛んで花が咲く。こちらはただじっとして先生の話を聞いている。そんな中で面白い話があった。
 先生は薬科大を出て、30歳位まで、大きな私立病院の薬局で働いていた。その後、鍼灸治療に目覚め、色々な先生に付いて勉強し、30代後半で独立した。年は私と同じ50代。あのまま薬局に勤めていたら・・・という話。
 もう20代の頃には、現在のように処方箋薬局が独立するという方向が出ていた。当然、病院の薬局に勤める人たちも、ある程度の年齢の人は独立の準備をしていた。その後、先生は鍼灸院開設の道を歩むのだが、当時の同僚の多くは処方箋薬局を開業しているそうだ。
 処方箋薬局は薬局の都合で独立できるものではない。病院の医師の独立開業に合わせて、先生から声が掛かり開業するのだそうだ。薬局の経営がうまくいくのもいかないのも医師が開業した診療所次第。患者の評判がよく診療所が繁盛すれば、薬局も繁盛する。診療所の経営が上手くなければ、薬局も左前。
 最悪なのは、診療所の医師が突然亡くなってしまったケース。こうなると診療所のつかない処方箋薬局が経営できるわけもなく閉店。借金を抱えて転職するか、薬剤師の資格を生かしてドラッグストアに勤務したりしていると言う。
 いずれにせよ、処方箋薬局の経営は診療所次第。患者に別の薬を勧めることもできず、せいぜいサプリメントを店頭に並べる程度。それでも営業センスのある経営者は、大手病院の勤務医とコネクションを持ち、新規開業する診療所の処方箋薬局を狙ったり、大手病院の近くに開業して他の薬局との差別化を図ったりする。
 「結局、薬剤師と言っても経営者なんだよな。しかも経営の善し悪しは診療所の状態で左右される全くの水物。」と鍼灸院の先生はつぶやく。「俺はそんな生活はイヤだから、治療家として独立した。流行るも流行らないも俺の力量次第だからな。」
 2006年から薬学科が6年制になった。来年には6年制の卒業生が生まれる。だが、薬剤師になってもその後の生活はとても6年制にふさわしいように思えない。娘の仲のよかった友人が高倍率を突破して公立大の薬学科に進学した。彼は製薬会社をめざしていたようだ。私の友人にも東大を出て、大手製薬会社に勤務するものがいる。しかしその他の卒業生は・・・。いや、どこの学科を出ても同じことか。建築学科を出てうまく設計事務所を開設しても、必要になるのはしょせん経営能力だからな。
「高校生諸君! それでもあなたは6年制の薬学部の入りたいですか?」