とんま天狗は雲の上

サッカー観戦と読書記録と日々感じたこと等を綴っています。

日本戦後史論

 最近、報道ステーションなどで憲法学者白井聡の顔をよく見かける。「永続敗戦論」が話題になったと聞くが、まだ読んでいない。内容的に内田樹が普段主張していることと似ているのではないかと思っていたが、その二人が対談した。まさに二人のスタンスは同一方向。内田樹が豊富な経験から独断的な推論を述べて、白井聡がそれは面白いと同意する形で、二人の対談がドライブしていく。
 「コスモポリタン世界市民)であるためにはパトリオット愛国者)でなければならない」「戊辰戦争の恨みが日本軍部を破滅へ招いた」「今の日本の政治家は、先々代から築かれてきた戦後レジームを解体したい(=日本の破壊)を願っている」「アメリカ51番目の州になれば、実は政治的には相当にハッピーかも」などと興味深い話が次から次へと出てくる。
 もちろんどこまで事実かは人の心の中の、それも無意識下の事柄も多く、本当のところはわからない。いや本当のところも次々と変化していく。だがうまく説明できることについてはそれを受け入れ納得する。
 日本は今、日本を破壊したいと願う政治家に率いられている。それは先の大戦の敗戦をうまく引き受けることができなかったため。この方向を正すには・・・。本書が言わんとすることはこういうことである。楽しい対談本である。

日本戦後史論

日本戦後史論

●私たちの国土に対して絶大の愛着を感じる存在は、・・・日本に暮らしてきた私たち以外にはいません。私たちが当事者として無限責任を負わないなら、地球の一部としてのこの国土は、ならず者たちによって・・・最終的には打ち捨てられることになるでしょう。ですから、「この国土」に愛着を持つ「この私たち」こそが、その自然を、その社会を死守する主体にならねばならない。/このことは、真の意味でコスモポリタン世界市民)であるためにはパトリオット愛国者)たらねばならないことを意味しています。(P7)
●日本軍国主義というのは、のぼせ上がった軍人たちが、その権力欲と愚鈍さゆえに国を滅ぼしたというよりも、むしろ彼ら自身の心のどこかに「こんな国、滅びたっていい」という底なしのニヒリズムを抱えていたのではないか・・・彼らの父たち兄たちは、半世紀前にまさに「朝敵」の汚名を着せられ、天皇の名において殺されていったからです。(P45)
●永続敗戦レジームというのは、今の日本の政治家たちにとっては、先々代ぐらいの人が制度設計して作り上げた老舗の旅館みたいなものだと思うんです。どんどん地盤沈下している。・・・だから、無意識のうちにこのレジームの解体を願っている。今の政権がやろうとしていることはシステムの解体を加速することだと思います。(P117)
●安全保障政策は「積極的」なものと「消極的」なものに大別できる。後者は、できるだけ戦争から身を遠ざけることで国家の安全を保つという方針だといえます。憲法九条はこの方針のシンボルだといえる。これに対して前者は、「積極的」に敵を名指しして、その敵を攻撃したり無力化することによって安全を保つということなのでしょう。で、第二次大戦後から今に至るまで、そういう積極策をずっと採り続けてきた国があります。アメリカですね。このアメリカの軍隊の動きに自衛隊の活動を一体化させることが、「積極的平和主義」ですよね。(P197)
●属国的状況からの離脱という政治目的だけに限定すれば、日本がアメリカの五一番目の州になることが一番効率的なソリューションなんです。・・・だって、なったらすごいですよ。・・・アメリカの人口はいま三億ちょっとですから、日本人だけで全人口30%に達する。・・・大統領選挙での日本州の選挙人の数は半端じゃないですよ。日本州を制した候補者じゃないと大統領になれないということになったら、もう世界政治に対して日本人が直接関与できるわけですよね。(P219)