とんま天狗は雲の上

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「地球温暖化」神話

 東大生産技術研究所渡辺正教授の「地球温暖化」批判本。地球温暖化については私もいくつかの本やブログ記事を読む中で、その欺瞞性について確信を深めているが、本書もこうした思いを最新の知見を加えて後押ししてくれる。
 後半になると、筆者の思いがあふれ出て筆が滑った表現も散見されるが、全体的には非常に分かり易く論理を積み重ねている。中でも1章・2章の「CO2の調書」がいい。1章の「悪い噂」では、温暖化対策推進派が指摘するCO2の害を批判する。日本が90%削減を達成したところで世界的には何の意味もない。
 2章は光合成を研究してきた筆者の専門に関わる部分なので非常に面白い。CO2が増加することで、世界の緑化面積は増加しているという指摘は、初めて聞いた話で興味深い。結局マスコミは常に都合のよい情報のみを選択して流してきたということか。
 3章では「地球」の温暖化を測定することの難しさと欺瞞の指摘。4章「CO2の『温暖化力』」では、まさにタイトルのとおり、温暖化に対するCO2の寄与度は2割程度と喝破する。
 5章「つくられた『地球の異変』」はノーベル賞受賞者であるゴア元副大統領批判。6章「繰り返す気温変動」で気温変動の長期変動を解説し、7章「激震−クライメート事件」、8章「IPCCは解体せよ」では、クライメート事件とその後の最新の状況を解説し、2011年10月にカナダで発行された温暖化批判本を紹介する。IPCCの第4次報告書がいかに不正と欺瞞に満ちたものかを指摘している。
 9章「CO2削減という集団催眠」は京都議定書を始まりとする日本の「エコ」狂騒曲を批判。10章では太陽光発電等の再生可能エネルギーについても、まだ未完成の技術で20〜30年かけてじっくり技術の熟成を待つべきと持論を述べる。そして終章「狼少年」では、酸性雨ダイオキシン環境ホルモン騒動を振り返り、環境教育の功罪と拙速な環境対策に警鐘を鳴らす。
 妻には「またそんな本を読んで」と言われたが、最新の知見を加えた非常にバランスの取れた本のように思う。ますます地球温暖化政策に対する不信感が増した。

「地球温暖化」神話 終わりの始まり

「地球温暖化」神話 終わりの始まり

●いま日本のCO2排出量は世界の4%未満しかない。CO2に害があろうとなかろうと、そんな国がCO2排出を10%や20%減らしても(じつは減らせていないのだが)、地球への効果がゼロに等しい。/なお最新の統計によると、おもに中国の排出増が効き、2009年から10年にかけて世界のCO2排出量は約19億トン増え、年間の増加量が過去最高を記録した。(P10)
●CO2濃度が150ppmよりも低いと、発芽さえ満足にできない。・・・過去50万年間で4回あった氷河期には、CO2濃度が180ppmだったという。もう少し下がっていたら、植物はおろか動物もことごこく滅び、地球は死の惑星になっていたはず。(P34)
●大気に増えるCO2は、むろん地球の緑化を進めてきた。さまざまな機関が1980年代から衛星観測を行い、いくつもの学術論文になっている。観測結果は例外なく、地球の緑化をまざまざと語る。・・・いま地球全体で緑がじわじわ増えている(P34)