とんま天狗は雲の上

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日本破綻を防ぐ 2つのプラン

 野放図に拡大する公債残高、恒常化する財政赤字、膨張する社会保障費予算。こうした日本の財政状況の危機的状況に、東日本大震災が発生した。このままでは日本の財政破綻が避けられない状況の前に、二つの再生プランを提示する。一つは根本的な財政構造の変革を提案するプランA。そしてもう一つがそれが実行できるまでの間、講ずべき当面の政策、プランBだ。
 プランAでは、社会保障制度における事前積立方式の導入、政府から独立した「世代間公平委員会」の設置、社会保障予算とその他の予算を分け、財源の明確化を図る社会保障予算のハード化、消費税の20%増税社会保障制度への管理競争の導入、世代会計の導入、そして超党派での議論の7つを政策を提案する。
 しかしこれらが実現するのを待つには長い時間がかかる。そこで当面の財政破綻回避策として提案するのがプランBだ。プランBは、一言でいえば、対外資産(外貨建て資産)の保有促進である。このため政府が自ら買い入れるだけでなく、民間セクターの保有を促すため、公的ファンドを設立し、リスクヘッジをすることを提案する。これにより、急激な円安を緩和するとともに、海外投資によりリスクの分散を図ることができるというものである。これが正しいとすれば、公的支援を待たずとも民間セクターから率先して対外資産保有を進めてもいいものだが、なぜそういう動きが起きないのか、私には理解できない。また、円高への日銀介入が既に対外資産保有促進施策になっているという記述もあり、ではどれだけ保有すれば足りるのか、どれだけ以上ないといけないのかは明らかでない。
 4章でこのプランBを概略説明して、その後はこれを世界経済との比較、日本の成長戦略、震災後の財政運営のあり方、TPP参加問題等について考察する。
 政府提案を政治が決断できないのが日本の最大の問題だ、というのが筆者たちの思いであり主張だと思われるが、筆者の二人は、財務省経産省を経由して現在、一橋大学で教べんをとる経済学者であり、経済学者にありがちな経済至上主義やTPPへの肯定的評価などもあることから、どこまで信じていいのかなと思うところもある。しかし日本財政の破綻が近いという警告は無視していいという状況ではないだろう。
 国の対応・政策ということもあるだろうが、庶民としてどう備えておくか。しょせん心構えしかできないかもしれないが、意見や情報は蓄えておくことも重要な対策の一つだと思う。

日本破綻を防ぐ2つのプラン (日経プレミアシリーズ)

日本破綻を防ぐ2つのプラン (日経プレミアシリーズ)

●公的債務(対GDP)が高い状況にあっても、財政状況を是正するような財政再作画将来必ず行われるだろうという「期待」が高ければこそ、国債のリスクプレミアムは低くなる。・・・現状では日本の将来の財政規律に対する「期待」はまだ維持されている。(P42)
●実質支出の伸びのほとんどが65歳以上人口の伸びで説明できることが分かる。このことは、いまの財政が社会保障予算の膨張で危機に陥っている点を考えれば、そもそも驚くに値しない自然な結果であろう。(P82)
●受益と負担の「時間的ラグ」の大きい「社会保障予算」と、「時間的ラグ」の小さい「それ以外の予算」を「ごちゃ混ぜ」にして「単年度」で管理しようとすると、高齢化の進展で社会保障予算が膨張するから、財政の持続可能性に気を取られ、世代間格差の是正に目を向ける余裕がなくなってしまうのだ。(P129)
●日本の財政の持続可能性をみると、「趨勢的に円高が続く」という認識がどうして共有されるか不可解である。日本財政のバランスシートが膨張を続ければ、かなり厳しい円安が生じる可能性が高い。つまり、「現在=円高」と「将来=円安」に大きなギャップがあり、このギャップをスムーズにつなぐ景気変動の「経路」が想定しにくいのである。・・・懸念されるのは、円高傾向がだらだらと続き、ある日突然、日本財政への信認が失われて、国債暴落と激しいインフレ・円安が発生する、というクラッシュ・シナリオである。(P166)