とんま天狗は雲の上

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柔道整復師の未来。セラピー・マッサージの謎

 先日、いつもの鍼灸院に行った際に、柔道整復師の保険請求のことが話題になった。私が通っている鍼灸院では基本的に保険診療は行っていないが、昔利用していた接骨院では保険適用が当たり前だった。それがこの春以来、接骨院の保険請求に対する厚生労働省の扱いが厳しくなり、保険請求が認められないケースが頻出していると言う。
 参考:「東海北陸厚生局:柔道整復施術療養費の料金及び受領委任の取り扱いの変更について」
 もともと骨折、脱臼、打撲及び捻挫しか適用(原則として骨折と脱臼については医師の同意が必要)にならないが、接骨院等による代理請求(受領委任と呼ぶ)は認められており、一般の医療機関と同様、患者は自己負担分のみを支払い、残りの金額を保険者に請求し受け取ることが一般的に行われている。ところが、高齢者等が肩こりや腰痛などで慢性的に接骨院にかかった場合でも、打撲及び捻挫として請求する不正請求が後を立たず、しばらく前から問題視されていた。
 既に患者からは自己負担分の料金を受領しており、保険の対象にならなかったと言って追加分を患者に請求するのは営業上、憚られる。結果、保険金の受け取り不足と、保険適用できない施術の料金値上げで患者が激減し、経営難に陥っている接骨院が少なくないと言う。
 私が通う鍼灸院の先生も柔道整復師の免許も持っており、今から25年ほど前に初めて開業した頃には、保険請求はやり放題。施術部位ごとに保険請求が可能だったため、患者一人で何ヶ所も捻挫したようなとんでもない内容で請求していたという。両足捻挫でどうして歩けるというのかと自分で突っ込んでいた。高齢者は特にカモで、当時は高齢者の自己負担が1ヶ月800円上限となっていたため、週に何度も施術しては、超過した分を請求して儲けていたと言う。オイオイ。
 結局、こうしたやり方には数年で見切りをつけ、その接骨院は弟子に譲り、生まれ故郷に戻って鍼灸院を開業。その後の変遷もあった末に、現在地で保険適用外の鍼灸院を続けている。けっしていい人だったわけではなく、暴力団との関係など色々なことがあったらしい。それはさておき。
 厚生労働省は保険請求は医療機関に一本化していきたい意向のようで、街場の接骨院と引き換えに整形外科のリハビリ・センターは大流行だ。大流行といえば、最近とみに多く見かけるのが、セラピー・マッサージのお店。私が時々昼間に歩く名古屋栄の地下街にも、この種のお店がいくつもあって、若い女性が店頭で客寄せをしていたりする。
 「マッサージは本当はマッサージ師しかできないんだよね」と鍼灸院の先生が言う。えっ?じゃ彼女らは違法営業しているの! 聞いてみると、あんま・マッサージ・指圧師は国家資格で国家試験に合格することが必要であり、あんま・マッサージ・指圧の施術を業とする場合はこれらの資格者でなければいけないと定められていると言う。厚生労働省のホームページ「厚生労働省:無資格者によるあん摩マッサージ指圧業等の防止について」にもこの旨の通知が掲載されている。
 でも最近多く開業されているセラピー等の店が摘発されたという話はあまり聞かない。たぶん、これらの店で行われているのはマッサージではなく、セラピーなのだろう。セラピーとマッサージとの違いは何? 鍼灸と違い、マッサージで命を落とすことはないことと、マッサージ師の業界団体に政治力がないことから、売春行為が行われている場合以外はほとんど摘発等は行われていないのが実態らしい。正直、あんまやマッサージに国家資格がいるのかと思うが、かつては盲目の人の唯一の稼業ということで手厚く保護されてきた事情もあるようだ。
 柔術整復師、鍼灸師、あんま・マッサージ・指圧師と街場の非医療行為に対する根強い需要はあるのだろうが、国は医療機関へ一本化して保険料の縮減を図っていきたいのだろう。わからないではないが、高齢者にとっては辛いかも。整形外科の高齢者サロン化がますます進行しそうな気がする。