とんま天狗は雲の上

サッカー観戦と読書記録と日々感じたこと等を綴っています。

2012年、私の読んだ本ベスト10

 年末にこれまでは個人的な今年の10大ニュースを書いたりしていた(ような気がしたが、昨年の31日は普通にサッカー観戦記だ)が、今年は12月に予期せぬ選挙があり、予期せぬ結果となり、それ以前のことなどあまり思い返したくもない。他のブログを見ていたら、「マイ・ベスト・ブックス」とか「BOOK OF THE YEAR」とかやっていて、私も自分の読んだ本ベスト10を書き出しておくと、後々便利かもと思い、真似をしてみることにした。
 ちなみに、2012年にこのブログで読書感想を書いたのが72冊。この中には前年までに読んで、投稿が年を越したものもあるが、今年も同じことになる本があるのでブログ投稿の日付で区切ることにした。また、都市・建築関係の本については別のブログで紹介しているが、こちらは総勢20冊。こちらからは5冊を選んでみた。
 以下、2012年、私が読んだ本ベスト10です。ご笑覧ください。

●一般書籍・雑誌の部
【第1位】中国化する日本 (與那覇潤 文芸春秋
 今年の大河ドラマは「平清盛」。神戸市長の批判もあり、視聴率は歴代最低と低迷したようだが、わが家では最後まで面白く見終わった。もっともかなり作り込んだ勝手な解釈や演出もあって、後半は半分辟易とした感もあったが、宋貿易を中心に時代が変わっていく様は見ていて面白かった。
 そしてこれと軌を一にするように出版されたのが本書。日本の歴史を「中国化」と「江戸時代化」の二つの極で大胆に説明していく切れ味は本当に面白い。もっとも切れ味良すぎて、またあの池田信夫が絶賛していることもあって、しばらく経って思い返すと眉唾な気もしないではないが、とにかく面白かったという点では断然第1位でした。

【第2位】二つの「競争」 (井上義朗 講談社新書)
 経済学において「競争」と訳される言葉に「エミュレーション」と「コンペティション」がある。我々は「エミュレーション」こそ「競争」と思い込んでいるし、新自由主義者もそういう使い方をしているが、経済学の祖アダム・スミスはエミュレーションを警戒し、コンペティションこそ正義と考えてきた。人口減少社会を迎え、縮小を前提とした競争社会を作るにあたり、「自分のことだけをする」「他人から奪わない」コンペティションの思想こそなじむと思う。

【第3位】遺体 (石井光太 新潮社)
 東日本大震災の大津波により2万人もの人が命を落とし、行方不明となった。大量のがれきに埋もれて次から次へと遺体が発見されていく。最前線で捜索をした消防団員や自衛隊員、消防署員、海上保安部職員、遺体を安置所まで運んだ市役所職員、検案・検歯を行った医師と看護師、棺を用意した葬儀社社員、土葬の決断をした市長、青森県の火葬場まで遺体を搬送した消防団員、安置所等で読経する僧侶、そして遺体を慰めるボランティアなど。
 震災直後からの彼らの壮絶な活動を逐一取材し克明に綴っている。近年にない壮絶な震災ノンフィクションだ。

【第4位】猫を抱いて象と泳ぐ (小川洋子 文春文庫)
 久しぶりに読んだ小川洋子は面白かった。「博士の愛した数式」以来の傑作。安心して読める小川洋子の世界。

【第5位】キリスト教の真実 (竹下節子 ちくま新書)
 我々はキリスト教の新興勢力であるプロテスタントカトリックを不当に貶めた結果の西洋史観を学んできたと指摘し、蒙昧な中世とカトリック世界という誤解を正し、何故今なおカトリックが世界で隆盛なのかという世界の常識を解き明かす。カトリックこそ政教分離を訴え、信教の自由を支持し、普遍主義を基本としているという事実は私にとって驚きであった。

【第6位】政府は必ず嘘をつく (堤未果 角川SSC新書
 経済界と政府が癒着した「コーポラティズム」の実態を暴き警告する。アメリカの民主党と共和党の対立が作られた虚像であり、OWSやアラブの春さえも裏でコーポラティズムに操られていると言う。しかしつい先日の野田首相の解散から選挙、そして自民党政権への移行を見ると、まさに本書の指摘こそが真実という気がしてくる。まさに衝撃の事実だ。

【第7位】雪の練習生 (多和田葉子 新潮社)
 今年はこの作家と巡り合えたことが最大の収穫。少しのんきで、情感豊かで、ちょっぴりしんみりして、ハラハラ、ワクワク。不思議で楽しい多和田ワールドの虜になりそう。と書きつつ、その後、これを書くまで彼女の名前を忘れていた。いや、のんびり楽しみたい世界です。

【第8位】欧州サッカー批評06 (双葉社スーパームック)
 サッカー批評は昨年後半から隔月刊になり、さらに夏と冬に欧州サッカー批評が発行される。発行回数が増えて内容が心配されたが、あに図らんや、今年はサッカー批評も欧州サッカー批評も充実して楽しかった。中でも、香川のマンU移籍に合わせるかのようにプレミアリーグ特集。面白かったです。

【第9位】家族の衰退が招く未来 (山田昌弘・塚崎公義 東洋経済新報社
 家庭社会学者の山田昌弘氏と経済学者の塚崎公義氏が共著で書いたこれまで、そしてこれからの社会と経済。何と二人は中学・高校の同級生で、同窓会で偶然再会して本書が実現したと言う。塚崎氏の無用に脅かさない現実的な経済論が明るい気持ちにさせてくれた。

【第10位】夢よりも深い覚醒へ (大澤真幸 岩波新書) 
 かなり難しくどこまで理解できたか怪しいので、ベスト10に挙げようかどうしようか迷ったが、今年刊行された本として記録に残したいので第10位にランクインさせた。内容は当時書いた読書感想を読んでください。

●都市・建築関係書の部
 こちらは解説をしませんし、順位付けもしません。リストアップするので、興味のある方はリンク先をたどってください。でも、どれも興味深く、かつ今後も参照することが多いと思われる好著ばかりです。
限界集落の真実 (山下祐介 ちくま新書)
商店街はなぜ滅びるのか (新雅史 光文社新書
焦土からの再生 (井上亮 新潮社)
都市の条件 (平山洋介 NTT出版
コミュニティデザインの時代 (山崎亮 中公新書