とんま天狗は雲の上

サッカー観戦と読書記録と日々感じたこと等を綴っています。

テレビの秘密

 筆者はNHK外資系テレビ局を経て、現在はハーバードビジネススクールの教授をしている。日米のTV業界の裏表を知り尽くした筆者が、テレビ番組の秘密を語る。元は東洋経済オンラインで連載しているコラム「日本人が知らないテレビ学」を加筆・修正したもの。このコラムはこれまで読んだことはなかったが、今回読むとなるほど面白い。

 第1章では「ドクターX」や「相棒」を例に、ドラマの設定が人気・不人気を決めるという話。第2章はキャスティングの重要性。ここでは視聴者が親近感や自己同一感を抱けるようなキャスティングが重要と示唆する。第3章「マスか、ニッチか」では、マツコ・デラックスが両方のニーズに応えているため、あれほど人気が高いと分析。そして第4章は「編成」の重要性について。最終章では、テレビ東京や「アメトーク!」、池上彰の人気の要因を探る。一つひとつが独立したコラムのため、本全体としての起承転結はないが、どの章のどこを読んでもなるほどという視点が提示されており面白い。

 もっともTV業界にいるわけではない私には、それが公私にどう参考になるかと言えば、特にない。また、高視聴率番組と言っても見たことも聞いたこともない番組を例に語られる部分も多く、なるほどという以上の感想を持てないことも多い。暇つぶしに気軽に読めるライト本。『「今さらテレビなんて」という人にこそ読んで欲しい一冊』と裏カバーに書かれているが、「読んでみたけど、それで何?」という感じ。ただ改めて、テレビ業界も大変だなあという思いを強くした。

 

テレビの秘密 (新潮新書)

テレビの秘密 (新潮新書)

 

 

○差別化をあまりにもキャスチティングに頼ってしまったために、「お祭り化」が進んでしまったのではないでしょうか。/サッカー中継の目的は、当然のことながら、サッカーの試合を生放送で伝えること。スタジオでのつなぎは、ステーキの付け合せのニンジンのようなものなのです。・・・民放のスポーツバラエティ番組は、秀逸な物も多いのに、なぜ安易なキャスティング戦略に走ってしまったのか。とても残念に思います。(P74)

○編成と言えば、テレビ欄の元となるデータをつくっているところです。つまり何時にどんな番組を放送するかを決める部署。/現場で番組を制作している人たちが「アリの目」だとすると、編成は「タカの目」。24時間を鳥瞰しながら、司令塔として編成戦略を考えています。・・・視聴者が見たい時間に、見たい番組を提供するのが編成の基本。その狙いが少しでもはずれると、視聴率を獲得できないことになります。(P133)