とんま天狗は雲の上

サッカー観戦と読書記録と日々感じたこと等を綴っています。

被災建築物応急危険度判定は緑色(調査済)の紙を貼る勇気が大事

 熊本地震被災地に向けて愛知県からも被災建築物応急危険度判定士が向かうそうだ。既に被災直後から熊本県、そして九州などの建築士により判定作業が進められていると聞いていたが、ついに愛知県まで派遣依頼があったということは、それだけ多くの建物が被災しているということだろう。

 一昨日の夜には、判定士がどんな活動を行うのかTVで紹介をしていた。よく知られているのは、建物の被災状況を調査して、赤色(危険)、黄色(要注意)、緑色(調査済)の紙を貼っていくことだろう。先日のTVでも柱が基礎から外れかかって、しっくい壁にも1cmを超える亀裂が入った木造住宅に赤色(危険)の紙を貼り、住人が「できれば使いたいと思ったけど、やはり危ないんですね」なんて言っていた。

 でも被災建築物応急危険度判定の本当の仕事はそれではない。本当は緑色(調査済)の紙を貼ることこそが求められているのだ。

 熊本地震では今でも多くの方が避難所生活を送っているが、同時に、避難所に入らず、自動車の中で暮らす方も多く、エコノミークラス症候群患者の発生が記事になっている。いまだに余震が多く続く中、多くの人はたとえ自宅がまだ壊れていなくても、次の余震で何時壊れるかと不安で、せめて夜は建物の下ではなく、少しでも安全な自動車やテントの中にいようとしている。余震が続く間はそれも仕方がない。

 しかし余震がある程度収まったら、自宅が壊れていない方には自宅へ戻って安心して睡眠をとってもらいたい。しかし見た目は大丈夫そうに見えても、本当に大丈夫か不安。そういう方たちのために実施されているのが被災建築物応急危険度判定だ。もちろん危険な建物で生活してもらっては困るから、赤色(危険)、黄色(要注意)の張り紙も重要だが、これらの建物は、特に赤色(危険)が貼られたような建物は一見して住人の方もそこで暮らそうとは思わない。しかし一見大丈夫そうに見えるけど、本当に大丈夫かな、と思う建物に対して、緑色(調査済)の紙が貼られていると、住人も安心して住むことができる。だから、被災建築物応急危険度判定において最も重要なのは、しっかりと調査して、緑色(調査済)の紙を貼ることなのだ。

 しかし、判定士の立場に立つと、緑色(調査済)の紙を貼ることはすごく勇気がいる。万一その後の余震で崩壊すれば、自分の責任と感じるからだ。そこで判定基準では緑色でも、どこか不具合はないかと探し、黄色(要注意)の紙を貼りたくなる。また、建物に不具合はなくても、例えばブロック塀が倒れそうであれば、それを理由に赤色(危険)の紙を貼ることもある。

 だから被災者には、自宅に緑色(調査済)の紙が貼ってあれば、かなりの確率で安全だと思ってもらっていい。また、赤色(危険)、黄色(要注意)の張り紙にも、どこが危険なのかが書かれているはずなので、それをよく読んでほしい。そして疑問があれば被災建築物応急危険度判定実施本部に聞けばいい。連絡先は張り紙に記載されている。

 判定士の皆さんには基準に従って客観的・専門的に活動を実施してほしい。そして何より自身の身の安全に気を配ってください。まだまだ余震は続いているようだから。