とんま天狗は雲の上

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地方公務員の退職金問題は政府による国民分断作戦か?

 埼玉県を始めいくつかの県で、1月末又は2月末までに退職しなければ退職金が150万円程度減額するということで多くの職員が早期退職を希望し、問題になっている。マスコミは表面の出来事だけを伝え、特に教職員については、卒業式や成績評価などを放棄して退職する教師に対して、生活防衛との板挟みに悩む教師を取り上げつつも「最後まで責任を全うしてほしい」などと答える市民の声を流し、全体としては「こんな公務員ってどうよ?」というイメージ作りをしているように感じる。そして、それをネタに公務員叩きをする。
 少し待ってくれ。叩かれるべき公務員は退職して一般市民になろうとしているのであり、現に叩かれている公務員は早期退職できずに退職金減額を受け入れた者ではないのか。どうしてそれで公務員叩きができる? それとも退職しなかった公務員を褒めたたえるための「踏絵」なのか? くだらない国民分断策としか思えない。
 退職金条例については各県で昨年の12月に議会に上程され可決されたと聞いている。この種の条例は年度初めから適用することが通例なので、年末になって突然この話を聞いた退職予定職員はかなり動揺したのではないかと思われる。そして、定年間近の職員の多くは通常、校長、署長、課長などの役職についており、これらの職員の多くはさすがに早期退職はしないのではないか。
 そう考えると、まるで3月末で60歳になる職員が全員退職するかのような報道だが、実際のところ何割程度なのか、退職職員数だけでなく、母数となる職員数もしっかりと報道してほしい。また、逆にこれを機に退職する職員の多くはいわゆる閑職にいて、辞めてもらってもかまわない職員である可能性が高い。
 それにしても、この問題を退職予定者さらには地方公務員個人の問題に帰そうとするかのような報道の方が気になる。そもそも個人に「職務への責任感か、カネか?」を選択させるような仕組みにしたことが間違っている。こうした仕組みにすれば、早期退職する職員が一定程度は現れることは当然想像できたはずで、その場合にどういう対応をするのかも当然検討しておかなければならない。
 少し考えればわかるとおり、全国の県で一斉に同様の事態が起きているということは、当然、背後には政府や総務省の指導がある。地方交付税を逆手にとって、地方公務員の給与削減を迫るのは国の常套手段だ。だが、都府県によって対応に差があることも今回明らかになったわけで、マスコミには全国の自治体ごとの対応の違いと地方交付税等との関係なども調べてほしいものだ。
 しかし、急な総務省からの指導で、十分な検討もできないまま、条例制定に踏み切った県も多かったのではないか。そして指導したはずの国は、「地方の責任でしょ」と知らんぷり。それだけでなく、早期退職者数を調査・報告させて傷口に塩を塗る始末。ああ、やだやだ。
 ひょっとしたら今後、総務省も「早期退職者を1〜2ヶ月間臨時職員として雇用することも考えられる」なんて助言を出すのかもしれない。そうすれば例え全ての職員が早期退職したとしても、3月分の給与が正規職員と臨時職員の差額分だけ減額できることになる。しかしわずかそれだけのことで、こんな条例を制定するなんてバカらしいにもほどがある。いかに政府が劣化しているかと示す象徴的な出来事だ。