とんま天狗は雲の上

サッカー観戦と読書記録と日々感じたこと等を綴っています。

城北線、20分弱の空中散歩?を楽しむ。

 「旅行」のカテゴリーに入れるのもどうかと思うけど、わずか20分弱、前後の時間を入れても1時間に満たない小さな小さな微旅行を楽しんできた。

 城北線と言っても知らない人が多いだろうが、JR東海道本線枇杷島」駅と中央本線「勝川」駅を結び、名古屋の北西部を環状に運行する、JR子会社・東海交通事業による極小鉄道だ。営業キロ数は11.2km。「枇杷島」駅と「勝川」駅の間にはわずか4駅しかない。全線開通したのは1993年だから、今年でちょうど20年になる。
 たまたま清須市で仕事があり、JR東海道本線で最寄りの枇杷島駅に降り立った時、私の住む春日井市に向けて城北線が出ていることに気がついた。これまで一度の乗ったことがなかったが、帰りに時間が合えば乗ってみようかと心に思った。とは言っても、朝夕の通勤通学時間帯を除いて日中は1時間に1本。半分無理だろうなと思っていたが、帰りに「枇杷島」駅に辿り着いたらちょうど10分後に発車の予定。切符をどこで買っていいかもわからず、思わずTOICAで改札を入ってしまった。
 待つこと5分、折り返しの汽車が到着した。1両だけの小さな車両だが、意外に降車客は多い。20人ほどがワンマンカーの乗務員に乗車賃を払って降りていく。全員降りた後、乗務員に「TOICAで乗ってしまったんですけど」と聞くと、証明書をくれて「JR駅で精算処理をしてください」と言う。手間をかけてすいません。「枇杷島」駅での乗車客は私も含めて3名だった。
 「枇杷島」駅を出てしばらくすると左手にキリンビールの新川工場が見えてきた。ネットで調べると、「キリンビアパーク名古屋」と言うらしい。「尾張星の宮」駅から徒歩5分。工場見学やレストラン、各種イベントで賑わっている。この日も子供連れの家族や団体客が「尾張星の宮」駅からどっと乗ってきて、あっという間に車両内の各ボックスやベンチシートがすべて埋まってしまった。

 しばらく進むと、左手から「名二環自動車道」が近付いてきた。清州JCTは名二環と名古屋高速一宮線・清須線が交差する大きなジャンクションだ。すごいなあと眺めていたら、汽車は「小田井」駅に入っていく。北側、名二環の向こう側に見える大きな施設は「MOZOワンダーシティ」だ。イオンモールにイオンシネマなどの入った大型ショッピングセンター。「小田井」駅から徒歩5分位だけど、さすがに乗降客はそれほど多くない。
 この後、城北線は名二環にぴったり寄り添って走っていく。左側は名二環のコンクリートの柱・桁・遮音壁。アールを取ったなめらかな曲面が面白い。「比良」駅を過ぎると今度は楠JCT。名二環と名古屋高速楠線・小牧線が交差する中を城北線が突っ切っていく。そして「味美」駅。右手を見ると、遠くに名古屋駅周辺の超高層ビルと近くには積水ハウスが分譲した超高層マンション「ザ・シーン城北」(高さ160m)が見える。今気付いたが、同じ「城北」つながりではないか。何の関係もないけれど。
 右側に名古屋の市街地を見ながら汽車は次第に終点の「勝川」駅に近付いていく。名二環の下をくぐり、勝川駅周辺に林立する再開発ビルに向かって「勝川」駅に到着。乗務員に運賃を支払う。430円。約20分弱。少し高いが、名古屋駅で乗り換えることを考えると、時間的にはかならずしも長くない。何より景色が楽しい。夕焼けや日の出を見ながら乗るにも楽しいのではないか。

 などとすっかり旅情に浸っていたが、城北線のびっくりはここで終わらない。なんと、JR中央本線「勝川」駅までが遠い。噂には聞いていたが、こんなにも邪険にされていたとは知らなかった。汽車を降りてホームを先に進む。端に狭い階段。数mも降りるとさらに遮音壁に囲まれた狭い通路を150m余りも進む。そしてさらにほとんど歩道橋のような階段。白いフェンスに囲まれた通路を抜けた先は金網フェンスに突き当たり、幅6mほどの車道の路側帯へ出る。なんと一般道の歩道もない路側帯を、高架下の駐車場を横目で見ながら歩く。そしてようやく勝川駅へ。この間、延べて500m余り。振り返ると鉄道高架と住宅街の先にかすかに城北線に登る階段が見える。何といういじめ、ハラスメント。子会社だからと言って、ここまで邪険にしなくてもいいのでは。思わずそう感じてしまった。
 ま、感傷もそこまで。鉄道高架事業が終わってきれいになった中央本線「勝川」駅でTOICAの精算処理をして定期券で中央本線に乗ってウキウキと自宅へ向かう。わずか20分弱。それでもこんなに書いてしまった。楽しく感慨深い小旅行だった。