とんま天狗は雲の上

サッカー観戦と読書記録と日々感じたこと等を綴っています。

退職記念旅行は、東北でよかった(その7)

 「退職記念旅行は、東北でよかった(その6)」から続く。

 翌日は午前中に角館を観て、それから会津磐梯まで走る予定。それで早めに角館に行かなければと思いつつ、朝、食事の会場で、一面かたくりの花が咲く写真を見てしまった。仲居さんに場所を聞くと、角館に向かう途中にあると言う。それで田沢湖の北側を走り、たつこ像のところから西に入っていく。途中、水芭蕉の群生にタクシーが止まっている。国道105号に出てしばらく行くと、「かたくり館」という大きな看板が立っていた。

 駐車場に停めると、「かたくり群生の郷」の受付がある。入園料を支払うと、クルマでも回れるとのこと。そこでクルマで踏切を渡ってすぐに右に入る。するとまた案内受付があり、一方通行になった狭い道をクルマで上っていく。この一帯は西明寺栗の栗林になっており、栗の木の間のなだらかな丘陵地にかたくりの花が群生している。しばらく行くと駐車場があって、そこでみんな車を止める。茂左ェ門群生地は一面のカタクリの花。これはすごい。足助の飯森山の群生は山の斜面だが、ここはなだらかな地面に咲いているので見やすいし、きれい

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 ひとしきり鑑賞すると、またクルマに乗り込み、一方通行の道を行く。途中、何か所か小さな駐車場があって、降りては写真を撮る。そして八津集落の手前でまた車を止めると、ここもすごい群生。突然の雨に追い立てられるようにクルマに戻る。帰りにまた「かたくり館」に寄って、妻は山菜(コゴミ)を買い込んでいた。

 角館にはようやく11時前に着いた。既にすごい人出。それでももう出ていく人もいるのか、臨時駐車場には少し待っただけで止められた。しかし駐車場でもらった観光ガイドが広告ばかりでどこへ行ったらいいかわからない。駐車場の向かいの屋敷でお抹茶会の案内があったのでフラフラと入って行ったら、そこは「旧石黒(恵)家」。留守居の女性に聞くと、「ここは石黒家の分家で、昭和に建てられたもの。まずは石黒家に行きなさい」と案内される。地元の人はみんな親切だ。

 それで「石黒家」へ。深い水路を渡って入る門が立派。母屋の茅葺の屋根もきれいだ。多くの観光客が詰めかけるので、複数の案内人が手際よく、説明をしてくれる。亀の欄間模様を通った光が直交する壁に映し出される趣向は面白い。流されるように母屋から奥の蔵を見て、外に押し出される。

 続いて隣は青柳家。ここは門や母屋だけでなく、農家を移築した郷土館や資料館が敷地内に点在している。それらをいちいち見ていると時間がかかる。入館料も500円と少し高いだけでなく、中ではお土産物なども販売している。そこで生もろこしを買ってしまったが、家に帰ってから封を解いてみると、量の少なさに驚いた。いや、おいしいんだけど、一口300円は少しびっくり。

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 青柳家を出てしばらく行くと、道が鍵の手となっている。広い通りは昔のままの道幅ということで、積雪の関係もあると思うが、広々として気持ちがいい。そこに桜並木。人力車と多くの観光客。クルマも通るので、広いと言ってもけっこう危ない。角には角館樺細工伝承館の和風の屋根が目立つ。そのまま通りを南に進むと、岩橋家。ここは屋根が板葺き、杮葺きだ。さらに河原田家、小野田家。これらはいずれも無料で見学できる。その分、静かで、屋内に上がることはできないが、戸は開け放たれており、それほど大きい建物でもないから、十分内部も見学できる。玄関の破風下の飾りが美しい。

 しばらく歩いて、交差点を右に曲がる。向かい側のセブンイレブンが濃茶色の景観に配慮した外観なのが面白い。桧木内川沿いに桜並木が続く。川幅は広く、堤下には河原があって、遠くには雪を被った山並み。広々、のびのびとした景色だ。河原に突き出た展望台で写真を撮った後、堤防沿いの交差点に立つカフェ「プチフレーズ」で食事。稲庭うどんとオムライスを食べる。

 帰りは1本西側の路地をぶらぶらと歩く。途中、松本家を見学。こちらは門も柱を2本立てただけの簡素なもので、庇は杉皮葺きに石が置かれている。下級武士の家。その隣は公園になっていて、源平合戦の武者人形が飾られた曳山が展示されていた。角館祭りは先年のユネスコ無形文化遺産の一つに指定されていた。公園を抜けてぶらぶらと、途中で土産物店にも寄りながら、駐車場に帰り着いた。疲れた。もう13時を過ぎている。11時半には出発の予定だったのに。でも昼食は済ませたので後は走るだけ。がんばろう。

 ところがナビをセットしたら、盛岡IC経由を示す。おかしい。路肩に止めてナビを操作して、ようやく秋田自動車道・大曲IC経由に変更する。でも、そこまでがけっこう遠い。前にはのんびり走る軽自動車。イライラしながら2時半過ぎにようやく大曲ICに着いた。あとはひたすら高速道路を走る。北上JCTから東北自動車道。福島西ICで降りて国道115号を西へ。正面に見える山は吾妻山か、安達太良山か。整備された国道をぐんぐんと飛ばして、曲がりくねったスカイラインを抜けると、長い土湯トンネルに入る。トンネルを抜けて見えるのは磐梯山。ふとガソリンメーターを見ると、メモリが1。すっかり少なくなっている。残り走行可能距離は60㎞。何とか宿には辿り着きそうだ。

 宿は磐梯中ノ沢温泉の「磐梯西村屋」。ぎりぎり6時に到着。「夕食は何時に?」と聞かれ、「7時」と答えたら、嫌そうな感じ。「6時45分から」と逆提案されて、それで了承。野天風呂の他に、大浴場が二つ。男性風呂は夕方までヒノキ風呂。午後8時に岩風呂と交替するというので、入浴を急いだ。浴室へ向かうと男性風呂になぜか入口が二つ。左の入口を入ると、ちょうど一人帰るところ。服を脱いで扉を開けると、狭い。しかもヒノキに見えない。これはひょっとして右側の扉がヒノキ風呂か?と、再び浴衣を羽織って右の扉へ。そこには先客が二人。でも狭い。蛇口も2ヶ所しかない。「むちゃくちゃ熱いですよ」と先客が言う。二人が出た後、浴槽に入ろうとしたら、確かに熱くて入れない。足は浸けたが、とても身体まで湯船に入れない。仕方なしに湯船の縁でひと時過ごし、部屋に帰った。

 部屋は広い。応接間にベッドの置かれた寝室。バストイレも付いて、これで10500円は安い。料理もじゅんさいや鮎の塩焼き、馬刺し、会津牛も付いておいしい。問題は風呂。妻はまず部屋風呂で洗髪・身体を洗った後、温泉ヒノキ風呂へ行った。何とか入れたよ、と言う。私は野天風呂へチャレンジ。野天風呂は洗い場もなく、湯船に面して脱衣所が設けられている。しかも一人きり。湯船を歩いていたら、タオルに包まれたような柔らかなものを蹴飛ばした。でも見えない。恐る恐る、服に着替えて部屋に戻った。

 「退職記念旅行は、東北でよかった(その8)」に続く。