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とんま天狗は雲の上

サッカー観戦と読書記録と日々感じたこと等を綴っています。

急いてはいけない

 イビチャ・オシムという名前を見ると思わず立ち止まって何が書かれているか、何を話しているか、注目してしまう。本書は、フランス語に堪能でフランスのサッカーをよく知る田村修一氏がオシム氏にインタビューを行った内容を披露したもので、冒頭にオシムと関係があった選手や一般人からの20の質問が掲載されている。それらにオシム氏がいちいち答えているわけではなく、冒頭の書き出しから「どうしてあなた方はいつも同じ質問をするのか」という辛辣なコメントで始まる。読み終わって質問を振り返ると、質問に答えている部分もあれば、まったく無視されている質問もあるようだ。オシム氏からコメントを引き出すにあたって、まずはいくつかの質問をぶつけたという感じか。

 それで内容の多くもいつものオシム節だ。自信を持ち、自分をよく観察して、周りも客観的に捉え、分析し、常にリアリストであり、前向きであること。それはサッカーに限らず、人生の生き方に対する姿勢だ。個々のコメントに対して、本書を読みながらそうだよなあと感じればいい。時々はオシムの人生訓に立ち返るのも悪くない。もっとも864円も出して買うほどの価値があるかどうかは人による。私にはそれほどの価値はないと思ったが、それでもオシムの文字を見ると思わず立ち止まってしまう。いや時代は既にハリルホジッチとともにあるのだが・・・。

 

 

○どうしてあなた方はいつも同じ質問をするのか。自分たちの弱さを告白し、他人に答えを求める。/そんなふうに考えること自体が、弱さに正面から向き合っていない証拠だ。・・・難しいのはあなた方が、自分たちのことにこだわりすぎて、少し内向的になっていることだ。・・・もう少し自分に自信を持つべきだ。すでに進歩しているではないか。ノーマルであり続けるべきだ。(P20)

○チームが進歩すること、また選手が進歩して現在あるところにまで到達すること。・・・だがそのためには、時間をかけた地道な努力が必要で、彼らが100年かけて築いたものをわずか数年にショートカットはできない。・・・私が求めるのも、一つひとつの段階を踏んでの進歩だ。(P39)

○正しいと思い込むのと、現実に的確に行動するのとはまったく別のことだ。というのもすべてが「正しく」なり得るからだ。・・・「正しい」というのは、できる限り最高の仕事をすることであり、あれこそが「正しい」の意味だ。/より具体的には、選手やチームに必要なことを的確に行うことであって、「正しく」働くことではないし、選手が好まないことを「正しく」行わせることでもない。/もちろん「正しさ」にはめ込むこともときに必要だが、そうなった場合に選手が従わないのは容易に想像がつく。それでは「正しい」とは言えない。(P95)

○ストレスは、自分自身で生み出しているもので、どこか他の世界からやってきたのではない。ストレスを与えているのは自分自身だ。自らの生活の中から生まれたものだ。・・・ただし、ストレスのかかるような状況はできるだけ避けるように試みる。・・・そしてストレスが生じたときには、それを身近なものとして受け入れる。・・・成功したいと思ったら、ストレスにうまく対処するしかない。・・・だからこそストレスとともに生きるように、普段から意識して心がける。(P163)

○他者との関係とは、大きな幸福をもたらす一方でときにわずらわしいものでもある。しかし、その関係こそが自分自身・・・を形作っているということを忘れてはならない。(P192)