とんま天狗は雲の上

サッカー観戦と読書記録と日々感じたこと等を綴っています。

サッカー批評(65)

 特集は「2ステージ制に未来はあるのか?」。Jリーグの中西大介競技・事業統括本部長へのインタビューに続いて、後藤健生西部謙司宇都宮徹壱今西和男木之本興三、広瀬一郎など名立たる評論家やサッカー関係者が2ステージ批判を繰り広げる。結局、「金のため」以上の理由はなく、そこにはサッカーやサポーターに対するリスペクトが見られない。
 「矛盾を抱えても見切り発車をした背景」「今求められるのは根本的解決のための『痛みを伴う改革』ではないのか?」「先行き不透明な改革への素朴なギモン」「いま問われるJリーグの姿勢」「原因究明ができていない改革は経営ではなくギャンブル」など、サブタイトルを書き出すだけでその厳しさがわかる。
 金勘定に追われる一部の幹部に牛耳られるJリーグに較べ、あえてアマチュアでありつづけるJFL参加チームの方がはるかに健全だ。J3が新設され、JFLから10チームが移行する一方で、JFLにはそれを補って余りある25チームもの入会希望申請があったという。
 もう一つ年末のサッカージャーナリズム界を賑わした話題が、サッカーマガジンの月刊化だ。サッカー誌には、本誌のような批評・分析を主とするものと、サッカーマガジンのように情報提供が主体のものの2種類がある。しかしネットでずっと早くかつ多様な情報が入手できる時代にあって、情報誌から批評誌への移行とそれに伴う月刊化は必然の結果かもしれない。
 問題はどんな執筆陣がどういう批評や分析をしていくのかということ。一方で、本誌は季刊だったものが数年前から各月刊になっており、需要は高いことが分かる。サッカーファンの高齢化が背景にあるのかもしれないが、今後、本誌が得意とする主戦場もさらに厳しい戦いが行なわれるのかもしれない。切磋琢磨してさらに面白くコストパフォーマンスが上がれば、読者としては大いに歓迎するところだ。
 こうした状況を意識してかどうか、次号の特集は「世界蹴球紀行」だそうだ。久し振りの海外サッカー特集。これは期待したい。

サッカー批評(65) (双葉社スーパームック)

サッカー批評(65) (双葉社スーパームック)

●純粋に競技的に考えたら、2ステージ制の導入にはどう考えても正統性も必要性もないのだ。・・・2ステージ制導入を決めたJリーグの”官僚”たち自身も、そのことは十分に承知していたのだろう。だからこそ、「金のために」ポストシーズン制を導入せざるをえなくなったJリーグは、「後ろめたさ」を抱きながら新しい大会形式の制度設計をせざるをえず。その結果として、あのような複雑で分かりにくいシステムを作ってしまったのだ。(P021)
●サッカーというスポーツが社会に受け入れられた今日、本来であれば各クラブの経営はより自由化され、クラブがリーグから自立していくことが望ましい。・・・ただでさえ、クラブライセンス制度によってクラブの経営に対する「縛り」が増える時期にさらにJリーグの権力が強化されるとすれば、Jリーグは発足当時の「護送船団方式」に逆戻りしてしてしまうのではないか。(023)
●百年構想を掲げたJリーグは今年20周年を迎えたわけですが、広瀬さんは、今後の歩みをどう予見しますか? 「この先、もう少し悪くなるんじゃない。ハードランディングするためには1回落ちて、やり直すしかないってところまで落ちないと。行くところまで行って、人材を入れ替えて立て直すしか方法はないと思う……」(P055)
●目先のお金のことにとらわれ過ぎて、本質を分かっていないように思いますね。あまりにも安易に収入について考え、サッカービジネスの根底にあるサッカーそのものの面白さを提供することについて、Jリーグ関係者の大半は分かっていないのではないか(P068)
●少し厳しい言い方になるかもしれませんが、Jリーグで毎年降格争いをしていたチームにスロベニア人3人が来たことで、そのチームがリーグの首位に立つということが既に、Jリーグに何かが足りないということを物語っているのではないでしょうか。例えば、ドイツのブンデスリーガで同じようなことが起こる可能性はほぼないでしょう。(P082)