とんま天狗は雲の上

サッカー観戦と読書記録と日々感じたこと等を綴っています。

サッカー批評(60)

 一時、代表特集ばかりでマンネリ傾向にあったサッカー批評誌だが、最近また面白い企画が帰ってきた。今号の特集「Jクラブ社長の教科書」は、昨シーズンJ2降格の憂き目にあったガンバ大阪ヴィッセル神戸を取り上げ、フロントの功罪を検証する。横浜Fマリノスの嘉悦朗社長、ジェフ千葉の島田亮社長、またセレッソ大阪日本ハムファイターズの社長を務めた藤井純一氏など、それぞれ一家言ある経営者たちへのインタビューはどれも新鮮で興味深い。
 ベルマーレの真壁潔社長、フロンターレの武田信平社長には「Jクラブ社長の本棚」と題して、座右の書3冊ずつを挙げてもらい、理由を聞く。選定された本がそれぞれ特徴的で面白い。中でも武田信平社長は真面目で堅いセレクション。その社長の下でフロンターレのひょうきんなアイデア・プロモーションが実践されているということを、だからこそ組織として成り立っていると解説する辺りは妙に納得してしまう。
 またいつもながら、現京都サンガGM祖母井秀隆氏の話は説得力がある。クラブは地域で愛され、地域を応援する。それが何より大切と言うGMの言葉、地域戦略はJクラブの本来のあり方を示している。勝利以上に負けても愛され続けるクラブ作り。同様のことを他の経営者たちも異口同音に語っている。
 広島市のサッカー専用スタジアム建設に向けた記事やフットサル代表監督ミゲル・ロドリゴに関する記事、赤き血のイレブン・永井良和の特集記事なども興味深い。
 次号は「サポーター論」だそうだ。これもサッカー批評誌らしいテーマで興味深い。いやその前に欧州サッカー批評にも期待しよう。

サッカー批評(60) (双葉社スーパームック)

サッカー批評(60) (双葉社スーパームック)

●日本人は良くも悪くも覚悟を持ってしまう民族だから、被災したときに外国人が驚愕するくらい協力して暴動が起こらない半面、戦争に突入した時代みたいに誰もが覚悟を決めてブレーキを踏む人間が極めて少数派になる。/今のサッカー界の状況に似ていますよ。誰もブレーキを踏まないでしょ。全部うまくいっていると思っている。・・・だいたい4年に1回選挙もなくトップが選ばれている世界だから、組織が硬直化していくのは当たり前なんです。(P059)
●武田社長がきっちり締めているから、現在のフロンターレの姿があるのではないかと。あそこにはアイデアマンの天野春果さんという有名な部長がいて、私もよく存じ上げているのですが、きっと天野尽くしではサッカークラブの体を成さないのです。バランスを取るためにはそれなりの重しが必要。それが組織ってものではないでしょうか。(P063)
●私は今、サッカー界を見渡したときにどういうビジョンで地域に根ざしながら、魅力のあるクラブチーム作りをするのかっていうのが、欠けていると思う。いや、正確には欠けているんじゃなくて、そういうことができないんですよ。結果ばかりが問われている。私のクエスチョンとしては、どういう風に作っていくんですか、どうやって地域に根ざすんですかっていうのがあります。(P086)