とんま天狗は雲の上

サッカー観戦と読書記録と日々感じたこと等を綴っています。

ラ・ロハ スペイン代表の秘密

 「ラ・ロハ」とはスペイン代表の愛称である。EURO2008予選から2010W杯優勝まで(さらにEURO2012予選も)。代表チームに密着して取材してきたジャーナリスト、ミゲル・アンヘル・ディアスが、多くのインタビューや取材の中から拾い上げたスペイン代表チームの内実を披露する。
 キャンプでの生活、監督と選手相互の言動と感情、サポートメンバーの証言、EURO及びW杯優勝に至る各ゲーム後のチームの様子など、まさに代表に密着してこそ得られるあらゆる内容。その対象は選手・監督にとどまらない。医師、理学療法士、ホペイロ、マネージャーなどチームに関わる全ての人たちに及ぶ。かつ、チームの楽しい雰囲気に影響されてか、どの話題も大変楽しくウィットに富んでいる。
 カシージャスとビージャによるプロローグとエピローグに挟まれて、16のSecretoが披露される。あだ名付けでもたらされた団結心。カプデビラの広すぎる部屋はインターネットカフェとしてみんなの交流の場となった。セルヒオ・ラモスはミュージック・テープを作成してみんなに提供し大いに重宝がられた。ブジョルはサッカーくじの胴元だ。賭けトランプ「ポチャ」に興じるカシージャスやビージャ。アラゴネス監督とデ・ボスケ監督の素顔。ラウールが代表に呼ばれなくなった真実などなど。
 そして何よりこの歴史に残るチームの根底にあったのが、チームの団結と友情と信頼だ。常に楽しく、リラックスして全てを遊びに変えてしまうフランクさ。人間らしさが最大の武器だった。
 ラ・ロハは続くEURO2012も優勝してしまった。そしてW杯ブラジル大会でも優勝候補の最右翼であり続けている。彼らの団結、彼らの友情、彼らのプレーはいつまで続くのか。見るものを楽しませ、同時にプレーする選手たちも楽しむ。そして勝ち続ける。こんなサッカーはこれまで見たことがない。いつまでも見続けていたい。サッカー史上、最高のチームと言って過言ではない。

ラ・ロハ スペイン代表の秘密

ラ・ロハ スペイン代表の秘密

●もし、どの試合がスペインの歴史を変えるカギだったかを選手たちに聞けば、圧倒的多数がこのデンマーク戦(2007.10.13EURO予選)だと答えるだろう。・・・「オーフスでの勝利とセルヒオ・ラモスのゴールが、原理原則の表明だった。重要なパーソナリティを披露することができ、良いサッカーをしてカギとなる試合に勝つことができた。どこに行っても、ああいうスタイルでプレーしようと本当に思い始めた」とレイナは付け加える。(P63)
●「引退すれば残るのは友情だけ。カリスマはチームメイトから与えられるもの。グループ内で重要な存在だと感じられるのは、全員から信頼されているし、いい関係を築けているからだ」(P71)
●チーム内の団結こそ”ラ・ロハ”(スペイン代表)の秘密の武器ではないか。ライバルたちにはその武器が見えない。カシージャスの好セーブやイニエスタの鋭いパス、ビージャのスーパーゴールのようには。「個人よりも集団をより評価するチームだ。・・・明らかなリーダーはいない。集団がリーダーなのだ」とオチョトレナは評する。(P82)
●選手たちは快適に過ごし始め、代表招集が楽しみになった。かつては、シーズンの佳境で呼び出されることは不愉快で面倒臭いことだったが、あの人間的なグループの一員になることが特権だと感じられるようになった。アラゴネスは熟練の腕で、最も恐れていた「単調さ」と「退屈さ」に陥らない理想的な雰囲気を作り上げた。彼の周囲で働いたものは彼の人間味を強調する。(P146)
●最後のミーティングでデル・ボスケ愛国心に訴えかけることを止め、またもや感情に呼びかけた。「ここにいられるのは特権だ。心の底で我われはロマンチストであり、この職業が好きだ。我われは命を懸ける兵士ではない。君たちはただのサッカー選手だ」。(P305)