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とんま天狗は雲の上

サッカー観戦と読書記録と日々感じたこと等を綴っています。

政府はもう嘘をつけない

 昨年7月に発行された本である。図書館に予約をしていたが、なかなか入荷しなかった。第5刷が12月に刷り上り、ようやく我が春日井図書館にも蔵書されることとなった。「政府は必ず嘘をつく 増補版」の続編。というわけではなく、筆者が追っている強欲資本主義とそれに飲み込まれつつある国家。アメリカ然り、日本然り、そしてギリシャの惨状。それらを余すことなく描いていく。

 「政府はもう嘘をつけない」というタイトルからは明るい希望が窺われるが、実際はまったくとんでもない。唯一、IMF等からの経済支援を拒否し、銀行を倒産させ、国民自らの手で国民の健康と環境を守り、奇跡の復活を遂げたアイスランドを除いては。だが、そのアイスランドにすら再び強欲資本主義の魔の手が伸びようとしている。

 では、我々は絶望するしかないのか。エピローグでは、バーニー・サンダースの元に集い、一過性に終わったオキュパイ運動から永続的な希望を持ち始めたアメリカの若者の姿が紹介される。そしてトランプ氏をサンダース氏とコインの裏表と表現する。トランプ大統領に対しては、アメリカだけでなく日本でも否定的な報道が再三なされるが、とにかくアメリカはこれまでの既得権益者による政治体制からは離陸をした。さて、日本は?

 大統領選前に出版されているため、堤氏のトランプ大統領に対する評価は書かれていない。堤氏のサイトなどを見ても、まだはっきりとした判断はしていないようだ。今後、アメリカはどこへ向かうのか。そして安倍政権は、日本はどうなるのか。世界はどう動くか。堤未果の言動にも注目したい。

 

政府はもう嘘をつけない (角川新書)
 

 

○若い世代はとっくに気付いているのだ。/米国の抱える真の病理が、個々の政策などでなく、それを束ねて飲みこんでゆく「政治とカネ」という構造そのものにあることに。/誰もがアメリカンドリームを手にする機会があったはずのアメリカが、国家としての力を失い、超富裕層だけが潤う「株式会社国家」になってしまっていることを。/その根底に横たわる<強欲資本主義の価値観>は国境を越えて世界中に広がり、私たち日本人の暮らしにまで、静かに手を伸ばしてきている。(P91)

SNSを使いこなすデジタル世代の若者たちの多くは、新聞も雑誌も読まず、テレビも必要ないと言う。/だが、そこには落とし穴もある。毎日のようにSNSでどんどん流れてくる短い数行の情報だけに接していると、いつの間にか語彙が減り、物事を皮膚感覚的にしか捉えられなくなってゆくからだ。すると、簡単なスローガンや耳障りのいいフレーズに反応しやすくなり、ネット世界の同調圧力に皆が空気を読みあう中、少しずつ多様性は失われていく。/自分の頭で深く考えなくなった集団ほど、操作しやすいものはない。(P196)

○「医療は、不況下にある国が投資すべき数少ない分野です。医療従事者や看護師、技術者などの雇用を増やすだけでなく、投資を促し、景気を刺激し、何よりも地域や国民の社会的連帯を強化する。/医療とセーフティネットを切り捨てたことで、ギリシャは<経済危機>を<健康危機>にまで広げてしまいました。/税収は下がり、格差は拡大し、借金は減るどころか膨れ上がり、国家はボロボロになってしまったのです」(P247)

アイスランドが行った金融・経済改革は、従来のものとは真逆だった。/輸出産業ではなく国内産業に、金融ではなく医療や教育等の社会的共通資本に予算が惜しみなく投じられてゆく。・・・過度の経済危機から回復した実績から、国家の責任能力が高く評価され・・・アイスランドは、有望な投資先として、再び注目され出している。/だが・・・国が国民の健康や雇用、教育や最低限の暮らしを全力で守るという環境の中で・・・政府への信頼もまた、徐々に回復し始めたのだ。(P252)

○<医師会>に<農協>。どちらもスクラムを組んだマスコミから、長年「既得権益」とバッシングされてきた団体だ。・・・だが間違えてはいけない。私たちがここで見るべきは、その制度自体の存在が社会の中で持つ<価値>のほうなのだ。・・・株主でなく組合員が、全員の幸せのために出資し合い・・・総合的に暮らしに関わる事業を行う協同組合である<農協>。・・・<国民皆保険制度>も同様だ。・・・全国民が低負担で標準治療を受けられる皆保険制度を維持するために、「医療で金儲けをしてはならない」という非営利原則を徹底しているためだ。(P279)