とんま天狗は雲の上

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「マンション」とは何か

 福島県二本松市新築マンションの基礎コンクリートに、福島県浪江町の砂利採取業者が出荷した砂利が使われて、高い放射線量が計測されたことが話題になっている。砂利の流通先や賠償責任問題などさまざまに議論が沸騰しているのは周知のとおりである。
 東電や政府の杜撰さに怒るばかりだが、私が問題としたいのは、「マンション」という言葉の使い方についてである。
 その後の関連記事を読んでいると、少なからずこのマンションが「分譲マンション」だったと思い込んだ記述が散見される。しかし、被災者が居住していたこと、県がさっそく代わりの転居先を探したいと発表していることなどを勘案すると、いわゆる「賃貸マンション」だったのではないかと思う。「分譲マンション」であったとすれば、購入者の損害賠償問題に発展すると思うが、そのことはあまり問題になっていないこともそう類推する根拠であるが、実際のところはどうなのか。
 そもそも英語のmansionは「大邸宅」を表す言葉で、区分所有方式の共同住宅の販売に当たり、当時先行的に分譲されていた住宅公団の分譲住宅との差別化を図り、高級感を出すために、民間ディベロッパーが「マンション」という言葉を使ったのが始まりと言われている。
 数年前までは、分譲住宅はマンション、賃貸住宅はアパートというのが一般的な言葉の使われ方ではなかったかと思うのだが、いつしか賃貸共同住宅も「マンション」と呼ばれることが増えてきた。
 住宅着工統計では、施主(事業者)と居住者の関係に注目して、居住者が自ら建築する「持家」、事業者が販売目的で建築する「分譲住宅」、事業者が賃貸目的で建築する「貸家」、事業者が社員等の福利目的で建築する「給与住宅」に区分している。一方、住宅・土地統計調査では、人の居住する住宅を、「持家」、「借家」(さらに公営、UR・公社、民営に分ける)、「給与住宅」に区分する。また、建築基準法では、建て方に着目して、「戸建て」、「長屋建て」、「共同建て」に区分する。ちなみに「集合住宅」という言葉は、戸建てに対比して、長屋建てと共同建てを合わせて指す言葉である。
 これらに「マンション」という言葉は出てこないが、2001年に施行された「マンション管理適正化法」で始めて「マンション」という言葉が法律用語として採用された。この場合のマンションとは、区分所有方式の共同住宅を指している。
 もっとも分譲マンションも、当初は所有者が居住しているが、次第に年月が経つにつれて、区分所有者が各住戸を他者に賃貸するケースが増えてきて、所有者と居住者が異なる賃貸住宅と同一の持家が混在してくる。こうなると、これはいったい分譲マンションなのか賃貸マンションなのかわからなくなる。
 戸建て住宅でも、持家もあれば借家もある。もちろん長屋建てや共同建てでも同様だ。分譲住宅でも、戸建てもあれば共同建てもある。逆に言えば、共同住宅でも、持家もあれば借家もある。結局、何に注目して住宅の形態・形式を表現するかということに尽きる。
 今回のニュースの場合は、新築された共同建ての賃貸住宅で、被災者も入居していたということにニュースバリューがあったと思われる。とすれば、被災者も入居する新築の「賃貸マンション」と表現すべきだったのではないか。放送用語としての「マンション」は一体何を指すのか、一度きちんと説明をしてほしいものである。