とんま天狗は雲の上

サッカー観戦と読書記録と日々感じたこと等を綴っています。

サッカー批評(67)

 フォルランセレッソ大阪入団はJリーグにとって大きなインパクトを与えた。表紙にピンクのユニフォームを着たフォルランのアップ写真が使われている。その左胸に「お金がなくても強いチーム、お金があっても弱いチーム」。今号の特集は「マネー・フットボールの最前線」だ。
 セレッソ大阪の岡野雅夫社長へのインタビューが面白い。「お客さんが集まるサッカーが質の高いサッカーだ」と言い、企業のアジア戦略として、テレビコマーシャルよりもサッカーこそ共通言語という感覚が今回のフォルラン入団を実現させた。先日のACLでようやく初ゴールを挙げたフォルランだが、社長が言うように、「柿谷がスアレスになる」ことを日本中が願っている。
 「FIFAリール導入から5年 Jリーグに移籍金ビジネスは根付いたか」という小澤一郎の記事では、選手のそのチームの選手として登録する権利(フェデラティブ・ライツ)とは別に、肖像権や移籍金を獲得する権利(エコノミック・ライツ)などを分割して取得するなど、さまざまな手法が紹介される。選手をファンド化して資金を集めるなんて手法も紹介されているが、確かにそういうファンドがあれば多くのサポーターが資金提供して、超大物外国人を連れてくることもできるかもしれない。
 第2特集は「サッカーの新常識」。こちらでは、ネットワーク理論をさっかーのゲームに当てはめた論文の紹介や、究極のオールラウンドサッカーで世界を驚かせたU-17の吉武監督、外国でプレーする場合の外国語の問題などをテーマに取り上げているが、全体的にはやや小粒。「僕らはへなちょこフーリガン」では、未だに日本人に巣食う「西欧中心主義の緊縛」を嗤う。確かに。
 Jリーグでのフォルランの活躍も楽しみだが、やはり今年はW杯イヤー。「ブラジルW杯を確実に現地で見る方法はあるか? 個人観戦の猛者に聞く遠征術」も面白かった。相当な体力と語学などの能力と、そしてあふれんばかりの情熱がないと個人観戦は厳しそうです。

●ではゲームの質の向上こそ大事だ、と唱えるのですが、問題は吟味するその内容です。質を上げるためには試合間隔が中2日になるのは絶対避ける、だから、土・水・日開催でといった議論だけなんです。・・・私はそれは違うでしょう、と。ゲームの質とは、お客さんにとってゲームが楽しいということが一番大事じゃないですか。プロとしてお役さんをスタジアムに呼んでこられるということを以って質と考えないと。(P016)
●アジアは世界中から、マーケットとしての大きさを注目されています。・・・ところが、ヨーロッパと違って広くてもっと多様なわけです。行く先々で、言葉は違う、宗教も違う、いろんな壁があるわけやないですか。そんな中でサッカーだけが共通言語なのです。・・・例えばテレビコマーシャルを打つのにコストがいくらかかります、でもそれと同じ額をセレッソ大阪で使った方が、企業として効果は高くなります、という議論をオーナーと何回もやっています。(P021)
●リーグの構成としては、カネにものを言わせて大胆な戦力補強を繰り返すビッグクラブがいくつかあって、それとは別に、育成に情熱を注ぐチームがあったり、戦術志向のチーム作りに特化したマニアックなクラブがあった方が良い。・・・要は、カネの使い方や、集め方に特徴が出てくれば、チーム戦術やクラブ運営にもそれなりの個性が出てくるはずで、つまるところ、サッカーを楽しむということは、そうした、リーグ全体にばら撒かれた地域特性を楽しむことでもあるということだ。(P110)
●「世界が認めた」だの「世界が驚かせた」だの、勝手に自分たちの一段上につくり上げた仮想の「世界」に勝手に支配されたり甘えたりする。世界には自分たちも対等に参加していて、それはいくらでも変わりうるんだというリアルな世界観を、そろそろ身につけるべきでしょう。それって世界だけじゃなく組織やクラブも同じですよ。(P120)