とんま天狗は雲の上

サッカー観戦と読書記録と日々感じたこと等を綴っています。

フットボール批評issue12

 フットボール批評が1620円に値上がりした。1242円からだから、実に378円のアップ。代わりに32ページ増というのだが、値上げ分の価値ある内容だろうか。たまたま年間購読が前号で切れて今号の自動配送がなかったこともあり、しばらく最新号が発行されていることに気付かなかった。それにしても1620円というのは簡単に買える金額ではない。だいたい1000円を超える本は基本図書館で借りられないかと検討するのに。それでしばらくはネットの評価を見たりしながら買おうかどうしようか迷っていたが・・・結局購入してしまった。さて1620円の価値はあったのか。

 それはさておき、量的にはこれまでになく充実していた。特集は「新しい日本サッカーの教科書」。日本の育成は正しいかを問うものだが、世界と比較してガラパゴス化しているのではないかというのが本書の問題提起。2000年欧州選手権グループリーグ敗退後、しっかりと自国のサッカー育成を見直したドイツがW杯ブラジル大会で優勝するまでの道程と比較して、日本は全く育成が合理的でない。

 木村元彦氏が書くJリーグクラブライセンス事務局の横暴もこうした日本サッカーの暗部が表出した結果なのかもしれない。このところ継続して記事にしているエアインタビューの問題など、批判的な内容の記事が多く、前半は少し暗い感情が沸き起こる。

 サッカー批評らしい記事としては、FIFA非加盟の国や地域が参加する独立系サッカー連盟、ConIFAの第2回ワールドカップがある。この6月に開催され、日本からは初めて在日コリアンのチームが参加した。ジョージアとロシアの間にある独立国アブハジアで開催されたと言うが、初めて聞く国名だ。まだロシアなど数ヶ国しか国家として承認していないのだそうだ。

 巻末には第2特集「サッカー人間考、内なる声を聞く」として、アリゴ・サッキ小笠原満男箕輪義信のインタビューが掲載されている。こちらは読みごたえがある。「Hard After Hard」の西村卓朗のインタビューも面白い。

 それで私は次号も購入するのだろうか。1620円は高い。来週もまた迷うような気がする。購入が遅れて読者プレゼントの締切日が過ぎてしまったのも少し心には痛かった。

 

フットボール批評issue12

フットボール批評issue12

 

 

○日本では10年前に問題とされているものが克服され、今では自分たちの武器となっているだろうか。5年前に困難とされてきたものが整理され、次の段階に進めているだろうか。それに伴った指導者講習会のカリキュラムへと変更されているだろうか。今日本に必要なのは最先端のメソッドではなく、こうした基本の整理ではないだろうか。そう思うのには理由がある。日本人が海外に出て苦労しているのは「トレンド」がないからではなく、むしろ「スタンダード」がないからではないか。(P045)

○一体、Jリーグに何の権利があって、クラブの自治を侵害し、犯罪を犯したわけでもない顧問のスタジアムの入場を拒むのか。・・・しかも解任の理由が「消極的」という主観的な理由である。これについては常日頃、高圧的なライセンス事務局に対して従順ではない今西と服部に対する報復だったと言う人物さえいる。こんな恣意的なことがまかり通れば日本中のJクラブの人事はライセンス事務局に統制されてしまう。(P076)

○日本のサッカーが今よりもさらに上のレベルへ進んでいくために、高度な目を持つ審判団の存在は欠かせない。だからこそ、監督や選手が審判を公の場で批判すれば罰金に処せられるなどというバカげた規則は撤廃すべきだ。もしろん節度を書く批判は慎むべきだが、だからといって言うべきを公に言えないとすれば、これほど非建設的なことはない。(P085)

○ひとつ挙げれば……クラブ経営陣の仕事の継続性でしょうか。イタリアだけでなく欧州全体で、監督たちの命運は目の前の結果に左右されますが、クラブ内には仕事の継続性が十分に確保されています。ところが日本では、チームを同じ監督が何年も率いるようなケースが多くあるのに、一方で、社長や役員などには継続性があまりない。彼らが長くクラブのなかに留まることで、チームにアイデンティティーを与えたり、結果に繋げたりする継続性を持つことができるんです。(P091)

○「我々はサッカーの組織であって、政治的な主張をする組織ではない。・・・我々の目的はあくまでもサッカーをする場を作ることだ。国際試合をするチャンスに恵まれない国や地域や人々に、その機会を与えて、交流の場を作るのがConIFAの根本的な趣旨なのだから」(P113)