とんま天狗は雲の上

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政府は必ず嘘をつく 増補版

 7月の「政府はもう嘘をつけない」の出版前に、2012年に発行された「政府は必ず嘘をつく」の増補版が出版された。2012年版を読んでいないので、まずは増補版から読み始めた。2012年版が発行された時は、フクシマ原発事故の後、放射線量や風評被害など、様々な情報が飛び交っていた時期。そしてアメリカでも2011年9月からウォール街デモが始まった。「チェンジ」を訴えて大統領に当選したオバマの化けの皮が剥がれ、格差拡大が明らかになってきた時だ。

 それから4年。日本では民主党政権から自民党政権に代わり、アメリカでは次期大統領選に向けて、ヒラリーとトランプが壮絶な選挙戦を繰り広げている。そして、日本では安保法が成立し、安倍政権がいよいよ磐石さを増し、しかし相変わらず低迷する経済、そして格差の拡大は止まらない。

 一時あれほど盛り上がった安保法案反対の波も今は過ぎ去り、リオ五輪だ、次は東京五輪だとどこか浮ついた気分のまま、国民全体が安逸な惰眠を貪っている。正直、この夏の暑さにはうんざりした。8月以降、まともに頭が働いていない。そんな中、本書を読んだ。改めて日本政府に対する不信感がこみ上げてくる。

 しかし本書で言っているのは、政府でさえもグローバル資本に操られているという事実だ。だからこそ本書では、真実を知りたければ「金の出所を見ろ」と訴える。原子力村はもちろん、WTOなどの政府機関も、そして政府も今やグローバル資本に操られている。

 袋綴じの増補部分に書かれているのは、マイナンバー制度とTPPだ。TPPについては本文でもISDS条項の危険を再三訴えているが、アメリカの大統領候補の二人ともがTPP反対を言い出し、「じゃ結局成立しないのか」なんて安心感を抱いていたら、きっと大火傷を負う。少なくともヒラリーが大統領になったら、どう転ぶかわからない。

 あれから4年。今年発行された「政府はもう嘘をつけない」では堤未果は何を訴えているのか。暑さも次第に収まりつつある昨今、そろそろ惰眠から目覚めた方がよさそうだ。時代はますます悪い方へ動き出しているように感じるのだが・・・。

 

政府は必ず嘘をつく 増補版 (角川新書)

政府は必ず嘘をつく 増補版 (角川新書)

 

 

○「正直言って今回、僕は<原子力村>というものが世界各地にある事実に、とても驚きました。世界最大のウラン輸出量を誇るカナダもダメです。<原子力村>が強いフランスは、3.11後に自分の国で起きた原発事故を隠したし、そんな国ばかりです。(P45)

○WHOの運営資金は加盟国政府からの拠出金でまかなわれることになっているが、ここ10年で民間企業からの助成金が急激に拡大し、今では国連予算の倍の予算を私企業から受け取っている。/巨大化した資本の力に、学問だけでなく、国際機関でさえ飲み込まれつつあるのだ。(P59)

○政府が嘘をついたり、マスコミが偏向報道をするのは今に始まったことではありません。グローバル企業が巨大規模になるほど、本当に必要な情報は国民から隠されていく。当然、そのほうが効率がいいからです。/9.11以降のアメリカの10年を見れば、大衆がいかにたやすくコントロールされるものかが、よくわかります。(P97)

新興国に<救済>の名の下に規制緩和と民営化を導入させ、経済的従属関係を強いてきたIMF世界銀行、そしてより効率よく市場を広げるために労働者を数やモノにして画一化しようと、政府に対し支配力を行使するグローバル企業。それをスムーズに進めるためにハイテク技術と情報の取捨選択権を使い、ある方向に誘導していくマスコミ……(P189)

○人間を画一化する教育や労働環境の他に、グローバル経済を効率よく回すもうひとつの方法は、人々を分断することだ。・・・「僕たちは断ち切られたつながりを、再び結び直さなければなりません」・・・「グローバル化は<経済>だけを意味するものではありません。あまりにも長い間、それを推進する人々によって、そう思い込まされてきただけなのです。世界の他の国の人々に、フェイスブックを通して呼びかけたウォール街デモが、各地で始まったのを目にした時、僕はこう思いました。企業利益が正義だという流れとは別の、新しい価値観に基づいたグローバリゼーションを育てるべき時が来たと」(P203)