とんま天狗は雲の上

サッカー観戦と読書記録と日々感じたこと等を綴っています。

‐高校生からの‐マクロ・ミクロ経済学入門 2

 初めて菅原晃氏のブログ「高校生からのマクロ・ミクロ経済学入門 政治経済 現代社会」を知ったのは、藻谷浩介氏が侮辱的コメントを書き込んで名誉棄損で敗訴した事件から。もちろん藻谷氏のコメントはひどいものだが、同時にブログ記事の冷静な内容に興味を惹かれた。
 その後、このブログを定期購読しているが、けっして読みやすいとは言えない独特の内容で追いかけていくのはなかなか大変だ。ただ、常に繰り返されるのはISバランス式やGDP三面等価などの専門的かつ基本的な知識。どうやらこれは高校生でもわかる程度の経済学の基礎知識らしい。
 そこでブログ主のブログタイトルとほぼ同じタイトルの著作「‐高校生からの‐マクロ・ミクロ経済学入門?」を読んでみることにした。ちなみにこの本もブログ同様、かなり特殊な編集になっている。目次やタイトルが本文と同じフォントとサイズで書かれ、重要事項のフォントがゴチックでバカでかい。重要数式や図表が何度も繰り返し掲載されるなど、どうやって読んだらいいのかと最初はびっくりした。
 だが読み始めると、内容は意外なほどわかりやすい。繰り返し掲載されている理由もわかる。ようするに高校生向け参考書の体裁なのだ。1〜3章はGDP三面等価やISバランスなどのマクロ経済に関すること。4章で国債財政破綻論について説明し、5章以降ではミクロ経済学の基本、リカード比較優位論やIS-LMLM分析、需要・供給曲線を説明する。
 なるほど、貿易黒字とはそういうことだったのか。日本は貿易立国というのは嘘だったのか。自分が経済学について、いかに生半可な知識しか持っていないかということを痛感した。

高校生からのマクロ・ミクロ経済学入門II

高校生からのマクロ・ミクロ経済学入門II

●ISバランス式 (S-I)=(G-T)+(EX-IM) (P24)
●「貿易黒字はどこへいったのか」の答えは、「海外の資産になった」です。このことは、「日本人の生活そのものが豊かになることを、必ずしも意味しない」のです。貿易黒字額=資本収支赤字額なので、必ず、海外に投資された額(外貨準備額含む)に等しくなります。日本国内には流通しないのです。「貿易黒字は、海外への資本の貸し出し=外国資産の積み上げ」なのです。(P36)
●貿易黒(赤)字の意味は、お金の貸し借りのことです。経済成長はあくまでも、その国の、「輸出部門ではなく、国内部門生産性によって左右される」のです。(P71)
金本位制下、金の量=発行銀行券の量であったものが、現在の管理通貨制度のもと、国債の量=発行銀行券の量になっていることがわかります。昔の1ドル札や、1ポンド札が「金」に支えられて信用されていたのと同じく、今の1万円札が信用されているのは、「国債」がその「金」の役割を果たしているからです。(P115)
●経済学は、科学なので、「相関関係・因果関係」「メカニズム」を説明します。良いとか、悪いとかの「価値判断」は入りません。ですから、「貿易赤字は悪いこと、貿易黒字はもうけだ」など「良い・悪い」という表現が出てきたら、「おかしいな」と考えてみてください。・・・少なからぬ経済学者・経済評論家が「世の中はこうあるべきだ」という主張をしますが、こういう価値論の部分は、経済学の専門的な論理から出てくることはほとんどありません。(P219)