とんま天狗は雲の上

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国が所有することと個人所有とは根本的に違う。

 尖閣諸島石原都知事の都購入宣言から始まって、最終的に国が購入したことが中国の逆鱗に触れ、現在の状況に至っているわけだが、日本人としては、それ以前は国が借地していたものを買い上げただけなのにどうしてそこまで怒るのかとよくわからないでいた。
 もちろん、マスコミ等では、中国の内政問題が原因だとする解説やウラジオストックでの非公式首脳会談直後の購入にメンツをつぶされたとする解説など諸説書かれており、それらについても理解はするのだが、それではこれまで栗原氏が個人所有していたということについては、中国ではどう捉えられていたのだろうかと疑問に思った。
 と言うのも数年前に中国のテレビ局から日本の住宅制度について取材があった際に、中国の住宅制度について逆取材したところ、「中国の土地はすべて国が所有しています」と言われ、「なるほど共産主義の国には土地の私有権はないのか」と納得した経験がある。
 もっとも中国でも民間の賃貸マンションはバンバン建っている。これは土地の所有権は国家が留保しつつ、期限付きの使用権が売買されているためで、国家から使用権を取得したディベロッパーが建設しては分譲したり、賃貸住宅経営を行っているようだ。
 つまり、中国の立場に立てば、尖閣諸島も栗原氏が所有している限りは、中国の国有地において一個人が使用権を持っていると解することができる。だから個人が所有している限りはこれまでの周恩来以来の合意が支障なく成り立っていた。しかし、国が取得したとなればこの解釈は成り立たない。よってここまで大きな問題に発展したのではないか。
 考えてみれば、日本の国土だって外国人が所有することは何ら妨げていない。だからこそ、中国では日本の不動産投資ブームが起きたりしている(今はどうなんだろう?)。
 尖閣諸島の問題にはこうした土地所有に関する制度の違いが両者の理解を隔てている可能性もあるのではないか。もちろん、外務省がそんなことに気付かないわけはないのだが、野田首相という一政治家の行動として考えれば、陥りがちな無理解という気もする。あながちそんなところからこの問題が始まったという可能性もあるのではないか。
●参考
「中国不動産売買よくある質問」