とんま天狗は雲の上

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経済は地理から学べ!

 筆者の宮路秀作氏は代々木ゼミナールの地理学のカリスマ講師。地理学に関する豊富な知識が参考書のようなわかりやすいまとめ方で整理されている。

 序章で、地理は「自然」「スケール」「資源」「距離」の4つの視点で捉えよと、それぞれの視点を説明する。そして、「立地」「資源」「貿易」「人口」「文化」の各章に分け、「インドのシリコンバレー」、「カスピ海を巡るパイプライン」、「アルミニウムと資源大国」、「チェチェン共和国」、「ノルウェーの正体」など、具体の国を取り上げて、興味深いテーマで地理学的な考察が披露される。

 「おわりに 地理とは、いったい何を学ぶ科目なのか?」には、「地理とは『現代世界そのものを学ぶ科目』なのです。」(P253)と結論付けている。確かに、地理には自然・経済・文化など、世界の全てが詰まっている。そして現代世界を知った上で歴史を学ぶと・・・未来が見えてくる?

 私にも地理学の教師をしている友人がある。一昨年には地理学会のイベントにも参加した。確かに地理って面白い。問題はこの年になると、読む端から忘れていってしまうことだ。でも地理的考察はいつまでも学び続けていられる面白さがある。世界情勢は次々に変化するしね。

 

経済は地理から学べ!

経済は地理から学べ!

 

 

○日本の資源輸入国から見えてくることがあります。それは、東南アジアとオーストラリアの重要性です。日本は、鉄鉱石や石炭、天然ガスなど、オーストラリアから多くの資源を輸入しています。・・・オーストラリアを出た船舶は東南アジアを通過します。ペルシア湾原油を積んだ船舶もまた、東南アジアを通過します。日本と東南アジア諸国との関係が悪化してしまえば、船舶の航行が困難になるかもしれません。そのため東南アジアは日本にとって最重要シーレーンなのです。(P035)

○20世紀は自動車や航空機が登場したことにより、石油を巡る争いが絶えませんでした。まさしく20世紀は「石油の世紀」でした。/しかし21世紀は「水の世紀」です。世界の大河川では、上流での水需要が多くなり、下流で水が枯渇し始めるなど、水の利用を巡って争いが起きています。/途上国の工業化や生活水準の向上は、水需要を押し上げています。今後、さらなる水不足が生じる地域が増加するかもしれません。(P087)

○オーストラリアは、製造業があまり発達していないこともあって、単純労働者や低賃金労働者といった人材を供給する必要がありません。そのため移民は、リタイアした海外からの移住者、富裕層などが多く、彼らを対象とした政策を進めやすいという利点があります。・・・その結果、最低賃金水準が日本やアメリカ合衆国の約2倍となっています。・・・オーストラリアの外食産業で、外国企業が進出して成功した例はほとんどありません。(P145)

タンザニアケニアウガンダルワンダブルンジ南スーダンとともに将来的な単一通貨などの地域統合を目指して東アフリカ共同体を結成。関税同盟が発足しています。・・・これを背景にタンザニアは、サブサハラ・アフリカの平均値を上回る経済成長を達成しています。・・・近年の経済成長で国民1人当たりの購買力が上がっており、人口増加と相まって、今後のタンザニア市場は非常に魅力的です。(P170)

○果樹は水利に恵まれたところでの生産に向いていません。必要以上に土壌中から水分を吸い上げてしまうからです。甘みを凝縮させるためには、ある程度水利に恵まれない乏水地のほうがよいのです。扇状地で果樹栽培が盛んな理由と同じです。扇状地の中央部にある扇央部では河川水が伏流して水利に恵まれません。/こうして地中海性気候下では果樹栽培が盛んに行われるようになりました。