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とんま天狗は雲の上

サッカー観戦と読書記録と日々感じたこと等を綴っています。

紋切型社会

読書

 先日読んだ「芸能人寛容論」は面白かった。その前に出た本書をさっそく予約した。「紋切型社会」というタイトルの意味は少しわかりにくい。「育ててくれて、ありがとう」とか「逆にこちらが励まされました」とか言って、わかった気になってるなよ。本当に「ありがとう」か? 本当に「励まされた」んかよ? と、当たり前に使われる言葉のウラの社会、真実の社会をえぐってみせる。

 「日本」を「ニッポン」と言い換えて何が始まったのか。 「若い人は、本当の貧しさを知らない」と言って、何を守ろうとしているのか。そんな深読みには「どうでもいいよ」とか「いいかげんにしろよ」なんて言葉が似合うのかもしれないが、「そうだよな」と同意したり、「なるほどね」と気付かされることも少なくない。

 先日も書いたが、筆者はまだ30代半ばで、それでこんなにひねくれていていいのかと心配になるが、いや「頼もしくなる」の言い間違いか。一つひとつが独立して、全部で20題。深読みして批判して、そしてその先はもちろん自分で考えるしかないのだが、その先までも規定し尽くさない程度がちょうどいい。今後、コラムニストとしての仕事がもっと増えるといい。そしていつかもっとメジャーになる日が来るのだろうか。そんな日を待ち望みたい。

 

紋切型社会――言葉で固まる現代を解きほぐす

紋切型社会――言葉で固まる現代を解きほぐす

 

 

○子は親の生き写しではない。おおよその場合、親は子を育てるが、育てないこともある。多様性を、ありきたりの式次第や取って付けたような感動で踏み潰す動きに対して慎重になりたい。・・・そのためにも・・・結婚式のスピーチ各種くらい・・・ご自分の言葉でお願いしたい。・・・明子さんの言葉は、大抵の場合、お母様に届くけれど、届かないこともある。届かせるべきではないこともある。この当たり前を獲得しなければならない。(P031)

○五輪に期待することへの返答にも二の句が継げない。・・・「国民に夢や目標を与える」(89%)が最も多かったという。・・・夢や目標は、いつから国から国民への配給制になったのだろうか。(P038)

○日本は国のものだが、ニッポンはみんなのものだ。そんな定義などあるはずもないが、いつからかそういう佇まいを素直に引き受けるようになった。・・・「日本」は「国家を運営する側with私たち」だが、「ニッポン」は「私たちwith国家」というパワーバランス・・・。石原が元気にできなかった「日本」を、猪瀬は「ニッポン」で手に入れたのだが、残念なことに、発泡スチロールがカバンに入らなかった。(P038)

○ファンキー・モンキー・ベイビーに「それでも信じてる」と連呼する・・・熱唱ソングがあるが、・・・今、僕らが暮らしている日々こそが僕らを肯定してくれるのであって、かけがえのないものはすでに目の前にあるもの、そう気付いたのさ、というオチ。/昨今叫ばれるブラック企業をはじめとした労働の搾取はこういったスタンスを好物としているが、当人はそんな安っぽいシステムに気付くはずもなく、反知性主義を飛び越えた無知性至上主義の中であくせく暮らしてしまい、置かれた場所で素直に枯れまくってしまう。(P144)

○常識人ぶると、「WIN-WIN」という流行りのビジネスワードの陰には確実に「LOSE」がいるのだし、ならば、ジャーナリズムの役務は、埋もれてしまったLOSEに目を向けて、そこへ強引に追いやろうとするWINの存在はないかと監視すること、なのであろうが、人はWIN-WINを目の前に差し出されると、ついついお互いに勝ち合っているのだしと、そのハグをそそくさと許容し、足下で踏んづけられている光景に目をやることを失念してしまう。・・・WINとWINは「-」でつながっている。結託している。だからこそ、LOSEはなかなかWINには立ち代れない。(P269)