とんま天狗は雲の上

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三審制ってこんな制度だったっけ

 前美濃加茂市長の汚職事件に関する最高裁判決があり、高裁判決に対する上告が棄却された。実際に何があったのかわからないので、この判決自体を論ずる気はないけれど、この記事を伝える中日新聞の「解説」に少し驚いた。ネットで見付けることができなかったので、以下に画像及び文章を引用する。

最高裁は通常、憲法違反や判例違反の有無で判断し、重大な事実誤認を理由に無罪を宣告した例は少ない。逆転無罪や差し戻し判決が出る可能性は、そもそも極めて少なかった。/それにもかかわらず、藤井市長は・・・今年1月に出直し選に打って出た。・・・藤井市長がもっと早く進退を判断していれば、市政の停滞を招かなくて済んだのではないか。市民を混乱させ、翻弄したというそしりは免れまい。(社会部 沢田敦)

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 新聞社としてはこうした政治性の高い事件に対して、ある程度中立的な立場を表明する必要から、両論併記的な記述になるのは理解する。しかし、藤井氏は無罪、冤罪を主張している中で、最高裁まで争うという姿勢は理解できるし、そもそも「責任は重い」とか「そしりは免れまい」と書いたところで、藤井氏は後日、市長を辞任したわけだから、それで十分責任を取ったし、辞任した私人をそしったところで何の意味があるのか。

 しかし、それ以上に驚いたのは、「最高裁は通常、憲法違反や判例違反の有無で判断し、重大な事実誤認を理由に無罪を宣告した例は少ない。逆転無罪や差し戻し判決が出る可能性は、そもそも極めて少なかった」という部分だ。つまり、「最高裁は、一審と二審が異なる場合に、事実関係を調べて、正しい判決を行うところではない」ということだ。たぶん事実なんだろう。私たちは何となく三審制というからには、最後は最高裁で正しい判決がもらえると思っていたが、そうではなかった。

 もっとも、この事件の弁護を担当する郷原伸郎氏のブログ「美濃加茂市長事件“最後の書面”を最高裁に提出:郷原伸郎が斬る」によれば、上告趣意書では「判例違反」を2件指摘し、さらに「重大な事実誤認」による職権破棄を求めていたとのことであるから、判例違反の有無を求めていないかのように読める中日新聞の解説記事は誤っているし、「逆転無罪等が出る可能性が極めて少なかった」としたり顔で書く理由がわからない。それはまさに日本の裁判制度に対する信頼を失墜させる記事ではなかったか。中日新聞社会部の沢田敦記者には強く抗議をしたい。