とんま天狗は雲の上

サッカー観戦と読書記録と日々感じたこと等を綴っています。

紅葉の「愛岐トンネル群」を散策

 JR中央本(西)線の高蔵寺駅と多治見駅の間は、愛知県と岐阜県を分ける山をくぐるトンネルとなっている。現在、定光寺駅と古虎渓駅の間はほぼ一直線の長いトンネル1本でつながれ、古虎渓駅を過ぎると、3本ほどのトンネルをくぐって、開けた多治見市街地に出る。この間は、切り立った谷あいを庄内川土岐川)が曲がりくねって流れており、通称「愛岐道路」と呼ばれる県道が川に沿って走っているが、かつては道路の対岸を中央本線がいくつものトンネルを抜けて通っていた。1966(昭和41)年に現在の軌道が建設され、いつしか廃線路は忘れ去られてしまった。

 しかし2005(平成17)年、地元の古老から話を聞いた有志が立ち上がり、発掘と調査を開始。2008(平成20)年に実施した見学会で予想以上の来場者が集結。以来、毎年春と秋に特別公開を実施している。この間、2016(平成28)年には登録有形文化財にも指定され、最近では毎回、1万人を超える人が集まる観光地となっている。

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 すぐ近くだが、これまで機会がなく、行ったことがなかった。それで先日、午前中で仕事が終わった日の午後、一度は行かねばと初めて足を延ばしてみた。高蔵寺駅から1駅。崖にへばりつくように作られた定光寺駅で降りると、1時間に2~3本の電車ながら、多くの人が下車する。60歳を超えた高齢者夫婦が多いが、中には若いカップルや女性のグループもいる。リュックに軽登山靴としっかりとした服装の人も多いが、運動靴があれば足りる。玉野堰堤で取水された水を玉野水力発電所まで導く導水路沿いにしばらく歩くと、崖際に梯子のように急な階段があり、堅固な鉄扉が開いている。そこを上がっていくと廃線路に着いて、保存再生委員会の方が案内をしている。入場料は100円。目の前に実物大のSLが描かれた大幕が張られ、これが3号トンネルの入り口。中は灯もなく真っ暗なので、懐中電灯があった方がいいかもしれない。また、廃線内はバラスト(砕石)が敷かれており、歩きにくいが、いったん廃線路上に上がってしまえば、あとはほぼ平坦なので、それほど疲れることはない。

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 トンネルの終端では馬蹄形に切り取られて、その先の風景が見える。それがなかなか楽しい。竹林の中を抜けると次は4号トンネル。この中ではSLの通過音と汽笛が楽しめるようになっている。そして抜けた先は大もみじ広場。大きなモミジの大木が立ち、見下ろす川の流れも壮観。この広場には水車も置かれ、奇岩があり、そしてマルシェ広場と呼ばれる売店もある。

 さらに歩くと5号トンネル。そして333mとこの区間でもっとも長い6号トンネルをくぐると行き止まり。愛知県と岐阜県との県境には深見川という支流が流れており、そこから先はまだ探索ができていないとのこと。ここまで入口から1.7km。足下が悪いので、40分位はかかるかもしれない。6号トンネルを戻ってレンガ広場まで出ると、健脚者向けコースが案内されている。エノキの巨木「山おやじ」やモミジの中の周回路を抜けて、玉野古道に至り、さらに進むと、庄内川の河原に出る。

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 帰りはトンネル下の玉野古道を歩いていくと、右手にトンネルの下をくぐる暗渠が見られる。もちろんレンガ製で、水路の中を通って反対側まで行くと、井戸のようになって、上から光が降り注ぐ。トンネル下の道は間知石積みの擁壁に苔が生えて、川側はモミジや対岸の展望、そして眼下には渓流が流れる気持ちのいい道だ。途中の河原で休憩を取るなどして約2時間。紅葉もきれいだし、何より気持ちがいい。クラブツーリストのバッチを付けた人もいたが、会社の同僚に聞くと、意外にまた行っていない人が多い。まさに灯台元暗し。ぜひ行くべきだよと勧めておいた。一応、今年の秋の特別公開は今週末3日までやっている。