とんま天狗は雲の上

サッカー観戦と読書記録と日々感じたこと等を綴っています。

PK戦のための静かで重い120分の序章。アルゼンチン、決勝進出。

 髪を切ったCBデミチェリスは予想以上に男前だった。デミチェリスが入ったアルゼンチンはCBガライ、CHマスケラーノ、CHビリアとともに堅固な守備ブロックを作って、FWロッベンとFWファンペルシーにプレーをさせない。一方、オランダもあの強力なデヨングがメッシ一人をマンマーク。お互い攻めのチャンスをまったく見出せない。
 13分、OHスナイデルミドルシュート。遠目のシュートですら、寄せが速く正確に打つことができない。アルゼンチンも15分、CFイグアインから右SHペレスに落とし、ドリブルからファールを得るが、メッシの蹴ったFKはGKシレッセンがキャッチした。24分にはラベッシのCKにCBガライがオーバーヘッド。前半はアルゼンチンがやや押し気味ながら、とてもゴール前には遠い。セットプレー以外にはPA内に近付くことさえも稀。重く静かに前半45分が過ぎた。
 オランダは後半頭、CBマルティンス・インディに代えて右WBヤンマートを投入。ブリントをCBに下げ、カイトを左WBに回す。後半は攻撃的に出ようというサイン。5分、FWロッベンをCBデミチェリスが倒し、FKを得るが、スナイデルのFKは枠を外す。お互い徹底的に守備重視。攻めの手がかりを探す我慢比べの消耗戦。13分、右SHラベッシのクロスにCFイグアインがゴール前にヘディングで飛ぶが、右WBヤンマートが絞って競り勝つ。17分には消耗したCHデヨングに代えてクラシーに投入。メッシ密着マークは変わらない。
 30分、右SHペレスのドリブルからクロスにCFイグアインが飛び込む。シュートはサイドネット。37分には右SHペレスとCFイグアインに代えて、パラシオとアグエロを投入する。39分、左SBロホがミドルシュート。だがGKシレッセンが正面でキャッチ。42分、OHメッシのドリブルから右に流してCFアグエロがシュート。だがCBフラールがブロック。どうしてもチャンスをつかめない。アディショナルタイムには左WBカイトのスルーパスにFWロッベンが走り込むが、出遅れたマスケラーノが最後の最後で足が伸び、クリアする。さすがマスケラーノ。すごい。アディショナルタイムにはオランダが攻勢をかけたが、アルゼンチンの守備が崩れない。90分を終えてもなおスコアレスのまま、延長戦に突入した。
 90分を終えてシュート数はオランダ5本、アルゼンチンが6本。延長に入ってもこの展開は変わらない。延長前半6分、FWファンペルシーに代えてフンテラールを投入。ファンハール監督がPK戦を嫌がった? 得点を取りに来る。9分、FWロッベンミドルシュートは力なくGKロメロの正面。アルゼンチンも10分、左SHラベッシに代えて、ベテラン、マキシ・ロドリゲスを投入。何とか展開を変えることを模索するが、重いゲームは変わらない。
 延長後半1分、左WBカイトと右SBサバレタが交錯。サバレタが口から大量出血してしばし中断。そしてゲーム終了間際の延長後半5分でようやくゲームが動き出す。10分、DFのクリアをCHマスケラーノがヘディングではね返すと、左SHマキシ・ロドリゲスがヘッドでつなぎ、右SHパラシオが抜け出してヘディングシュート。だがGKシレッセンが長い手を伸ばしてセーブ。さらに12分、OHメッシがドリブルで右サイドを突破、さらにライン際まで抉ってクロスに左SHマキシ・ロドリゲスボレーシュート。だがうまく当たらない。GKシレッセンがキャッチ。オランダも15分、右WBヤンマートのクロスに左WBカイトがシュート。だがGKロメロがセーブ。結局、お互い120分間攻め手なく、守り切ってスコアレス。決着はPK戦に委ねられた。
 PK戦はオランダの1番手フラールがGKロメロに止められると、3番手スナイデルのPKもGKロメロがストップ。対するアルゼンチンは、メッシ、ガライ、アグエロと決めて、最後はベテラン、マキシ・ロドリゲス。GKシレッセンが横っ飛び弾いたが、ポストに当たってゴールネットに転がり込む。決まった。アルゼンチンが静かな熱戦を制して、決勝進出を決めた。
 重いゲームだった。前半は静かに、後半になっても燃え上がることなく、静かにPK戦へと進んでいった。まるでPK戦のための前奏のように。120分の長い序章だった。決めたのは決勝への思い。前日のブラジル大敗を受けて、決勝戦をヨーロッパ同士の対戦としてはならないという南米勢としての気持ちが勝利を引き寄せたと思いたい。決勝はドイツ対アルゼンチン。アルゼンチンを応援したい気持ちが強いが、ドイツの方が総合力は高く、コンディションも良さそうだ。いや、どちらが勝ってもいい。面白いゲームになればいい。いや必ずそうなる。月曜日の朝を楽しみにしよう。その前に3位決定戦も面白そうだ。オランダは最後まで守備的なゲームを続けるのだろうか。ブラジルの意地を見たい。