とんま天狗は雲の上

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高校生からわかるマクロ・ミクロ経済学

 キャンペーン協賛(笑)「秋の夜長は読書とブログ
 筆者が先に自費出版した「高校生からのマクロ・ミクロ経済学入門2」を読んだことがある。本書の紹介文によれば、これらの本は既に古本としての価格が高騰しているそうだ。そこで河出書房新社から再出版されたのが本書。前書では自費出版ゆえか、図表などがやけに大きく見難かったが、本書ではきれいにデザインされている。内容も章立てが大きく変更され、最新の経済状況を踏まえた記事やコラムもふんだんに盛り込まれ、読みやすい本に仕上がっている。
 第1章が「GDP三面等価」、第2章・第3章で国際収支と貿易黒(赤)字について、第4章が「リカードの『比較優位論』」、第5章・第6章で国際と財政政策・金融政策を説明する。既に前書で一度勉強したはずだが、改めて、「経常収支(貿易収支・所得収支等)は資本収支と裏表で、経済成長とは何の関係もない」とか、「リカードの『比較優位論』は、国内産業の生産性の比較であって、国際比較ではない」と言われると、「ああ、そうだった」と思い出す始末。なかなか経済学の常識が身に付かない。
 安部政権の金融政策と財政政策やハイパーインフレ論等に対しても、付和雷同せず、落ち着いた議論と分析を示してくれる。ただし、アベノミクスについては、複数の理論を同時に遂行しようとするもので、どういう結果が出るかは明示していない。あくまでどんな経済理論を適用しているのかを説明するまでである。
 まずは基礎的な知識を、という人向けの本であり、現在の経済状況に対しては、あわてる必要はないことは理解できるが、その先まではわからない。まずは基礎勉強という人向けの好著である。

高校生からわかるマクロ・ミクロ経済学

高校生からわかるマクロ・ミクロ経済学

●90年代初頭までは、実体経済が犬の頭、資本経済が犬の尻尾でした。しかしいまや、バーナンキFRB議長が「貿易は犬の尻尾」と言うほど資本取引が巨額になったのです。・・・世界の金融資産は、総額200兆ドルを超えます。実体経済の3倍超です。・・・当然ですが、「日本が貿易黒字になる」→・・・「円高になる」→「円高で輸出減になる」・・・などという経済学の古典的解釈は、現代ではまったく成立しません。円高・円安を決定するのは、資本取引(株や国債社債など)であり、実物取引ではないからです。(P50)
●日本が「貿易黒字」を生み出すのは、日本人が、その支出を、所得以下に抑え、余りを海外に投資した結果です。これが、貿易黒字の正体です。「お金を貸す(貿易黒字)と経済成長し、お金を借りる(貿易赤字)と経済衰退する」ということなど、ありえません。「貿易黒字と経済成長は無関係」なのです。日本が経済成長を達成したのは、国内市場の拡大(内需拡大)によるものです。(P76)
発展途上国が、「私たちの国は、先進国に比べて、テレビを作っても、自動車を作っても、生産性が低い。だから我が国の生産性が上がるまで、先進国との貿易(輸入)は制限しよう」という、本当によくありそうな話が、経済学的には誤りだということになります。・・・「自由貿易によって、すべての国が利益を得ることができる」のが、比較優位論なのです。(P127)
アベノミクスは、金融政策と財政政策を組み合わせ、日本の景気回復を図ろうとしています。(P234)