とんま天狗は雲の上

サッカー観戦と読書記録と日々感じたこと等を綴っています。

輝く人生

 職場のOBである。数ヶ月前、OB会の際にいただいた。昭和2年生まれ、84歳。現役のパイロットである。自らの半生を綴り、自己出版し、日本自分史大賞・奨励賞を受賞した。(実際は聞き書きである。そういう仕組みがあるのだ。)
 昭和58年に退職しているから、私とは4年しかかぶっていない。全く別の所属にいたから噂程度にしか知らなかった。「飛行機に乗っている先輩がいる」と。
 38歳で初めて飛行機に乗せてもらい、45歳で操縦士の資格を取得している。かなり齢を取ってからのチャレンジである。それも高所恐怖症なのに。そして今も年一度の航空身体検査適合証明を受け、現役で活躍している。赤十字飛行隊に参加し、ボランティア活動も精力的にこなす。
 これを読むと、80歳はまだまだ若いと思う。退職してから本当の人生が始まる。自分は大丈夫か。退職後、どうやって生きていくのか。父を思い出す。父も退職後、写真に熱中し、いまだにカメラ片手に日本全国、いや世界各国を飛び回っている。ギャラリーまで開設した。自分はどうやって生きていくのか。
 飛行機にたどりつくまでの回想も興味深い。戦争の真っ只中で成長してきた。中川区から鶴舞まで乳母車に乗せて通院した母の話。「葬式を出せるだけでも贅沢だ」と言われた父の死去。白川公園に作られた駐留軍家族宿舎“アメリカ村”の建設に携わったこと。伊勢湾台風。そして仕事に追われる中、背を押されるように飛行機にのめり込んでいく。多くの人の支えや後押し、そして気の置けない仲間。
 まさに「輝く人生」。飛行機の中から見る雲のような輝き。
 いろいろな先輩がいる。誰が一番幸せかなんてわからない。自分しか生きられない人生を生きていくしかない。それが「輝いている」と感じられればなんと幸せだろうか。いい本を読ませてもらった。感動をありがとうございます。
「(社)自分史活用推進協議会」
「かすがい市民文化財団」

●飛行機一筋である。・・・フライトを通し、自然の偉大さ、奥深さに何度も遭遇し、その怖さを実感した。自然の懐の中で遊ぶには、その偉大さを頭に入れておくべきである。半生を飛行機と共に生き、世間の諸行無常を自分なりに悟ったつもりである。(P1)
●残念ながら、僕は高い所が怖かったのだ。(P15)
●飛行に不安がある時は飛ばない。空は地上とは異なる世界だ。地上では万全を期して準備し、不安材料は皆無の状態にしてから空へ上がる。それが、パイロットとしての当然の責任だ。その責任を守り続けている事がパイロットとしてのプライドでもある。(P134)