とんま天狗は雲の上

サッカー観戦と読書記録と日々感じたこと等を綴っています。

安倍首相はどうして正面からみんなの疑問に答えようとしないのだろう?

 安保法案について私が何か意見を言うまでもなく、新聞、ネット、社会そして家庭でもいろいろな議論が巻き起こっている。そんな中で私の意見をこの場で表明したところで大した意味はないので書くこともないけれど、安倍首相がTVや議場で話す例え話があまりに陳腐で、あれでは好意を持っていた人も離れていってしまうと思ったので、少しそのことについて書いておこう。
 今回の法案に安倍首相がこだわるのは、先に訪米した際に議会で約束してきてしまったからとかいろいろと言われている。たぶんそうなのだろうし、アメリカの来年度の国防予算が既に4万人削減・日本肩代わり前提で作成されているというから、口約束以上に重い約束なのだろうなと憶測する。
 しかしそれならそれでそのことをしっかりと話し、アメリカとの関係にひびが入るとか何とか言えばいいのに、ホルムズ海峡がどうたら(イラク情勢の変化で言及しないことにしたようだがそれもおかしい)、麻生君が殴られたら、アメリカが火事になったらと訳のわからない例え話を言うものだから、ますます何を言いたいのかわからなくなる。しかも、自衛隊員の危険性は増さないとか、日本でのテロの可能性を聞かれて外国でのテロ被害に話をすり替えたりする。
 安保法案は戦争を回避するために必要だと安倍首相は言うのだが、なぜ安保法案が制定されると戦争が回避される(日本の安全性が高まる)のか説明をしてくれない。アメリカだけだと攻撃されるけど、アメリカ+日本の軍事力があれば攻撃を受けるリスクが軽減されるということだと思うが、日本の軍事力なんて大したことないから、攻撃が回避される可能性よりも、一緒に攻撃を受けるリスクの方が高いような気もする。
 そして、賛成派・反対派ともこの点を巡って議論しているように思うのだが、両者ともこの本質的な論点を明確に示すことなく、非常事態は誰がどう判断するのかなんて枝葉を巡って議論が展開し、何が問題なのかわからなくなる。結局、そうした議論の末、「違憲性が高い」ということが明らかになり、昨今のデモや支持率低下につながっているのだが、憲法問題になったのも自民党が推薦した憲法学者違憲論を唱えたことが発端で、ほとんど自民党オウンゴールであり、野党の議論から始まったわけではない。
 野党にすれば「違憲性については早くから訴えていた」のかもしれないが、そもそも安法案の課題は憲法との整合というよりも、日本の安全保障の問題であり、地政学的な問題である。憲法問題で対応すればとりあえず法制定に一定の歯止めはかかるのかもしれないが、「じゃ、憲法改正すればいいでしょ」となればまた議論は一から始めなければならない。
 そもそも安保法案で国会は、我々は何を議論しているのか。そこが抜け落ちているので非常にわかりづらいのだと思う。法案の向こうにあるものを知りたい。