とんま天狗は雲の上

サッカー観戦と読書記録と日々感じたこと等を綴っています。

世界中の誰もが予想しなかった悲劇的な結末。ブラジルを崩壊させたのはドイツか、はたまたブラジル自身だったか。

 肩を組んでゆっくりとした足取りで入場してきたブラジルの選手たちの表情が硬い。ネイマールが今大会絶望の大ケガを負った後、何としても優勝の思いが以前にも増して選手たちの肩に重く圧し掛かってきたようだ。これまでも国歌斉唱の際に感極まって涙を見せてきたブラジルの選手たちだったが、このゲームでは涙も出ないほどの緊張感に抑えこまれていた。そしてキックオフ。この思いを振り切るようにブラジルが攻めていく。
 だがドイツがしっかり対応する。ブラジルは後方でパスを回し、隙を見てゴール前に入り込もうとするのに対して、ドイツは早めにプレスをかけ、人数をかけて守りつつ、奪うと一斉に攻め上がっていく。ブラジルに比べゴール前に入っていく人数はドイツの方が断然多い。
 そして11分、攻め上がり得た初めてのCKをCHクロースが蹴ると、ファーに回り込んだFWミュラーがニアを抜けたボールに合わせる。ゴール。何とあっさりとドイツが先制ゴールを挙げた。ブラジルもすぐさま反撃する。ネイマールに代えて右SHベルナルジが先発したが、左SHフッキともども、個人突破で打開しようとしてドイツDFの人数をかけたブロックを破ることができない。両サイドから再三クロスを入れるが、ことごとくはね返される。
 23分、そうしてはね返したボールを拾ったドイツがそのままカウンター気味に攻め上がる。CHクロースのスルーパスを右SHミュラーが落とし、CFクローゼがシュート。GKジュリオ・セザールがはね返すが、ブラジルDFのこぼれたボールに対する反応が遅い。クローゼがいち早く反応しシュート。ドイツが早々と追加点を挙げた。W杯通算ゴール記録を更新する16点目のゴール。だがこのシーン、クローゼの反応もさることながら、チアゴ・シウバの不在を痛感した。
 そして24分、同じようなカウンターからまたブラジルが失点を喫する。左SHエジルから右に展開すると、右SBラームのクロスにCHクロースがミドルシュート。3点目のゴールをネットに突き刺した。ブラジルの中盤のプレスがない。DFが下がり過ぎてバイタルエリアを全くドイツの自由にさせる。予期せぬ3失点目に唖然とする観客。いや最大唖然としていたのはブラジルの選手たちか。そして動きがなくなったブラジルに対してドイツが容赦なくゴールを狙う。
 25分、CBダンテからCHフェルナンジーニョへのパスにCHクロースが襲いかかり、奪うと、いったん左に展開。CHケディラとのパス交換で戻ってきたボールをクロースがシュート。2点目からわずか3分間で4点目。突然襲った悲劇に泣きだすサポーターたち。ブラジルの選手たちの動きも緩慢。まさに茫然自失とはこのことか。そして29分、さらに悲しみがブラジルを襲う。DFからのフィードを受けたCBフメルスがドリブルで持ち上がると、CHケディラが受けて縦パス。左SHエジルが落としたボールをケディラがシュート。悠々とDFの間を抜けてゴールに突き刺さる。5点目。ブラジルのゴール前は人はいてもゴールへの道はいくつも空いている。32分、右SBラームが上がって落としからCHクロースがミドルシュート。これはゴールにならなかったが、前半終わって5-0。誰もが予想もしなかった前半だった。
 後半に入り、ブラジルはSHフッキとCHフェルナンジーニョに代えてラミレスとパウリーニョを投入する。ドイツはCBフメルスに代えてメルテザッカー。守備を固める。後半、ブラジルが攻める。6分、CFフレッジのスルーパスに抜け出した右SHラミレスがクロス。だがゴール前に走り込んだOHオスカルの前にGKノイアーがセーブ。7分、右SHラミレスのスルーパスにOHオスカルが抜け出しシュートを放つが、またもGKノイアーがファインセーブ。さらに8分、CKのクリアから右SHラミレスがヘディングで縦に送り、CHパウリーニョがシュート。GKノイアーがセーブ。はね返りを再びパウリーニョがシュートするが、GKノイアーがファインセーブ。ドイツのプレスの速さが目立つ。
 そして13分、ドイツはCFクローゼに代えて右SHシュルレを投入し、ミュラーをCFに上げる。すると16分、ブラジルのゴール前に攻め込んだドイツは16分、PA前でパスを回してCFミュラーミドルシュート。ここはGKジュリオ・セザールがファインセーブを見せたが、ブラジルの中盤のプレスがかからない。そして24分、右SBラームが攻め上がり、クロスに右SHシュルレがシュート。DF棒立ち。ついにドイツが6点目を挙げる。
 ブラジルは25分、CFフレッジに代えてOHウィリアンを投入。オスカルをCFに上げる。ドイツも31分、CHケディラに代えて右SHドラクスラー。すると34分、左サイドからのクロスに左SHシュルレがゴール前に走り込み、角度のない位置からのシュート。ゴールネット上部に突き刺すシュート。ドイツ7点目。
 その後は守備を固めたドイツに対してブラジルが反撃。40分、右SHラミレスのミドルシュートはGKノイアーが正面でキャッチ。44分、OHウィリアンのスルーパスにCFオスカルが抜け出しシュートを放つも枠を外す。ようやく45分、左SBマルセロのフィードに抜け出したCFオスカルが切り返してDFを抜きシュート。飛び出すGKノイアーの横を抜いてようやく1点を返す。だが焼け石に水。アディショナルタイム2分の末タイムアップ。7-1。ブラジルの悲劇的90分がようやく終わった。ドイツ決勝進出。
 世界中でドイツ7-1の勝利を予想した人が一人でもいただろうか。シンガポール八百長胴元でさえ、この結果は予想していなかっただろう。52年前のマラカナンの悲劇の払拭を期したブラジルが新たな悲劇を背負いこんでしまった。まさに悲劇の返り打ち。ネイマールの欠場がブラジルに与えた影響はそれほど大きかった。そしてチアゴ・シウバの不在がその流れを止めることができなかった。
 それにしても驚いた。決勝は南米対決を期待したが、かなわなかった。せめてアルゼンチンにだけはがんばってほしいのだが。次の準決勝も見たいような、見たくないような。重い緊張感を感じている。