とんま天狗は雲の上

サッカー観戦と読書記録と日々感じたこと等を綴っています。

2017年、私の読んだ本ベスト10

 今年読んだ本は60冊。あれ、去年は70冊だったから、10冊近くも減っている。やはり退職して、電車通勤しなくなったのが大きかったかな。1週間近くの退職旅行と白内障の手術入院もあった。でも、ベスト10を選んでいて、これは!という作品が今年は少なかったという印象。加えて、半年以上前に読んだ本について、内容を忘れてしまっているという事実。老化を感じる。そしてサッカー本が1冊もない。今年は「サッカー批評」以外、サッカー本を読んでいない。

 

【第1位】愛ゆえの反ハルキスト宣言 (平山瑞穂 皓星社

 村上春樹をきちんと批判している。そして指摘事項が明確。なるほど。確かに、性描写の多さと繰り返しは鼻に付くし、「当事者回避」は問題かもしれない。カズオ・イシグロノーベル賞を受賞したが、村上春樹ノーベル賞を受賞できない理由も、本書を読むとわかる気がする。

 

【第2位】キトラ・ボックス (池澤夏樹 KADOKAWA

 昨年、キトラ古墳に行って、ナイスタイミングで本書が出た。キトラ古墳には誰が葬られているのか。飛鳥時代を舞台とした描写もあり、中国ウイグル自治区の政治問題も絡んで、上質なミステリーにもなっている。そして何と言っても明るく読めるのがいい。

 

【第3位】芸能人寛容論 (武田砂鉄 青弓社

 今年の収穫は、武田砂鉄を知ったこと。今年になって読み始めた「サッカー批評」にもコラムが掲載されている。今年読んだ3冊の中ではこれが一番切れ味があったかな。マツコ・デラックスへの評価とSEKAI NO OWARIへの批判。なるほど、よくわかる。

 

【第4位】街場の天皇論 (内田樹 東洋経済新報社

 今上天皇は今や現政権に対する最大の抵抗勢力かも。「象徴的行為」というお言葉に、今上天皇の意思を読み解く。天皇制の意味や必要性を肯定的に捉えて説く。さすが内田樹

 

【第5位】丸腰国家 (足立力也 扶桑社新書

 積極的永世非武装中立宣言をしたコスタリカ。それがなぜ可能だったのか。歴史的な経緯からその後の危機と外交。そして現在。既にコスタリカ国民にとっては非武装が当たり前のこととなっている。もちろん日本とは取り巻く状況が大いに異なるが、安全保障について考えるきっかけにはなる。

 

【第6位】敗者の想像力 (加藤典洋 集英社新書

 昨年読んだ「村上春樹はむずかしい」が面白かった。加藤典洋と言えば「敗戦後論」だが、これも面白かった。そして大江健三郎を思い出した。引き続き、加藤典洋に注目をしていきたい。

 

【第7位】建築から見た日本古代史 (武澤秀一 ちくま新書

 歴史家ではなく、建築家が推測する日本古代史。伽藍配置や立地への視点が面白い。かなり大胆な推測をしているように思うが、けっこう説得力を感じるのは、私も建築を専門としているからだろう。

 

【第8位】砂漠の影絵 (石井光太 光文社)

 ドキュメント作家の石井光太2作目の小説。今度は中東のテロ集団による人質事件を、テロリストたちの視点で描く。彼らはテロリストに追い込んでいるアメリカの政治。ここで書かれていることがそのまま真実とは思わないが、世界を多面的に視ることは重要だ。

 

【第9位】騎士団長殺し (村上春樹 新潮社)

 村上春樹4年ぶりの長編小説が刊行された。今回も前作の「色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年」と同様に読み易かった。でも「結局何が言いたかっただろうか?」という疑問は、「愛ゆえの反ハルキスト宣言」を読んで、間違ってはいないという思いを強くした。

 

【第10位】アメリカ帝国の終焉 (進藤榮一 講談社現代新書

 読書感想の冒頭に「面白い!」と書いている。たぶん面白かったのだろう。でも何が? 実はあまり覚えていない。読書感想を読んで、単にアメリカのことだけではなく、日本の進むべき方向を示していたことを思い出す。

 

  • 都市・建築関係

 一方、都市・建築関係は今年1年で15冊を読んだ。こちらは昨年とほぼ同じ。このうち、特に記憶に残っているのは次の6冊。

 

集合住宅 (松葉一清 ちくま新書

 軍艦島に始まって、ジードリンク、ウィーン、アムステルダム、パリ、そして同潤会アパート。世界の集合住宅を巡り、その意味を探る。松葉一清らしい好著。

 

町を住みこなす (大月敏雄 岩波新書

 多様な住宅、特に賃貸アパートがあることによって、地域の循環居住が確保され、住宅地の多様性が確保される。本書を読みながら、高蔵寺ニュータウンのことを考えた。

 

老いる家 崩れる街 (野澤千絵 講談社現代新書

 都市の縮退について、都市計画的視点から書かれた本。空き家問題だけでなく、タワーマンションや都計法34条11項条例による調整区域のスプロール問題なども紹介されている。埼玉県羽生市の「羽生ショック」なる言葉を初めて知った。

 

人口減少時代の土地問題 (吉原祥子 中公新書

 高齢者が死亡し、地方に住む人が減り、さらに外国人による土地・建物所有が進むことによって、いよいよ所有者が不明な土地が増えてくる。具体的な提案もあるが、もうどうしようもないところまで追い詰められている。

 

空き家の手帖 (六原まちづくり委員会 学芸出版社)

 京都市六原学区のまちづくり委員会が住民向けに作成・配布された本。六原まちづくり委員会の寺川さんから話を聞いて購入した。

 

町の未来をこの手でつくる (猪谷千香 幻冬舎

 紫波町のオガールプロジェクトを紹介する。面白い。