とんま天狗は雲の上

サッカー観戦と読書記録と日々感じたこと等を綴っています。

フットボールサミット 第7回 サッカーと帰化とアイデンティティ

 隔月刊で発行されている雑誌「フットボールサミット」は毎回特徴的なテーマを巡って多くの論客が批評を寄せる形式で既に第10回まで発行されている。これまでのテーマは、第2回中田英寿、第4回三浦和良、第6回遠藤保仁、第8回本田圭祐、第10回内田篤人など特定の選手を取り上げたものや、第5回の浦和レッズ特集、第9回海外組などがある。興味はあるが、特定のテーマだけで1300円は少し高いので、これまで手が伸びなかった。
 それが先日、サッカー批評のプレゼント応募に当たり、フットボールサミット第7回が送られてきた。テーマは「サッカーと帰化アイデンティティ」。いつの号だったか、確かに応募した記憶がある。そしてこれまでの中では特に興味のあるテーマでもあった。
 掲載されている論考は全部で14編。それに木村元彦西部謙司松本育夫らの連載が掲載されている。各論考はさすがにサミットと言うに足る多方面からの考察が繰り広げられている。オランダからの帰化家族「ハーフナー家の絆」、「李忠成が選んだ道」、「呂比須が見た夢」などの個人事情を取り上げたもの。「在日と帰化」、ブラジルから帰化した選手たちを取り上げた「王国からの伝道師」など世界のサッカー選手帰化事情についても、フランスとアフリカ、イタリア、ユーゴスラビア、スペイン、イギリス、中東、北欧、南米と世界各地の状況を紹介している。
 これらを読むと、そもそも国籍条項も国によって違い、移民政策の状況も違うことから、帰化と一言で行っても。国や地域によってかなりの違いがあることが分かる。意外や日本も世界で有数の帰化選手受け入れ国なのだと言う。そして各国でグローバリズムナショナリズムとの相克が起きている。個人的にはW杯がなくなってもサッカーのゲームとしての面白さには何ら影響がないと思っているが、やはりそうはいかないらしい。
 それにしても、各論考はそれぞれ興味深いが、同時に物足りなさも感じる。もっと深く掘り下げられたものを読みたいのだ。そういう意味では「サッカー批評」誌ほど幅広くなく、しかしまだ物足りない。中途半端な内容に終わっている。うーん、申し訳ないけどこの内容なら毎回購読する気にはちょっとならないな。

フットボールサミット第7回 サッカーと帰化とアイデンティティ 「国」を選んだフットボーラ―

フットボールサミット第7回 サッカーと帰化とアイデンティティ 「国」を選んだフットボーラ―

●もしも本当に彼らの思惑通り実質的に国家間の壁が取り払われてしまえば、それはもうサッカーを愛する者にとっての最大の悲劇を生む結果になることは明白である。だからこそ、その思想の過ちに気付くことでイタリアにも芽生えつつある新しい流れ、徐々にではあるが広がりを見せるローカリズムへの回帰に期待したい(P115)
●よく中東同士は試合を操作するって言われていますよね。ただロンドン五輪の予選も日本とシリアが競っていても、バーレーンはシリアとの試合に勝ったじゃないですか。彼らは勝ちを献上するほど優しい人達じゃないですからね。同じアラブ人だから絶対勝たなくちゃいけないんです。韓国と北朝鮮イングランドスコットランドとか以上にもっと国民感情がありますから、絶対に手を抜かないですよ。(P137)
●アジアでこれまで最も多くの外国人を帰化させているのは実は日本だ。・・・現在までにブラジル生まれの10人、韓国籍の3人、アルゼンチン生まれの2人など計21人の帰化選手がいる。これはイタリア、ボリビア、メキシコに次ぐ数であり、日本は世界でも有数の帰化選手受け入れ国ということになる。(P164)