とんま天狗は雲の上

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熊本地震の被災者を全国の公営住宅で受け入れるよりも先に、ホテル・旅館の活用はできなかったのか?

 熊本地震が発生して2週間が経つ。14日夜の最初の地震に続いて16日未明に大きな地震が発生し、その後も震度5を越えるような余震が続いて、現地での支援活動がなかなか進まない状況があった。このところようやく余震も収まりつつあり、ボランティア活動など支援活動もいよいよ本格的に始まってきている。

 被災建築物応急危険度判定については先日、考えるところを投稿したが、公営住宅の提供についても、愛知県や名古屋市がその提供を公表し、入居受付が始まっている。全国的にも多くの自治体で公営住宅への入居受付を始めているようだが、熊本県ではようやく先週21日から受付を開始。入居開始は5月6日を予定しているという。こうした対応については「遅い」という感想を持つ人もいるようだが、私はけっしてそうは思わない。特に被災県以外での公営住宅の受付はもう少し慎重であるべきではないかと思う。

 国交省災害・防災情報HP国交省で開催されている非常災害対策本部会議の資料が公開されている。4月26日に開かれた第14回本部会議に「被災者に対する避難所・住まい提供の流れ」という資料が添付されているが、それによれば、「1.避難所の確保」「2.応急的な住まいの確保」「3.恒久的な住まいの確保」という流れの中、「公営住宅等の空室提供」は2番目の「2.応急的な住まいの確保」の一つとして、「応急仮設住宅の建設」や「民間賃貸住宅の空室提供」と並んで挙げられている。

 今回の地震では避難所に入らずにクルマで生活し、エコノミークラス症候群を発症する人が多く出た。そこで、避難所の代わりに公営住宅の提供が求められたという面があるのかもしれない。しかし賃貸住宅の空き家は、電気水道はすぐに使えるが、寝具や照明器具は自前で用意しないとすぐには暮らせない。ましてや熊本から遠く離れた土地で避難生活を送るということは通常考えられない。

 考えられるとしたら、子供家族が県外の都府県で生活をしており、そこへ被災した親を呼び寄せるという形だが、それをどれくらい急いで対応すべきだろうか。またどれだけ税金を投入するべきだろうか(通常、被災者向けの公営住宅の提供は家賃不要となる)。原発事故で多くの人が県外へ避難した東日本大震災では、県外の民間賃貸住宅へ避難した方に対する家賃補填が行われているが、今回も同様の対応をすべきだろうか。

 東日本大震災後、東北各県は大幅な人口減少に見舞われているが、原発事故のあった福島県及びその周辺は仕方ないとして、熊本でも同様の対応をすると、熊本の人口減少・地域衰退をいっそう早めてしまう結果にならないだろうか。その意味でも、九州各県はともかくとして、特に大都市地域での公営住宅の無料提供は慎重にあるべきではないかと思う。

 それよりも、熊本市内のビジネスホテルや周辺の温泉旅館などを避難施設として利用することはできなかったのだろうか。熊本県内の自動車関連企業などが一時的に操業停止に追い込まれ、たぶんそのための企業関係者なども熊本県に殺到しているだろう。そして地震発生とともにキャンセルされたホテルなどが、企業関係で一斉に抑えられたのではないかと推察する。しかしその前に、例えば事前の協定などにより、地震発生に伴いキャンセルされた部屋は避難施設として県や市町村が優先的に確保するような仕組みを作っておけば、被災者全員は無理だとしても、障害者などを優先してホテル等へ避難してもらうことは可能だったような気がする。

 ホテルや旅館であれば、寝具や食事の提供も容易だ。少なくとも室内に何もない公営住宅の空室の提供を急ぐくらいなら、ホテル・旅館業界が率先して空室の無償提供を呼びかけてもいい。どうせキャンセルされるなら部屋代は無償でもかまわないし、食事代等の実費はある程度被災者も負担できるだろう。もちろん公的援助をすることに異論はない。

 被災したらまず避難所とホテル・旅館。そしてしばらく落ち着いたら、仮設住宅公営住宅、民間賃貸住宅を借り上げた「みなし仮設」といった流れでいいのではないか。東日本大震災被災していない他県による公営住宅提供が広く実施されたことから、今回もいち早く公営住宅の提供を申し出る自治体が多くあり、そして「あそこがやるならうちも」と全国的に公営住宅提供が広がった感じがあるが、本当は必ずしも必要な支援ではなかったのではないか。それよりもホテル・旅館の空き部屋をいち早く活用する仕組みを考えてほしい。