とんま天狗は雲の上

サッカー観戦と読書記録と日々感じたこと等を綴っています。

不合理だからすべてがうまくいく

 「予想どおりに不合理」を読み終えた直後に、次作「不合理だからすべてがうまくいく」も発行されていると聞き、さっそく図書館で予約した。結論から言えば、前作ほどの驚きはなく、また切れ味も鋭くない。
 前作は行動経済学を知らしめようと、特に注目度が高いテーマを多く取り上げていたのだろう。本書でももちろん意外に思う人間の不合理な行動が載せられているが、不合理であることが常識として共有されている行動を実験で再確認するというものも多数取り上げられている。
 例えば、やりがいが仕事の効率を左右することや、自作を高く評価しがちなこと、また時に報酬を捨てても報復を優先してしまうことなど。これらは人事やマーケティングの分野では一般的に採用されているが、経済学では合理的な行動が優先的に採用される。本書は一般読者というより伝統的経済学に対して異議を申し立てているのかもしれない。
 後半は「家庭での不合理な行動」として、順応や共感、感情的な行動の影響などが取り上げられている。どれもある意味、常識的。逆に本書がアメリカでヒットしたということから、アメリカ人と日本人の行動規範の違いを読み取ることができるのかもしれない。
 また後半では特に、火傷を負ってかなり辛い思いをしたという筆者の個人的な経験が前著よりもさらに詳細に感想も交えて描かれている。それも本書の主張にリアリティを与えているが、それはまさに「感情が行動や判断に影響を及ぼす」という第8章のテーマを実践したものと言えるかもしれない。

不合理だからうまくいく

不合理だからうまくいく

●仕事から意味を奪うのは、驚くほど簡単なことなのだ。あなたが管理職で、なんとしても部下のやる気をなくしたいのなら、部下が見ているその目の前で、かれらの労作を粉砕すればいい。もうちょっとさりげなくやるなら、部下を無視したり、がんばっている様子に気づかないふりをするだけでいい。逆に、同僚や部下のやる気を高めたいなら、かれらに気を配り、がんばりや骨折りの成果に関心を払うことだ。(P105)
●とくに企業方針や公共政策の重要な決定に関わる問題で、実験の重要性があまり広く認識されていないことに、わたしはいつも驚かさせる。正直言って、ビジネスマンや政治家がたてる憶測があまりに大胆なことに、唖然とすることが多い。しかもかれらは、自分たちの直感こそが正しいという、絶対的な信念をもっているようなのだ。(P383)