とんま天狗は雲の上

サッカー観戦と読書記録と日々感じたこと等を綴っています。

フットボール批評 issue17

 今号の特集は「サッカーの勝敗は戦術で決まる 超一流の『戦術眼』」。ということで、遠藤保仁乾貴士風間八宏らへのインタビューが掲載されている。でも遠藤へはインタビュアーの西部が持論の戦術論をぶつけてもそれほど明確に答えが返ってこない。遠藤には別の視野が映っている感じ。彼が引退した時、彼なりの戦術論が聞けるのではないか。乾に対しても小澤一郎がバルセロナ戦の画像でもって、乾の動きや考えに迫るが、エイバルの戦術が聞けて興味深いが、それ以上には広がらない。今号ではGKに関する記事が多く掲載され、そちらの方が面白かった。

 フットボール批評らしく興味深いのが、木村元彦による「なぜ差別は止められないのか?」。旭日旗問題に関して、フロンターレJFAが日本政府に忖度している様が明らかにされている。また、Vファーレン長崎の社長に就任した元ジャパネット社長・高田明氏のインタビューが面白い。「自分は117歳まで生きる」と明言してるんだ。また、いつもながら小田嶋隆の「フットボール星人」、そして新たに連載が始まった「西村卓朗のチーム強化論」も面白そうだ。新連載と言えば、武田砂鉄の連載が始まった。第1回はイマイチだったけど、今後の武田氏らしい批評に期待したい。

フットボール批評issue17

フットボール批評issue17

 

 

〇須藤氏も「間違いなく可能性がある選手が増えてきている。でもそこから10人選びなさいと言われたら、その時点で10人を選ぶしかないですが、将来を約束されたものではない」と語る。だからこそ例えばU-20W杯が韓国で行われている最中に、U-19の選手がフランスで行われたトゥーロン国際大会に参加し・・・(P051)

〇-高田社長は、2015年1月にジャパネットの社長職を退かれています。本当のところ、少しゆっくりしようとお考えだったのでは?/「ゆっくりするつもりはなかったですね」/-そうなんですか。/「なぜかといいますと、僕はあと49年生きるので」/-えっ。/「すいません」/-いえ、謝られることでは。/「117歳まで生きる。そうなっているんですよ。いま68歳だから、あと49年。だったら、別のことチャレンジしようと」(取材に立ち会う広報担当者から、日本人男性の最高齢記録116歳を更新する予定とフォローが入る)(P081)

〇久々にロシアの首都を訪れて感じた大きな変化は、スタジアムである。今大会で使用されていたスパルタク・スタジアムの他にも・・・モスクワには5つの近代的なスタジアムが完成することになる。/さらに驚くべきは、そのいずれもがフットボール専用であること。これほど多くの専用スタジアムがあるヨーロッパの都市は、ロンドン以外には見当たらない。・・・ことスタジアムに関していえば、日本とロシアの立場は完全に逆転した。(P086)

〇サッカーの現場で起きた事件について繋がるべきは・・・FIFAであって、国の行政機関と協議していくというのは、スポーツに政治を介入させることに他ならない。案の定、5月8日の会見で菅官房長官がこの問題に言及した。・・・FIFAが、JAFは政治介入を許したと解釈したら、どう責任をとるつもりか。・・・政府の見解にJリーグが同調させられている格好である。スポーツ団体はあらゆる政治から独立して然るべきで・・・FIFAは政府によるサッカー協会やリーグへの圧力や介入を禁止している。(P131)

〇サンプターさん曰く、野球が「統計のスポーツ」であるのに対し、サッカーは「パターンのスポーツ」。パスというネットワークを繋げ「チーム全体が部分の総和を上回る」可能性を追求することが、サッカーを真に数学的という理由なのだ。サッカーがただのゲームではないのと同じように、数学も決して冷たい理論や概念や公式ではない。最終的には書き手のサッカーと数学に向けられた情熱が実に心地よい本でした。(P154)